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第一章・激動の時代へ
―201X年12月15日―       
東京都目黒区

「よッ!」
「おう、来たか。」
声を掛けた俺の名は
前原 陽斗 (まえはら ひろと)四十才、元航空自衛官で今は某新聞社のカメラマンだ。
今日は、取材を兼ねて航空自衛隊時代の同期である、三村二尉の所属する防衛研究所へ見学に来ていた。
三村とは百里基地にある、第7航空団(主に関東地域の領空を守る部隊)時代からの付き合いで、俺が訳あって空自を辞めてからもたまに、飲みに連れ出したりしていた仲だった。

防衛研究所とは、幹部自衛官に世界情勢や最新装備等の教育を行ったり、現装備品や新兵器などの研究を行っており、また太平洋戦争の戦史の編纂もここで行われていた。
日本の安全保障政策においてゆるぎない地位を確立しており、我が国最大の戦史研究センターとしての役割も担っている。
俺は前からここに興味があり、一度取材をしようと思っていたのである。
そこへ同期の三村がひょんな事から出向となり、ついに俺の念願が叶い、招かざる見学者となって今日、ここを訪れたのである。
招かざるとは俺がマスコミの人間だったからだ。
最近、防衛省では情報漏洩が続きマスコミに対し敏感になっていた。
そこで俺は一計を案じ、三村の義理の弟に成りすまし、目立たぬよう職員の少ない日曜日に見学に来たのである。
「お前の頼みはむげに断れんからなぁ、だが俺のクビが飛ぶような事だけは勘弁してくれよ!」
「分かってるって、お前の心配するような事はせんからさ。」
俺はそう言いながら、いぶかしげな目で見るガードマンの手から入構証を受け取り、それを首からぶら下げ所内へと案内された。
防衛研究所は思ったよりも広く、日曜日ということもあり人影はなかった。
建物に入り最初に連れて行かれた所が戦史編纂室だった。
「しかし奇偶だよなぁ、お前の爺さんも特攻隊だったとはなぁ。」
三村が俺の顔を見ながら、先日の居酒屋での話の続きをはじめた。
「あぁ、まったくだ、お前の爺さんと俺の爺さんがもしかしたら同期の桜だったかも知れんとはなぁ。」
俺は三村に答えながら、上着のポケットから一枚の古びた写真を取り出し、そこに写っているひとりの若者をジッと見つめた。
亡くなった祖母の遺品を整理している時に、たまたま俺が見つけて父に尋ねると
「わしも初めて見るのぉ。」
とそれを手に取り裏返すとそこには前原 十三朗と記されており昭和二十年八月、横須賀空(横須賀海軍航空隊のこと)と添え書きされていた。
特攻隊で散っていった、祖父の在りし日の遺影だったのである。
俺はパソコンの前に座り、早速昭和二十年の横須賀基地のデータにアクセスした。
とその時!パソコンの液晶画面が消え、真っ暗になり続いて机がガタガタと震え出したと思ったとたん!部屋全体が揺れ出し、ようやく地震だと解り俺達は慌てて机の下へ潜り込んだ。
だんだん揺れはひどくなり、周りにある書棚が次々と倒れ出した!
と次の瞬間!ド~ンと地面が突き上げられ、部屋の照明が消えいきなり揺れが収まった。
「おい!前原、大丈夫か!」
「おう、なんとかな。今のかなりデカかったな!」
「ああ!7はあったかな!って事はまさか!」
「そのまさかだな!東海地震じゃないか!」
「おいおい、家は大丈夫かなぁ。」
三村は慌てて携帯電話を取り出し、かけたが繋がらないのか俺のはどうだと聞いて来た。
俺は自分のスマホをポケットから出し、見てみるといつもなら電波が通っているのに、今は圏外となっていた。
「俺のもダメだ、ここは電波が悪いんじゃないのか?」
「いいや、いつもは電波がいいはずなんだがなぁ。」
三村は携帯を手に持ち腕を伸ばし、上げたり下げたりしながら気のない返事をした。
俺はカバンからハンディカムを取り出し、早速その様子を写し始めた。

1−2に続く。


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