刑の一部執行猶予制度:薬物依存者に専門治療の道

毎日新聞 2013年06月13日 21時26分(最終更新 06月14日 00時09分)

一部執行猶予になった薬物依存者の処遇のイメージ
一部執行猶予になった薬物依存者の処遇のイメージ

 法務省は11年4月から、医療機関や精神保健福祉センターを管轄する厚生労働省など関連機関との連携を強化するガイドライン作りを推進し、依存者の回復を支援するモデル事業にも取り組んできた。制度スタートまでに、十分な受け皿を確保できるよう全力を挙げる方針だ。

 出所にあたっては保護観察所が処遇計画を策定するが、一部執行猶予の期間が過ぎた後も支援する仕組みの整備が必要と指摘する専門家もいる。「日本ダルク本部」の近藤恒夫代表は「薬物依存者に対しては刑罰ではなく、治療で臨むのが世界の潮流。一部執行猶予制度の導入で刑期が短縮され、社会での治療や回復支援に力点が置かれれば一歩前進だ。ただ、生涯の治療を要する依存者もおり、期限付きのケアでは意味がない。保護観察終了後のフォローも充実させるべきだ」と指摘している。

 ◇適用判断に裁判員関与の可能性

 一部執行猶予を適用できるのは(1)刑務所に入ったことがない人(2)違法薬物の使用罪を犯した人−−に3年以下の懲役や禁錮を言い渡すケース。このうち(1)については、市民から選ばれた裁判員が関わる可能性もある。

 ある法務省幹部は「裁判員裁判で保護観察付きの判決が増加している。一部執行猶予制度は、そうした傾向を強め、社会全体が改めて安心安全な地域作りを意識する契機となるはず」と期待する。

 太田達也・慶応大法学部教授(刑事政策)は「刑罰の選択肢が広がり、施設内処遇と社会内処遇の連携を図れるようになった意義は大きい」と新制度を評価した上で、「裁判員や裁判官が適切に判断できるよう、一部執行猶予の適用が妥当であることを検察官や弁護人がきちんと主張できなければならない」と指摘している。

 ◇保護観察中の社会貢献義務化も

 13日には、保護観察対象者に社会貢献活動を義務付けられる改正更生保護法も同時に成立した。公共の場での清掃活動、福祉施設での介護・介助などが想定されており、2年以内に導入される。

 欧米には、裁判所が刑罰として命じる「社会奉仕命令」があるが、日本の場合は刑罰ではなく、社会の一員としての意識付けや規範意識の向上を図り、対象者の改善更生を促すのが目的だ。保護観察所などが、保護観察対象者に実施を義務付けることができ、守らなければ執行猶予が取り消されることもある。

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