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2013-04-10

[]春だヨ!はてなお花見座談会in2013 公開

 桜満開の三月某日、東京都内。通称”はてなキセキの世代”からTM2501氏とあままこ氏をゲストに迎え、同人誌ウェブニタス』に収録するつもりで座談会をセッティングした(結局ネット公開になったが)。よく知らないが、はてな論壇で「青の閃光」「ブルーデスティニー」と呼び声高い論客TM氏とは果たしてどんな人物なのか?と、私は戦々恐々で集合場所へと向かう。
 会場に着きしばらく、降りしきる白い桜の下に現れたのは3名の女性陣(TMガールズ)と、飄々とした好青年一人。TM氏は紙袋に持ってきた『僕の妹は漢字が読める』などの読み終えたライトノベルから、さあどれか貰って下さいと贈与と交換のポトラッチを発動。毒気を抜かれまんまと懐柔された私は、ゆるふるわムードでこの座談会をスタートした。

・・・というわけで、第一部「ネット発の自由論」、第二部「今期アニメ感想」の2テーマで皆さんにお話を伺いました。あ、それはそうと先ずは本誌『ウェブニタス』の宣伝をします。

【告知】4月14日の『文学フリマin大阪』ほかで、当座談会のメンバーが主催するネット系文化誌『ウェブニタス』を頒布します。
最寄りの方はぜひお買い求め下さい。詳細は下記URLで。
http://d.hatena.ne.jp/dokai3/20130327/p1

【登場人物】
土塊 文化同人誌ウェブニタス』編集長
あままこ ブログ斜め上から目線』管理人
TM2501 ブログとある青二才の斜方前進』管理人
ヤサゴン 『ウェブニタス』副編集長で『ザ☆ルサンチマンハンター小野』作者。当座談会の文字起こしを担当
ナース TM2501氏の友人。病院で数々の修羅場を見てきた歴戦の勇士 
ツキコ TM2501氏の妹。女子大生
伯人 ナース女史の娘。ツキコさんと年が近い

◯第一部 ネット発の自由論
会田誠問題について 
土塊 年末から森美術館で催されている会田誠 『天才でごめんなさい』 展に、女性権利団体 『PAPS』 から女性の権利を著しく傷つけるとして抗議が来ました。TMさんはどう思いますか。

TM2501 個人的には、何を言ってもいいと思うし、会田誠に対して抗議するのも自由です。ただビジネスが成りたたくなる一方的に圧力をかけるのは違うのではないかと思います。例えば、『黒子のバスケ』脅迫事件とかも、あれはあれで同人誌によって生計を立てている人達の場を奪っているわけですから、本質的に人殺しと変わらない。

土塊 なるほど。俺なりにまとめさせてもらうと、TMさんは経済観点から言論の自由という問題を見ているということですね。

TM2501 『公共の福祉』にはどんな権利にもあるわけですから、この場合の公共の福祉というのは『稼ぐ権利』なのではないか。見に行く・見に行かないという選択肢を選べる範囲では、商売の邪魔をしてはいけないと思う。そんなことで規制するならば、18禁の絵は全て規制しなければならない、という危険な議論に踏み込むのではないか。

あままこ う〜ん。よくわからないというのが正直なところ。「批判は許すけど営利妨害は許されない」というのが何かってことで、PAPSが抗議しているからといって、それで法的に展示が中止されたわけではない。まあ、PAPSが展示を中止させる権力があるなら別ですけど。だから、公権力に表現規制と、私権力による表現規制は分けて考えるべきです。東京都非実在規制みたいに法律によって規制することは反対ですが。しかし今回はそこまで言っていないわけで、一つの批判として受けとめればいいのでは。

土塊 でもPAPSは『わいせつ物陳列罪』などの刑法上の罪状を列挙している。そこから公権力問題と関わってくるのでは?

TM2501 あままこさんの言っていることは、結果論では。PAPSの批判はブロガーがネットで批判するのと変わらないかもしれないけど、でもいちブロガーに個展を中止させるほどの力なんて無いですからね(笑) 

土塊 例えば、もしPAPSの主張に賛同する人達が増えれば、児童ポルノ禁止法案のように法改正まで進んでしまうのではないか。アメリカでも、キャサリン・マッキノンみたいなラディカル・フェミニストは、フィクション上の女性に対する性暴力であっても、そのイメージが拡散される事によって、現実にも女性差別が広がってしまう、というロジックポルノの全面禁止を訴えている。
 対して、リベラリストの法学者ロナルド・ドゥウォーキンは、それは表現の自由を侵すとして、論争に発展している[*1]。 そこまで行った場合、あままこさんはどちらに味方するのでしょうか?

