ヘイトスピーチデモ:無関心が生む差別 外国人記者に聞く
毎日新聞 2013年07月10日 02時30分(最終更新 07月10日 03時02分)
在日コリアンらの排斥を掲げ、東京や大阪などで続いている「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」デモ。このデモをテーマに取り上げた会合が9日、東京・有楽町の日本外国特派員協会であった。日本ではほとんどみられなかった差別的デモは日本を知る外国人にどう映るのか。特派員らに聞いた。【青島顕、岸達也、小泉大士】
来日16年目で初めての体験だと驚くのは「新月通信社」の米国人記者、マイケル・ペンさんだ。「米国社会には差別やヘイトスピーチが存在したが、日本にはなかった。10年前にはあり得なかったことだ」
その上で「要因は複雑だ。経済不安や教育の問題、中韓との関係悪化などがあるのではないか。最近は日本社会のつながりが弱くなってしまった。インターネットの時代になり『1人の社会』が生まれている。その中で極端な思想が生まれたのかもしれない」と分析する。ただ、法規制については「表現の自由との兼ね合いがあり、法律で禁止するのは疑問だ」と述べた。
フランスRTL放送のジョエル・ルジャンドル日本特派員が強く印象づけられているのは、日本人の無関心だという。
「日本人の大多数は平和的で非常に賢いのに、(1日の日韓外相会談で問題視されたように)デモを行うごく少数の極めて保守的な人のために日本は政治・経済両面であまりに多くの困難に直面している」。そう話した上で、ルジャンドルさんは差別的なデモが続く背景を「多くの日本人があまりに無関心だからだと思う」と述べた。
「日本は東日本大震災直後は全世界の同情を集めていたが、そのイメージが急速に変わってきている」と指摘したのは、米ニュースサイト「ハフィントンポスト」に記事を書いているカリフォルニア州立大フラートン校のナンシー・スノー教授だ。
20年来、日米を行き来しているスノー教授が一因に挙げたのが、在日コリアンが多く住む大阪・鶴橋であったデモで14歳の女子中学生が「鶴橋大虐殺を実行しますよ」と発言したことだ。「映像はネットで各国に流れている。何千人もの日本の中学生が同じように思っていると受け止められかねない。3・11後の日本のイメージに与える影響を危惧している」と語った。
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