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1−2
部屋の中はあらゆる物が散乱し、手の付けられない状態となっており外の様子を見る為、俺達はとりあえずその部屋を出た。
廊下に出てしばらく行くと、航空自衛隊の制服を着た年配の男が窓辺で呆然と外を見て立っていた。
階級章を見るとなんと空将ではないか!
それが俺とその後の日本の運命を変えた男、東郷 有作との初めての出会いであったのだ。
気が付くと三村がすたすたとその男に近づいて行き、敬礼をして声をかけたではないか。
「東郷所長、お怪我はございませんか。」
「君、あれを見たまえ。」
そう言って外の方を指差し、三村は言われた方を見ると目が点になっていた。
俺は何故そんな目になったのか興味が湧き窓辺に近づいて外を見てみた。
するとそこには旧式のプロペラ機がズラリと並んでおり、その周りの人々もこちらを指差し何やら騒いでいるようである。
しばらくするとそのうちの数人が、こちらへ近づいて来た。
「おい、あの服装は戦前の飛行兵の…、まさか!」
東郷所長は絶句して辺りを見回し俺の手にあるハンディカムに目を止めすぐに彼等を撮るように命じられた。
俺は言われるままに近づく男達を撮影しはじめ、ファインダーの中を覗いて見ているうちに、その男の手に拳銃が握られているのに気が付いた!
「三村!あいつの手を見ろ!」
「ああ、判っているさ。」
「お前達は誰か!何処の者だ!」
拳銃を握った男が俺達に聞いて来た。
「すまんが、君に聞きたいのだが今日は何年の何月何日かね。」
乃木所長が訳のわからない事を言い出したもんだと俺と三村は顔を見合わせ、はッと気が付いた!
ここは東京のど真ん中の目黒のはずであった!
しかし周りにはビルも無ければ道路も無く、そこには有るはずの無い海が広がっているではないか!
「何をわからん事を言っとるか!今日十二月十五日だ!」
「いやいや、昭和の何年かと聞いているのだが。」
「お前達、気でも狂っとるんか、昭和十六年に決まっとろうが!」
昭和!?いったいどうなっているんだ?東郷所長といい、拳銃の男といい、俺の脳みその許容範囲を遥かに超える出来事が、次々と展開されていった。
「すまんが君、菊池司令の所へ案内してくれんか。」
東郷所長はそう言うと窓を乗り越え、拳銃の男の方へ歩いて行った。
「東郷所長!どちらへ行かれるのですか!」
「おぉ、君は確か三村君だったか、まだわからんかの。ここは戦前の館山航空隊なんだよ、あの九七式艦上攻撃機の識別番号が見えんかね。」
きゅうななしき?俺は撮影をしながら、目の前で起きている状況をまだ理解できていなかった。
「君達すまんが、私の部屋からノートパソコンとブリーフケースを持って来てくれんか。」
「はぁ、わ、わかりました。」
三村は俺に目配せして俺の方へ歩いて来てそのまま廊下の奥へ歩いて行き、俺は慌ててその後を追いかけた。

1−3に続く。


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