あままこ 僕の立場は、表現自体を法によって規制することについては絶対に反対。ただ、「会田誠の作品は女性差別を煽る」 と、批判する自由は認めるべきであって、その自由があるからこそ、法律によって規制しなくてすむこともあるのではないか。

ヤサゴン だけど、会田誠問題の本質って、あれはアートポルノなのかってことにあるのでは?

あままこ 僕はその問いはナンセンスだと思っていて、ポルノであることとアートであることは排他的な概念じゃなくて、アートかつポルノであるものも存在するし、その逆もある。

土塊 実際に作品を見たんですけど、会田誠自身もこれはアートなのかポルノなのかというと、両義的なメッセージを発しています。あと先ほどから話を聞いていると、あままこさんの中では『政治と文学』が分離していて、いくら文学的に解釈してもそれは立法に及ばないことになっている。だけど俺が思うには、ある普遍的な批評的解釈が確立すると、それは必然的に法的な規制にまで波及してしまうのでは。

あままこ 例えば、国民全体がそういう法規制やむなしという考えを多数決でなく全員が信じたのならばやればいいと思うけど、またそれが一番の問題でもあると思う。

土塊 やはり、文学と政治の対決を避けたいということですか。

あままこ 個人的な倫理観として避けたいというのはあるけど、メタ倫理としては、文学と政治を混合して意見を言ってはダメだとは思っていない。法的に表現規制しろと言っている人が意見を言うのは構わないと思っています。


土塊 TMさんはどう思います?

TM2501 実証的・客観的な検証を経た上で被害者がいることが明らかになったのならば、それで成り立っている市場が壊されるのはやむをえないと思う。けどそれを経ずしていきなり規制することには慎重になるべき。

土塊 TMさんはかなり会田誠に肩入れしているけど、「会田誠のビジネスを守れ」と主張するだけで、会田誠に中立的ないし反感を持った外部の人を説得することはできるのでしょうか?

TM2501 性的な表現については、大人がそれを見るかみないかは自己責任の問題になるのではないか。

土塊 TMさんが言っていることはゾーニング。つまり大人は何を見て良いか判断できるわけで、作品内の女性差別を見たい人は見ればいいし、見たくない人は見なければいいと。

TM2501 悪影響あるものを全部規制しろと言ってしまったら、今飲んでいるお酒すら規制しろということになる。悪影響だから全て規制しろ、ではなく、その悪影響を受けない選択肢を与えればいいだけなのではないか。

ナース だけど、児童ポルノ的な表現は大人にはいいかもしれない。けど絵にしたって、そのモデルになっている子供の影響はどうなのだろうか? 例えば、スクール水着の女の子がいっぱい出ている会田誠の作品を実際に見たけど、そのモデルになっている同じ年頃の女の子がそれを見たら不快なのではないかな。

土塊 だとしたら、ナースさんはそれを法的に規制したい?

ナース う〜ん。世間一般に公表しないで欲しいですね。アンダーグラウンドでやり取りされるのであればいいけど。

土塊 例えば、それはゾーニングされているだけではダメなのですか? 女性差別的とされる表現の存在自体を否定してしまう人がいると思うのですけど、自分はそれには反対。実際に物理的な被害がでなければいいじゃないかと思うのですが、そこはどう思いますか。

ナース まあ、私は女性扱いされないような世界で生きてきたので、これのどこが女性差別なのかと思う面が多々ありますね。

*1 仲正昌樹,『集中講義!アメリカ現代思想』,p183-184

AKB48峯岸みなみ問題

あままこ まずAKBの問題について言わせてもらうと、ひとつ峯岸丸刈り問題については、何故そこまでするまで追い込まれたのか気になっている。あと最近の女子大生の専業主婦志向を見ても、制度面で男女平等が進んでいるからといって、必ずしも人々の意識がそれに追いついているわけではないと思う。
 あと、これはブログでも書いたことだけど、「男性に選ばれなければ女性として一人前なれない」という雰囲気があるんじゃないだろうか。丸刈り事件と関連していえば、何故そこまでするかというと「ファンの愛を繋ぎとめなければならない」という、強迫観念みたいなものが、彼女たちにはあると思う。

土塊 あれは、ファン向けのけじめなのですかね? あるファンの人から、「週刊誌によると峯岸は合コンで斡旋役をしていて、他のメンバーにも迷惑をかけるから、けじめとして丸刈りにした」という話を聞いたのだけど。( http://matome.naver.jp/odai/2136012998166986201 )

TM2501 ファンに対してというよりも、これはAKB48という組織内問題だと思っている。AKBという組織に対してけじめを取る意味合いの方が強いのではないか。あとこれはブログにも書いたけど、『魔法少女まどか☆マギカ』 に例えていうなら、AKB48は巨大なソウルジェムであって、秋元康というキュウべえが、ワザと炎上させることによって少女たちの感情を燃え上がらせ、そのエネルギーを管理しているようなものなのではないか。
 そのシステムを倫理的・法的に規制するかは、みんなで話し合って決めればいいし、AKB48がビジネスとして成立しているところで、今更それを妨害しなくてもいいと思う。

土塊 つまり、諸悪の根源は秋元康ってことですね。ツキコさんにも聞いてみたいけど、アイドルになってみたいと思います?

