【動画】東浩紀さんらがチェルノブイリを視察=関根和弘撮影 |
【動画】ウクライナの建築家がチェルノブイリ「観光地化」を提言=関根和弘撮影 |
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【関根和弘】「福島第一原発観光地化計画」。あえて挑発的な言葉をひっさげて、東日本大震災で事故を起こした福島第一原発の跡地利用を考えようとしている人たちがいる。
思想家の東浩紀さん(42)、ジャーナリストの津田大介さん(39)、社会学者の開沼博さん(29)らのグループだ。いずれも多くの日本人と同じように「3・11」に大きなショックを受け、自らの仕事にも影響し、被災地へと関心を向かわせた人たちだ。
二度とあのような悲劇を起こさせないため、事故の記憶と教訓をどう後世に伝えていくか。そのために必要な施設は何か。突き詰めた結果、たどり着いた結論が「観光地化」だったという。
観光地化と聞くと、きっと多くの人は眉をひそめるに違いない。実際、東さんたちのもとにはツイッターなどを通じて「悲劇を体験した被災者や被災地に失礼ではないか」といった批判が寄せられたという。
だが、東さんは言う。「怖いもの見たさで福島を訪れるなんて地元からすれば不謹慎だろう。でも、福島はすでに世界で原発事故を起こした『フクシマ』として記憶されている。人々の好奇心から遠ざけることはできない。むしろそれを逆手にとって、訪れる人に事故の現実と教訓を伝えるべきだ」
東さんがそんな思いを強くするのは、同じく未曽有の爆発事故を起こしたチェルノブイリ原発の「いま」を知ったからだ。震災翌年の2012年、チェルノブイリ原発があるウクライナでサッカー欧州選手権(ポーランドと共同開催)が開かれた。試合観戦のついでに、英国人サポーターらがチェルノブイリ原発見学ツアーに参加し、事故が起きた4号炉を間近で記念撮影している様子が英国の新聞で報じられた。
東さんは驚いた。「あれだけの事故を起こしたチェルノブイリに一般の人が行けるようになっていることに衝撃を受けた。福島第一原発の跡地も、いずれはこうなると思った」と語る。
チェルノブイリで一般向けツアーが解禁されたのは震災が起きた2011年。事故から25年後のことだ。東さんたちは福島の25年後も同じように、日本だけでなく外国からも「観光客」が訪れる場所になっていると予想する。来るべき日に備え、チェルノブイリの教訓をもとに福島の未来について今から議論したいと考えた。
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私は昨年、ちょうどチェルノブイリのツアーを取材していたため、東さんらの計画に関心を持った。今年4月、東さんらが実際にチェルノブイリを訪問した際、同行して取材した。彼らが何を感じ、何を得たのか知りたかったからだ。
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