焦点:米WTIと北海ブレントのスプレッド縮小、シェール革命新局面へ
[ニューヨーク 3日 ロイター] - 米国のシェールオイル革命は4年目に入ったが、市場に衝撃を与える力は衰えていない。最近は米国産標準油種(WTI)と北海ブレント原油とのスプレッドの大幅縮小に影響を及ぼし、市場を揺さぶった。
3日の朝方にWTIの北海ブレント油に対するプレミアムは3ドルと、2010年以来の最小まで縮小した。プレミアムは2月には23ドルを超えていた。
パイプラインの新設や製油所の稼働再開により、過去3年間WTI価格を押し下げてきたオクラホマ州クッシングの過剰在庫が解消に向かう見通しとなったためだ。新設のパイプラインの輸送能力は日量100万バレルを超え、停滞していた米バッケン地域産シェールオイルやカナダ産原油が動き出すとみられる。
クッシングの貯蔵庫で受け渡される原油の価格を示すWTI先物は、世界市場との結び付きを取り戻したように見える。しかし今週の突然の価格調整により、米国の原油生産の急増と、押し寄せるカナダ産原油がもたらした大変革への対応に、市場が依然として四苦八苦している様子が浮き彫りになった。安定の時代の幕開けとは程遠い状態だ。
WTI価格の下落を見込んでいたトレーダーは、相場の上昇により期近限月の買いを迫られ、市場は過去5年間で最も著しい「逆日歩」を形成した。これは目先の受け渡し原油のプレミアムを示す市場構造だ。
クレディ・スイス(ニューヨーク)のエネルギー調査ヘッド、ジャン・スチュアート氏は「大規模な取引の巻き戻しが起こっている」と言う。
このことは、期近限月を安く買って数カ月後に高く売れた局面の終焉を示している。
3日の午後にはパニックが収まる兆しが出て、北海ブレントとWTIとのスプレッドは日中の最低水準より約1.50ドル高い4.52ドルで取引を終えた。
しかし混乱が収まるとの見方は乏しい。パイプラインの新設により過剰在庫はオクラホマからメキシコ湾岸の製油地帯へと移るだけだ。製油所には既に原油があふれている。
現在、日量50万バレルのシェールオイルとカナダ産原油を担っている鉄道輸送は縮小を迫られるだろう。
業界のシンクタンク、ジェンスケープに所属する元石油トレーダー、ブライアン・ブッシュ氏は「価格の相関性に根本的な変化が起こっているようだ」と述べた。
<要因が重なる>
今週の取引には幅広い要因が影響した。クッシングからイリノイ州ウッドリバーに日量21万5000バレルの原油を運べるエンブリッジ・エナジー・パートナーズ社のオザーク・パイプラインの再稼働がその一つだ。
またインデイアナ州ホワイティングにある英石油大手BPの製油所は、注目された設備拡大を終えて再稼働する見通しが立った。
3日にはホリーフロンティア社のタルサ製油所が保守点検を終えて再稼働の準備に入った。
加えて、カナダのアルバータ州のパイプラインが過去1週間のうちに故障し、一時的に稼働を中止した。
<南へ向かう原油>
WTIは伝統的に北海ブレント油を上回る価格で取引されてきたが、2010年に異例の逆転現象が起きてブレント油を下回った。クッシングの在庫増加を背景にブレント油のプレミアムは一時28ドルを超える場面もあった。
トレーダーは目先、米中西部からメキシコ湾岸に原油を運ぶ複数のパイプラインの稼働開始に備えることになる。
ロイターの推計によると、複数のパイプラインの稼働により、クッシングからメキシコ湾岸地域への原油輸送能力は合計で現在の日量50万バレルから2014年第1・四半期末には170万バレルに膨らむ見通しだ。
ユーラシア・グループは3日のリポートで、メキシコ湾岸地域に押し寄せる原油に加え、石油輸出規制や米国内の他地域に石油を輸送するタンカーの市況逼迫により「メキシコ湾岸が実質的に新たなボトルネック地域の座を確立するだろう」との見通しを示した。
(Matthew Robinson記者)
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