ツキコ いや、なりたくないですね。(笑)

土塊 (笑)。この事件に共感できるところとかはありますか?

ツキコ 女子仲間の間では、してはいけない暗黙のルールがあったりするけど、それを侵してまで出るか、ルールを守り続けるかみたいなことなのかな。

あままこ 秋元康の考えとしては、恋愛禁止みたいなルールを作っておけば、それを破るメンバーも出てきたりして炎上すれば面白い、という意図があったと思う。それに、秋元は80年代の人だから全てがネタで、恋愛禁止ルールも単なるネタの一つに過ぎないのだよ。だけど、AKBのメンバー達が、そのネタを本気と捉えてしまう仕組みが怖いなと。

ヤサゴン 桜宮高校体罰自殺事件と丸刈り事件のタイミングが被ってしまったから、大事になったという面もあると思う。だけど、丸刈り事件って直ぐに忘れ去られてしまったように、AKBは国民的な人気があるように見えて、実際は巨大なAKBファンコミュニティーの中だけで受け入れられているにすぎないとも思うのだけどな。だから、世間は冷ややかに受けとめているのでは?

ナース これがパワハラだとすれば、秋元康からのプレッシャーが要因。でもこれって仲間内からのプレッシャーかもしれなくて、女の子の世界ってドロドロしているから、それがエスカレートしていく内に、自分の商品価値を貶めてまでメンバーに残りたいという風になったのでは。だけど私から言わせてもらえば、AKBって幼稚園のおままごとレベルにしか見えないな。

TM2501 「会いにいけるアイドル」 というシステムは、きっとおじさん達からすれば、自分の娘に会いに行くような嬉しさがあるのではないだろうか?

あままこ でもそれだったら、自分の娘にあんなことしていいと思うのかな? 以前、AKBのPVで、女の子同士がキスするシーンが話題になったけど、そういう性的なことをさせたいっていうのは、つまりAKBファンって虐待親父みたいなものなの?

ナース 娘が一番可愛い時の姿を残したいみたいな、成人式の晴れ姿的な問題でもあるのでは?

あままこ いや、成人式の晴れ姿であれば、もうちょっとおしとやかだと思うのだけど。

土塊 ファンに聞いた話では、峯岸は凄くウケを狙うキャラで、その彼女が暴走した結果、カメラの前で坊主姿を見せるところまでいってしまったのではないかと言っているのですよね。そうやってファンは彼女の自発性を信じきっているように見えるのだけど、でも多額のマネーが絡むような業界で、そんなピュアな力学は働かないと思いますね。俺はこの問題をブラック企業的な問題中心で見ていたのですが。
 例えばもしも峯岸が勝手な行動をして解雇されたならば、責任取ったり役職がなくなったりで、失業する人達もいるわけでしょう。AKB48の公式チャンネルで本人の自発性だけで撮影して配信するなんて、そんなことありえないでしょう。誰かの筋書きなのか、それとも「組織にけじめを示さねばならない」という空気に従ったのかは微妙な線だと思います。とはいえ、アイドルという特殊な世界のなかでファンとメンバー、仕掛ける側が全体としてそれぞれのロールプレイングを楽しんでいるのであって、それを外野からあれこれ言うべきなのか、迷っている部分があります。
 
ナース 私が怖いと思うのは、これがこの先暴走していって、その次はヌードにまでいったりするのでは?

土塊 でもファンは処女性みたいなのを重視するんでは。

ナース だけど、処女性を穢したお詫びにファンのために脱ぎますまでいってしまうかもよ。雑誌の袋とじみたいに。

TM2501 今回YoutubeAKB48公式チャンネルから問題が発信されだけど、その公式チャンネルは、メンバーが自由にアップロードできるのか、スタッフがついているのか、それとも秋元康がハンコを押さないといけない仕組みなのか。その辺りの権限の曖昧さが、問題をややこしくしているところもあると思う。

あままこ まあ、さっき(Ustreamチャットから)面白いコメントが出ただけど、なんでアイドル論ってエヴァ論と近くなるのかなと。エヴァに出てくる組織ネルフに謎が多かったように、AKB内部で何が起こっているのか見えにくいよね。だけど坊主事件の背景について、色々類推できてしまうから面白いのであって。そういう秘密結社っぽい怪しさを取ってしまったら、AKBは魅力を失ってしまうのでは。でも問題は、それで生身の女の子を傷つけるまでやってしまうことだよね。

ヤサゴン でもやっぱ議論を通してみても、AKBは興味のない人には圧倒的に無関係な存在なんじゃないだろうかな?

