土俵に豪快に塩をまく大砂嵐(潟沼義樹撮影)=愛知県体育館で
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◇名古屋場所<2日目>
(8日・愛知県体育館)
アフリカ大陸出身の新十両大砂嵐(21)=大嶽=が2連勝した。イスラム教徒の大砂嵐は10日から「ラマダン」を迎え、日の出から日の入りまでは食事も水もとれなくなる。横綱、大関陣は安泰。名古屋場所3連覇を目指す横綱日馬富士(29)=伊勢ケ浜=は豪風を一方的に押し出した。両関脇は明暗。妙義龍が安美錦を押し出して初日を出したが、豪栄道は千代大龍に押し出されて2連敗となった。八百長問題で解雇無効を勝ち取り復帰した蒼国来(29)=荒汐=は2連敗となった。
右のかいなをグイッと返し、左上手をがっちりつかむ。アフリカ大陸出身初の関取、エジプト出身の大砂嵐はそのまま里山を寄り切って連勝スタートだ。
相手は低い姿勢が持ち味の相撲巧者だが「小さい相手、問題ない」と臆することなく向かっていった。2連勝にも「まだ13日間ある。ラマダン? 大丈夫」と引き揚げて行ったが、4日目から始まるラマダン(断食月)には精神修行の意味もあり、苦労とは思っていない。
早ければ3日目からだったラマダン。期間は月の満ち欠けに関係があり、1日遅れて4日目からになることが決まった。この日夜、日本国内で新月が確認できなかったため。これも、大砂嵐にとって助けになるかもしれない。
「稽古と断食、両方ともやりたい」。どちらも修業と受け止める。相撲部屋で生活を始めたときに衝撃を受けたのはトイレ掃除だった。「最初は気持ち悪かった」と面食らった。だが、考え方を変えて一生懸命に掃除した。
「夢があったから。かなえたい夢があった。そのときの気持ちを忘れてない。心が大事」。エジプトでは10歳の子供からラマダンを始める。飲食を断つことで、食べ物や水のありがたみを小さいころに身をもって感じるためだ。
不安があるとすれば取組時間。「(序二段だった)去年の取組は午前11時くらい。今年は15時くらい。時間が遅くなって大丈夫かなという気持ちはある」。4日目の取組前に飲食できる時間はファジュル(日本語でれい明)と呼ばれる空が白け始めるころの10日午前3時ごろまで。夕食は午後7時すぎからしか食べることはできない。
24時間営業のマクドナルドや部屋でまかなうことになる。部屋の世話人の友鵬は、大砂嵐が大好きな、辛口に味付けした特製の「ラー油にんにくみそ」を冷蔵庫に作り置きした。強固な意志と周囲の支えで大砂嵐は相撲とラマダン、2つの修業をまっとうしていく。 (岸本隆)
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