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【第285回】 2013年7月9日
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真壁昭夫 [信州大学教授]

「中国すり寄り」は韓国にとって本当に得なのか?
日本と距離を置きたがる韓流外交の本心を見極めよ

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 ところが最近、経済成長が鈍化し、共産党幹部など一部の層とそれ以外の一般庶民が受け取る分配に、大きな格差があることが明確になった。しかも、情報・通信の発達で、それを多くの国民が目で見ることができるようになった。国民の間から不満が出て、民主化に対する要求が高まるのは当然だ。

 一方の韓国経済は、一部の財閥系の大手輸出企業を強化することで、経済全体が成長を遂げてきた。リーマンショック以降、ウォン安傾向が続いたことも、韓国にとって重要な追い風になった。

 しかし、アベノミクスによって円安・ウォン高傾向が進むと、サムスンや現代など財閥系輸出企業の製品群の競争力が低下した。それに伴い、韓国の経済成長は鈍化し、国民が受け取る分配が増えにくい状況になった。

 そうなると、一部の財閥系企業と一般の中小企業、また財閥系企業で働く人と一般の中小企業で働く人の格差がより明確になった。多くの国民から不満が出るのは、当然だ。韓国政府は打開策として中国に近づき、中国向け輸出の増加を図るなどして、事態を改善させることを選択した。

 ただ、中国経済が抱えるリスクを考えると、韓国政府の選択はベストとは考えにくい。そもそも、韓国は北朝鮮の脅威に対するために、米国の軍事力を必要とするだろう。実際の有事には、わが国にある米軍基地は極めて重要になると見られる。それを考えると、平時から韓国は、わが国と良好な関係を維持しておいた方が有利になるはずだ。

日本から部材を輸入してIT製品を輸出
サムスンの株価下落に見る韓国の曲がり角

 わが国と韓国の経済関係を整理すると、まず貿易収支はわが国が黒字だ。わが国は、韓国からサムスンのスマートフォンなどのIT製品を輸入する一方、機械などの資本財やIT関連の重要部材を韓国向けに輸出する構図になっている。

 その背景には、韓国では精密度の高い資本財の生産が、国内需要に完全に追いついていない事情がある。というよりも、世界でもトップクラスと言われるわが国の生産財を生み出す技術力に追いついていないのが現状だ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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