あままこ 僕はAKBって日本人の無意識をけっこう捉えていると思っていて、別に非モテアイドルファンだけじゃなくて、小林よしのりみたいなオシャレ中年もファンであるように非常に間口が広いし、AKBという奇妙な組織が、みんなの知らない所で怪しいことをやっていると捉えるのは違うと思う。

TM2501 例えば、ユニクロみたいな話題発信型企業のように、AKBもそれに近い面がある気がする。そういう意味で、ビジネスとしては、かなり上手いことをやっていると思う。

(ここから、あままこさんのustで配信・・・・・・・・)

■〜小休憩〜 はてなデザイン改悪問題

土塊 TMさん、はてなのデザインが変わったことについて何かありますか?

TM2501 個人的には、全然自分のブログブクマが上がらなくなって大変迷惑しています(笑) 前は自分のブログブクマが半日ぐらい上がっていたんだけど、最近は直ぐに落ちてしまいますね。

あままこ 一番大きいのは、プログラムアルゴリズムを変更したことによって、より多様な話題を的確かつ幅広く提供できるようになったことらしい。

土塊 はてなブログの専門のページが出来て、多くのブログを拾うようになりましたね。

あままこ だからそのアルゴリズムの変更は成功したと思っていて、特にいう言うことないかなと(笑) でも、デザインは見辛くなったと思う。

土塊 でも一ヶ月ぐらいで慣れましたよ。

ヤサゴン だけどあれはやっちゃったオシャレだよね。

あままこ オシャレっぽいというのもあるけど、一番嫌なのはサムネイルも一緒に載せちゃっているじゃない。一つの新聞社に載っている写真が、他の新聞社の記事にも載っていたりして、全然サムネイルの役割を果たしていなかったりするし。多分、より一般の人に馴染みやすくするために、文字じゃなくて、絵によってどんな記事がブックマークされたかを伝えようとしているのだろうけど。
でも逆に文字を出してくれた方が分かりやすいし、そもそも文字で見ない人は、はてなブックマークなんていうツールは使わないのではないかな?

ヤサゴン はてなブックマークリニューアルしたからって、別に新規ユーザーが増えた感じでもないよね。

■最近のオタクジェンダー論争

あままこ はてなブロガーに狐さん(id:KoshianX)という人がいて、その人が言うには、現代のアニメは、例えば旧来の大人らしさや男らしさではなくて、男の子が女の子らしくてもよいみたいに、既存のジェンダー感を打ち砕いていると主張している。でも、僕が思うに、未だにアニメの中にも旧来のジェンダー感が色濃く残っているし、中には男性優位で女性差別的な作品もあるだろうと思う。
 まあ差別の内容自体は、時代と共に変化しているのだろう。けど男性が女性を選ぶ側で、女性は選ばれる側であるという価値観は、未だに変わっていないと思う。そういう点からみたら、アニメに何か世界を変える力があるみたいな話をすること自体がおかしくて。むしろアニメは人々の欲望を映し出すものだから、僕はその欲望を批判する側に立っているのだけれど。

土塊 その議論が起こったきっかけはどのアニメですか?

あままこ 狐さんがまず言及していたのは 『機動戦士ガンダム』 で、ガンダムに出てくる女性キャラクター達は、ただ男についていく存在でないから、既存のジェンダー感を打ち壊していると。もう一つは、『らき☆すた』 とか 『けいおん!』 みたいな日常系アニメ。女の子同士の日常がゆるく映し出されていて、それを見ている男性視聴者たちは、キャラクターを恋愛の対象として見ているのではなく、ただ女の子同士のイチャイチャを見て楽しんでいるだけなんじゃないかということを言っているのだよね。

■「戦う人」になれない僕らと、戦うことを求める社会 -狐の王国-
http://d.hatena.ne.jp/KoshianX/20130327/1364352994


