沖縄県・尖閣諸島の領有権をめぐり日中が対立している問題で、日本政府が先月、中国政府に「領土問題の存在は認めないが、外交問題として扱い、中国が領有権を主張することは妨げない」との打開案を提示していたことが8日、分かった。複数の日中関係筋が明らかにした。
昨年9月の尖閣国有化後、「日本が領土問題の存在を認める」ことを首脳会談の条件としてきた中国側に対する「回答」の形だが、“満額”ではないため、受け入れられるかどうかは未知数だ。
関係筋によると、打開案は先月訪中した谷内正太郎内閣官房参与が示した。領有権の帰属を争うことになる「領土問題」は認めないものの、日中関係の障害となっている「外交問題」として扱い、事態の沈静化を図るのが狙い。
これまで日本は「領土問題は存在しない」として中国の主張を受け付けてこなかったが、緊張激化を懸念するオバマ米大統領が双方に話し合いを促す中、安倍政権は一定の柔軟性が必要と判断。今回の打開案提示につながったとみられる。
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| 沖縄県・尖閣諸島魚釣島付近を通過する中国の海洋監視船(奥中央)=1日
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また野田政権時の昨年、中国が尖閣諸島周辺の領海内への公船立ち入りについて「日中双方が12カイリ(約22キロ)内に入らないことで合意する」よう要求していた点については拒否。中国の公船が立ち入らないよう求めた。
国有化以降、日中双方の公船が周辺海域で交錯し、偶発的衝突も心配される中、日本政府内では外務省を中心に「中国側が領有権を主張する以上、 何らかの形で 問題の存在を認めざるを得ない」との考え方が強まっていた。
中国の海洋監視船などは国有化以来、今月7日までに計51回、尖閣周辺の領海内に侵入。中国側は毎回、数隻の船団を組んで活動しており、事態が長期化する中で「 中国側を中心に、 現場には疲労感が募っている」(日本政府高官)という。日本側はこうした事情も踏まえ、局面打開を図りたい考えだ。(共同通信編集委員 太田昌克、柿崎明二)
事態緊迫化受け再浮上 「問題」認める苦肉の策 沖縄県・尖閣諸島の領有権をめぐる日中対立を「『外交問題』として扱い、中国が領有権を主張することは妨げない」とする日本が提示した打開案は、2010年9月の中国漁船衝突事件で日中関係が悪化して以後、選択肢として登場し、いったんはお蔵入りとなっていた。その後、中国の公船による尖閣周辺の領海内への立ち入りが続き、事態が緊迫化したのを受けて“再浮上”した格好だ。
「尖閣諸島がわが国固有の領土であることは言うまでもないことだ。歴史的にも国際法上も疑いのないことであり、これを有効に支配している。外交上の問題はあっても領土問題は存在しないというのがわが国の立場」
昨年3月21日の参院沖縄北方特別委員会。玄葉光一郎外相(当時)は、野党議員の質問にこう答えた。力点の置き方は逆だが、「外交問題として扱う」との考え方は、今回の打開案に通底する。
1996年2月19日の衆院予算委員会で、池田行彦外相(同)が「中国との間において尖閣をめぐる領有権の問題は存在しない」と答弁。政府は一貫してこの見解を堅持し続けてきた。
だが2012年に玄葉氏がこれを修正、「外交上の問題」として扱うことを表明した背景には、日中関係を極端に悪化させた、中国漁船衝突事件があった。
一方の中国政府は、衝突事件の発生以前から「尖閣は領土」と明記した1992年制定の領海法に基づき、領有権についての主張を強化。玄葉氏の答弁は、尖閣をめぐる問題で日中関係が決定的に悪化するのを回避することを狙った対中メッセージだったとも読める。
しかし、この答弁があった直後の昨年4月、石原慎太郎東京都知事(当時)が、都による購入計画を表明。石原氏の動きを封じる目的で野田政権が国有化構想を打ち出すと、日中関係は険悪化のスパイラルにはまり込んだ。
それでも日本政府内では当時の丹羽宇一郎駐中国大使が「日中間に係争があることを認め、首脳会談を行うべきだ」と主張。その後、日中両国のナショナリズムが高揚する中、「領土問題は認めないが外交問題として扱う」という苦肉の策は、日の目を見ることはなかった。(共同通信編集委員 太田昌克、柿崎明二)
(共同通信)
2013/07/09 13:46