■歴史研究の民主化
韓国では、朝鮮半島における民族的に正統な政権は北朝鮮だとする勢力がいまなお優勢だ。教育関係者によると、この勢力は中学、高校の教師の間に深く根ざしており、「ただでさえ左派的な教科書の内容を踏み越え、生徒に『朝鮮戦争の発端は米帝国主義に追従した南(韓国)政権の北朝鮮への侵略にある』などと、平気で発言する」という。
近現代史の事実や現象は、「抗日」や「独裁への抵抗・民主化」をからめて半ば「押しつけられてきたのだ」と、元ジャーナリストの大学教授はいう。
半面、歴史教科書をめぐる対立がここにきて激化した背景には、民族や外交、社会の動向など歴史研究が多様化し、研究成果の公表と合わせて“民主化”が進んだことが挙げられる。
「経済や社会の発展史の観点に照らすと、従来の抗日や独裁打破にこだわった歴史認識では説明がつかない矛盾点が多くあり、客観的な事実を通じた科学的な真実の解明という歴史本来の役割を果たし得ないという現実に突き当たった」と、歴史学界の関係者は指摘している。
■修正続く歴代政権
現在の韓国で歴史認識の対立が激しさを増している理由は、もう1つある。それは、保守系与党セヌリ党の朴(パク)槿(ク)恵(ネ)現大統領が、朴正煕元大統領の娘だという点だ。
現大統領の実父をめぐっては、「韓国の近代化に大きく貢献した」という前向きな評価と、「情報機関を駆使して独裁体制を敷き、民主化の動きを弾圧した」とする否定的な評価がある。
近代化の過程では日本との国交正常化を実現したが、これをめぐっても日韓基本条約を結び、日韓請求権協定によって日本からの資金を導入して社会基盤と産業力の基礎を整え、現在の韓国の繁栄の礎を築いた−と評価する保守派に対し、左派は「開発独裁」や「親日」、さらには「植民地によって失われた個人財産を日本に請求する機会を放棄した国賊」といった言葉を使って批判することがある。
盧(ノ)武(ム)鉉(ヒョン)、李(イ)明(ミョン)博(バク)両政権など歴代の政権は、日本の統治時代を含む現代史について、発足当初は「未来志向」と言いながら、末期には「過去史の見直し(清算)」と称して「修正」する事態を繰り返してきた。
左派は現在、朴元大統領のマイナスの歴史評価を、その娘である朴槿恵大統領の正当性を否定する論調に転用、政権運営上も看過できない問題となっている。
◇
教学社の教科書問題昨年、国の検定を通過した韓国の出版社、教学社の高校教科書「韓国現代史」をめぐる問題。韓国メディアによると、執筆陣の中で保守派の代表格とされる政府系研究機関「韓国学中央研究院」の鄭永順氏らを対象に、民主党議員が研究に関わる出張費や研究結果などの提出を要求する「特別監査」を実施した。一部の左派系メディアは監査を大きく伝えたのに対し、保守勢力は強く反発している。この教科書の記述内容は8月に確定する見通し。