土塊 つまりアニメを通して、男女の恋愛だけじゃなく、女の子同士の友情とか日常の楽しさという別の可能性を提示していると。さっきのキャサリン・マッキノンの話と絡めると、アメリカでのラディカル・フェミニズムみたいな社会改革運動のように、たとえ小説の中であっても女性を受身の存在と描かれてはならない。70年代頃からそういうふうに社会のイメージを変革しようと運動していて。
 その文脈と狐さんの議論を絡めれば、ある種のアニメが「男と女の恋愛が正常で、それ以外は異常だ」という社会の固定概念を変えていくのではないかという希望論ですよね。

あままこ う〜ん。それだと百合アニメの肯定論になると思うけど、でも百合アニメと日常系は別物だと思う。それと、僕が狐さんの議論でよく分からなかったのは、男性が女性に同一化するって話なんだけど。誰かそれを上手く説明してくれたらなと(笑) だって、別に僕は唯ちゃんになったつもりで『けいおん!』を見ているわけじゃないし。

TM2501 『百合男子』 みたいなマンガだと、男子の主人公が女の子同士の百合っぽい妄想をして萌えあがる場面があるよね。だから今の萌えアニメを見ている男性視聴者自体が、女の子同士の日常を覗き見するように楽しんでいるのでは。そのキャラクターになってみたいとか、そういう欲望はないと思うな。

土塊 伯人さんは男性になりたいとか、そういう憧れはありますか?

伯人 う〜ん、難しいな。非現実的なものだったら、『D.Gray-manディーグレイマン)』(作:星野桂)とか。ああいう世界の人達を外から憧れ見てみたい、みたいな願望はあるのかな。

土塊 平隊員として「あ、神田さん、任務お疲れ様でした!」みたいな(笑)

■遠隔操作犯事件
パソコン遠隔操作事件

TM2501 う〜ん、これは警察の面子の問題に矮小化されてしまった気がするな。

あままこ 僕はこの事件はあまりにも出来すぎていて、この事件自体がエンターテイメントとして完成度が高いなと(笑) つまりこれって 『攻殻機動隊』 の笑い男事件のパロディーでしょ。ああやって警察をちゃかしたりして、ネットの中で英雄になりたかったのだよ。まあ、これは全部僕の妄想にすぎないけど。

土塊 でもそれだけだったら、ネットの荒らしと同じですよね。

TM2501 笑い男と、AKBを繋げると、共通するのはストイックさだと思うのですよ。笑い男みたいな理想の高い人間がいて、あれだけの能力がありながら、自分の理想に追いつかないと思っている人をカッコイイと思ってしまうのだよな。

土塊 でも笑い男愉快犯じゃなくて、薬害事件の不正を暴こうとしたわけだけど、遠隔操作犯はただ遊びでやっただけなのでは。

TM2501 笑い男ほどの能力がありながらも、犯罪に手を染めて自分の正義を達成しようとするカッコよさはいいなと思ってしまうな。

あままこ そこでショボイと思うのは、なんで最後自殺しなかったのかなと思ってしまう。映画版の 『パトレイバー2』 で、松井刑事が犯人の柘植に 「なんで最後自決しなかった?」 と、問いかけたように。

ヤサゴン それだったら、ネタバレだけど 『パトレイバー1』 みたいに(笑)

あままこ だからこれってアニメに影響を受けちゃったような、しょうもない中二病の犯罪にすぎないんだけどさ。何故か真面目に受けとめられすぎちゃっているよね。

ヤサゴン まあ冤罪事件が多かったから、その反動として英雄扱いされちゃっているのかも。

あままこ でもそこで下手に英雄にしないためにも、犯人を茶化すほうに回りたいな。この程度で英雄化されてしまったら、この事件自体が無意味に正当化されてしまう。

ナース この程度で終わりかよ。やるならもっと徹底やれよと(笑)

あままこ 実は別のプログラムが既に起動していて、これからもっと無茶苦茶なことが起こるのかもれしないよ。

ナース 北朝鮮の核ミサイルを発射するまでになったら危険だけど。

あままこ 『東のエデン』みたいに(笑)


■第二部 今期アニメ

あままこ う〜ん、『たまこまーけっと』 しか見てないな。最近のアニメって奇を衒い過ぎているというか。『アムネシア』 みたいに、奇抜な設定を思いついたもの勝ちみたいなところがある気がするし。そうじゃなくて設定によってキャラクターがどう動くかを見せるアニメを作っていくべきなのじゃないかな。
 今のアニメキャラって、ただのキャラになってしまっていて、その中に心理を見出せない。例えば、俺TUEEE系の主人公みたいに、その強さが物語の中で根拠付けられていないし、ヘタレキャラにしても、属性がまずあって、そこから離れられないようになっているように思う。

土塊 TMさんに今期アニメはみんな似たようなものでつまらないとディスって欲しいところだけど、妹のツキコさんは何を見ています?

ツキコ 今期は『マギ』 と 『ジョジョの奇妙な冒険』 しか見ていないかな。

土塊 ジョジョ面白いですよね。でも俺が高校生の頃はそんなにジョジョって人気なかったな。絵柄が気持ち悪いとかで。

ツキコ あそこまで、解説が長ったらしいアニメって逆に面白いし。

TM2501 『閃乱カグラ』 の解説口調が面白いという人がいて、なんであんなモロパンアニメを見続けられるのかなといえば、なるほどあのナレーションが面白かったのだなと。

土塊 ジョジョの何が良いかといったら、一つは人間性のポジティブな面を描いているところ。ツェペリが最後の波紋をジョナサンに託して死ぬところとか、二部でシーザーが解毒剤をバンダナに仕込んで、それを最後の力でジョジョに受け渡したりする場面とかいいですし。二つ目は、計算高い人達が出てきてバトルが二転三転したり。つまり意志の気高さや知性の冴えという二つの人間の可能性を描いていて。
 一言で表せば、ヒューマニズムが良いってことなのだけど、まあカッコイイ男達をしっかりと描けていると思う。で、ツキコさんに返すけど、ジョジョのどこに魅力を感じます?

ツキコ 昔のマンガのよさというか、ノスタルジーを感じるところかな?

TM2501 去年の紅白歌合戦で美輪明弘の 『ヨイトマケの唄』 が話題になったけど、岡田斗司夫がいうには、現代人は奇を衒ったコンテンツを見すぎているから、逆に王道的なものの方が新鮮に見えてしまうのだよと言っていました。

あままこ 作者の荒木飛呂彦がいうには、「梶原一騎みたいなことを現代にやりたい」みたいなことを言っているのだよね。斎藤環戦闘美少女の精神分析』に書いてあったんだけど。たしか荒木さんは『エヴァ』みたいなウジウジしたものが嫌いで、荒木さん自身は自分の憧れを自分のマンガの中に投影しているのだろう。でも読者は別にジョジョみたいなキャラになりたいとは思っていなさそう。

ナース 荒木さんのキャラクターは、全部が全部違うところが凄いよなと。一部、二部、三部などなど、色んなキャラクターが出てくるけど、それぞれ違った個性を描けているのだよね。

土塊 薄っぺらい悪役が出てこないのも凄いですよね。

ナース そうそう、「越後屋〜」 みたいな(笑) でもそういう凄い悪役っぽい悪役が出てくるのが面白いよな。

土塊 悪役なりにルールとかポリシーがあって、それに従って生きているのもしびれますよね。

ナース 私はテレビの 「ジョジョ芸人」 を見て入ったのだけど、あの荒木さんが創るジョジョワールドが凄いよなと。

ヤサゴン 『ジョジョ』って今になって、再発見された面がありますよね。連載当時にOVAはあったけど、でも 『ドラゴンボール』 みたいに、リアルタイムでテレビアニメ化されたわけじゃない。

(ここで何故かルパン三世の話に)

TM2501 僕のブログの出世作で、「ルパン三世は何故盗まなくなったのか?」という記事があって、ルパンのテレビスペシャルシリーズについての包括的な感想なのですけど、時を経るにつれて、ルパンが何をしたいのかわからなくなってきているんですよね。

土塊 某アニメライターさんに突っ込まれていましたよね。

TM2501 あの時は、有名な脚本家の方も出てきて、ぞっとしましたね。

土塊 実証的な記事を書く能力と、注目を集める記事を書ける能力は別で、注目を集める記事さえ集めればライターとして稼げると思う。そこは評価しています。

TM2501 いやでも、ルパンエントリは酷かったですよね。スイマセンでした。

土塊 おっと、TMさんから謝罪が出ましたね。『LUPIN the Third -峰不二子という女-』はどうでしたか?

TM2501 僕がイメージしていたのと逆で、おちゃらけているのかなと思ったら、原点回帰みたいな感じがしたかな。

ナース 私はむしろ、昔見ていた70年代のルパンや 『キューティーハニー』 みたいな、ドキっとさせられるようなエッチな感じが出ていたのでよかったかな。

あままこ 僕が初めてみたルパンは 『カリオストロの城』 だった。だからルパンの本当の姿は存在するのだろうけど、初めに何を見たかでルパンのイメージってそれぞれ違ってきてしまうと思うのだよね。

TM2501 『カリオストロ』は宮崎駿作品として見るべきであって、カリオストロを基準にルパンを作ったら別のものになってしまうのではと指摘したら、はてな村長にコメントで怒られてしまいました(笑) 

ナース 70年代はキューティーハニーとか、ルパンみたいなお色気アニメと、ドラえもんみたいなアニメは、一線を画していたと思うな。

土塊 でもその区分は現代でも変わらないような?

あままこ 今の深夜のアニメの視聴者層は、中高生が中心らしいけど。

ヤサゴン 昔みたいにゴールデンタイムにやるアニメがなくなったからね。『おぼっちゃまくん』 とかさ。

土塊 伯人さんはジョジョ以外で何か面白いアニメとかありましたか?

伯人 残念だったのは、『PSYCHO-PASS サイコパス』 かな。シビュラシステムとか設定は面白かったのに、終わり方がちょっと拍子抜けしたかな。

土塊 シビュラシステムが残されたまま終わってしまうのですよね。『サイコパス』には虚淵玄さん以外にも脚本家がいるのだけど、最終的に悪が倒されるわけじゃなくて、それと共存していく点では『まどか☆マギカ』と似ていますよね。設定が似てる映画 『マイノリティー・リポート』 では、最終的に犯罪者を予期するシステムが解体されるので対照的。この映画も原作は違うけど。

あままこ 『サイコパス』の監督である本広克弘の 『踊る大捜査線』 とも近いよね。警察という官僚組織のシステムの中でどう動いていくかという。まあ、僕は『踊る』は好きだけど、まどか☆マギカは大嫌いという、ネットの常識からはずれた離れた人間なのだけど(笑) ちなみに、踊る大捜査線シネフィルから大ブーイグを浴びているよね。でもサイコパスは、虚淵玄よりも本広カラーの方が出ているのかな?

土塊 テレビ局主導型映画の氾濫が、邦画の質を貶めているという批判はずっとありますよね。

あままこ それと『踊る大捜査線』みたいな、システムの底沼について描いた作品は、反権力的な映画を求めている人には苦々しいのだよ。でもシステムが続いていくこと自体は、別に問題ないとも思うけどな。だって、そのシステムがなくなったら困ることだってあるのだし、僕らはそれにリアリティーを持ってしまうのじゃないだろうか。

土塊 でも、『フラクタル』 とか 『NO.6』 みたいに、ノイタミナ枠は意外とディストピアものが多いですよね。http://d.hatena.ne.jp/str017/20120113/p1

あままこ まあ、ノイタミナは元々疲れた20代OLのための枠だったはずのような(笑)

ナース OLはそんな深夜にアニメなんて見ません!半身浴して寝ちゃいます。

土塊 疲れたOLがディストピア未来社会なんて見るわけないじゃないですか!(笑) まあそれは言い過ぎだけど、マーケティングがおかしいような。

TM2501 20代のOLは、このメンバーと一緒のものは見ないよ。

土塊 自分は日常系アニメよりもサイコパスとか、『絶園のテンペスト』 みたいな世界崩壊系のほうが好きだな。ヒロインの愛花ちゃんが自分を犠牲にすることによって世界が救われるのだけど、そのわりには物凄くドライで、彼女は最後にギャグをかませるぐらいの余裕があるのですよ。TMさんは、今期何が面白かったですか?

TM2501 ブログでも書いたけど、『閃乱カグラ』の萌えアニメ的B級感っぽさがおもいのほどよかったのと、『ヤマノススメ』 はくたばれこの野郎と散々言った(笑)

土塊 TMさんは当初、オタク萌えアニメを散々批判していましたよね。

TM2501 基本的に僕は萌えアニメが嫌いなので。『閃乱カグラ』も、ニコニコ動画で配信されている話題作をたまたま見続けたって感じですね。

土塊 萌え系にも面白いアニメはありますよね。

TM2501 困るのは、萌えがメインでストーリーがおまけみたいになっちゃうと、せっかくジャニーズのおっかけみたいなのを批判するためにオタクになったのに、それだと筋が通らないよなと。

土塊 TMさんはジャニーズディスるためにオタクになったのか!

あままこ ルサンチマンハンター小野に狩られちゃうぞ(笑) あと 『あいまいみー』 が気になっていて、ニコニコ動画の人気同人作家が作ったオリジナル作品をアニメ化したものなのだけど、盛り上がり方が凄いニコ動的なの。あとアニメ本編は見ないけど、ニコ動に上げられているアニメMADはけっこう見ていて。
 だって今のアニメってストーリー性を省いて、カッコイイところだけを見せたいわけじゃない。それなら30分じっと見ているよりも、好きな場面だけを見て、逆にカッコイイところをかっこ悪くして笑わせるMADを見た方が楽しいし。だから、今のアニメってMAD化しているというか、アニメMAD化しているのでは。

TM2501 『テニスの王子様』 の超人芸を楽しむような感覚に近いよね。

ヤサゴン そういうネットのアニメの話題を、「やらおん」 みたいなまとめサイトで芸能記事的に楽しむようになってきているってことじゃない?

土塊 『まおゆう』 はどうでしたか?

あままこ まおゆうはディスろうかと思ったけど、全然しょぼくて可哀想だなあって(笑)

TM2501 テーマとしては面白いのだけどね。経済学的な観点から戦争と金というネタを扱っているし。

土塊 ロビンソン・クルーソーヴェニスの商人みたいな小説はマルクスなどに引用されたりしていて、学問と物語って意外と親和性があるのですよ。

TM2501 『僕は友達が少ないNEXT』(はがない) についてだけど、ブリキ絵の繊細さが出なかった時点でちょっと無理だったな。なんか、イラストレーターアニメ絵って違うじゃないですか。その問題で、『はがない』に突っかかったら色々とトラブルにあったけど。ストーリーも一期は一応見たけど、結局なぞってみてもそんなにたいしたことはないなと思った。あれがライトノベルとして売れた理由は、期待感なのですよ。一巻、二巻だけで終わってしまうのはなんか負けで、三巻、五巻と切れ目のところで複線を回収したときに、「やったー!」 となるために読み続けるというか。

あままこ つまりこれって、「あのね商法」 だよね。まあ、知らない人はググってみてください(笑) でも僕は『はがない』に出ている登場人物達が、友達が少ないという悩みがこの世の中にありふれていることを自覚しているのが面白いなと思っていて。物語の主人公というのは、世界の中で自分は特別な存在であることを無前提のうちに自覚しちゃうじゃない。
僕はそれが嫌で、お前なんてありふれた存在だってことを散々思い知らされてきた身としては、そこから足掻いてゆくものを見たいわけであって。『まおゆう』みたいなのは、俺たち地べたを這いつくばっている人間が・・・。

土塊 『まおゆう』は、「俺と魔王が世界精神だ」みたいな話だよね。

TM2501 僕はまおゆうは 『ターミネーター』 だと思っているのだけど。価値観で侵略してゆくのが魔王で、だけど原作の部分を省略して、魔王の思惑が単純に成功してしまうのがつまらないなと。

あままこ 『まおゆう』の原作を読まない人は多いよね。

土塊 あままこさんは読んでいるんですか。

あままこ 原作は散々ディスったけど、今思うと痛々しくて逆にいいなと思っていて。『銃・病原菌・鉄』 あたりを元ネタにすれば、注目されてちやほやされ承認を得るみたいなことを想像できてしまって(笑)

ヤサゴン まあやっていることは、『嫌韓流』 と変わらないかもね。

TM2501 今日僕が持ってきた 『僕の妹は漢字が読める』 にしても、誰でも思いつくアイディアをそのまま小説にしてしまった感じなのですよね。

土塊 ラノベの面白さは、その誰でも思いつくようなアイディアを200pにも300pにも出来てしまうところなのじゃないかな。

あままこ ラノベはそれでもかまわないのよ。でもアニメは集団作業じゃない。だからそこで他者の視線が入らないとダメなのだよ。だけど、今は本当に作品が好きなスタッフだけで団結して作っているように見えてしまうんだよな。僕が『カリオストロの城』が好きなのは、あれが原作破壊だからなのだよね。原作に疑問を抱いている人が、それを再構築することによって相乗効果が生まれて面白くなっていくと思うので。だからむしろ原作なんてどんどん破壊すればいい。

ナース 70年代の初期からルパンを知る者としては、『カリオストロの城』はオリジナルとはまるで別作なのだよね。もう完全に宮崎駿作品になっている。

TM2501 原作が読みたければ、マンガを読めばいいしね。

ナース 『峰不二子という女』のほうがモンキーパンチ原作に近いと思う。

土塊  えー、というわけで今期アニメの感想も出揃った所で、特にまとめや結論もないのですが今日は皆さんありがとうございました。ここで告知です。4月14日の大阪文フリで、我々の作った文化同人誌ウェブニタスVol.2』を売りますので、最寄りの方はぜひお越しください〜。

【『ウェブニタスVol.2』参加予定】
2013年4月14日(日曜日) 堺市産業振興センター・第十六回文学フリマin大阪(ブース:H-14)
2013年4月28日(日曜日) 幕張メッセ・超文学フリマinニコニコ超会議2(ブース:イ-38)
【仕様】
予定価格:400円
予定ページ数:約50項
予定サイズ:B5
http://d.hatena.ne.jp/dokai3/20130327/p1

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