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2013/07/07 10:26 - 2013/06/28

「スマートビエラ」が踏み抜いたというARIBの「放送の一意性確保」ルール


Panasonicがこの4月から発売を開始した 「スマートビエラ」 シリーズ
について、放送局が CMを拒否している というニュースが話題になりました。
放送局側が求めているガイドラインに違反しているというのがその理由です。
 
■パナの新型テレビCM拒否 技術ルール違反と民放 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013070601001715.html
 
ちなみに問題となっている「スマートビエラ」の画面というのは
具体的にどんなモノなのかといいますと、
 
■はじめてのスマートビエラ|プラズマテレビ/液晶テレビ「VIERA(ビエラ)」|Panasonic
http://panasonic.jp/viera/first_sv/

 
こんなモノですね。テレビを観る窓の周りを、インターネットの ウェブサイトを
見られる枠 が取り囲んでいて、リモコンでネットを見られるというものです。
 
この画面を見て、え、普通だよね、「何がいけないの?」「テレビ局ひどい」
「よほどネット機能を入れさせたくないのか」 という感じの反応が
多くありました。それはそれで確かにおっしゃるとおりではあります。
ただ、そもそも本題となっている「ルール」とは、そもそも(建前として)
何を意図したものなのか? ということについては、業界々々した話
であるためか一般的にあまり知られているような話ではない印象もあります。
 
■はてなブックマーク - パナの新型テレビCM拒否 技術ルール違反と民放 - 47NEWS(よんななニュース)
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.47news.jp/CN/201307/CN2013070601001715.html
 
このルールの存在は、たとえば 「デジタルテロッパ」 が登場した背景に
テレビメーカーが同様の機能を入れられない事情があったからだとか、
テレビには入れられないけどPC、タブレット等では若干基準がゆるくなって
きているようだとか、色々なニュースの端々で ときどき見え隠れ していました。
 
■【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】第483回:ソーシャルでテレビが変わる? ニコ実テロッパ「EN-NL1068」 -AV Watch
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20101013_399603.html
■【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】第541回:ホームネットワーク活用No.1へ、東芝「DBR-Z150」 -AV Watch
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20111130_494176.html
 
ここでおさらいしておくのには良い機会かなと思い、メモをしてみます。
 
 
何となく「テレビの中にネットを入れさせたくない」という既得権の亡者の
ような反応が多いのですが、そして実際問題としてその意図はもちろんある
というか、大きな流れとしては放送局側もそれがメインで死守しているという
ところもあるはずなのですが、その既得権を守ってきたルールの前には
 
 建前としての放送コンテンツの「一意性」保持
 
というお題目があります。これは「放送波」という特権を持っている放送局と
その受信機を作る企業が、そもそもとしてコンテンツを悪用して暴走しない
ようにと定めた業界ルールで、そのそもの成り立ちとしてはどちらかというと
自主規制的の意味合いも持っているものだと考えるほうが良いと思います。
 
具体的には ARIB TR-B14 9.3 に規定されたルールのことを指しますが、
それよりもこちらの Dpa の資料 をご覧頂くほうが理解が早いのではないかと思います。
これはルールそのものではなくて、今から6年前に「テレビパソコン」
「ケーブルテレビSTB」「ネット機能付きテレビ」などがどんどん
出始めたときに家電メーカー等に「放送を扱うということの意味」について
改めて理解を促すという目的で作られた説明資料のようです。
 
■一意性確保ガイドライン回答 - ichiisei070828.pdf
放送番組及びコンテンツ一意性の確保に関するガイドライン(平成19年8月28日)
地上放送事業者連絡会、BS放送事業者連絡会
http://www.dpa.or.jp/business/mfr/pdf/ichiisei070828.pdf

 
そんなに長い資料でもなく、お役所的な文章でもない、分かりやすい
ガイドライン文書ですので、ざっと一読して頂けば理解は進むと思います。
 
簡単にいうと、
 
・テレビの受信機にあたる機器を作る者は、放送コンテンツと同一視
 されうるような表示を画面の中に 勝手に混ぜ込んでは いけない
 
ということです。その意図をもうちょっと明確にすると、
 
・放送内容の 理解を歪めたり、利用者の意図しない形で
 視聴を遮るような 仕組みが備わっていてはいけない
 
ということになります。もうちょっと具体例をいえば、
 
 
ラピュタの放送中、「バルス!」のタイミングに合わせて
 L字で「バルス!」と叫ぶガリガリ君 が取り囲むように出てくる
 
とか、
 
「大自然の中に生きるイルカの親子」 という放送の下に
 「イルカを虐殺し続ける日本人の真実」 というバナーが出続ける
 
 
とか、そういうことができてはいけない、ということですね。
建前でいえば、放送事業者は放送される内容については厳しいチェックを
入れる義務があり、また、映画などの別事業者の作ったコンテンツについて
自局の勝手で歪めたりせずに「そのまま」を流す
という義務があるというワケです。
 
もちろん、そういう矜持が大切だ、ということとセットにして、
放送コンテンツにCMを混ぜられるのは自分達だけである、という既得権を
堅守しようという意味が込められているのもまた当然のことではありまして、
その ARIB TR-B14 9.3 自体も実は 「CMカットするな」というルールも
コンテンツ一意性保持の一環だよ、という主張をしていたりします。
 
(TR-B14第二編9.3章 抜粋)
9.3 放送番組及びコンテンツ一意性の確保
 
放送番組及びコンテンツの全体としての一意性確保の為、受信機は以下の事項を守る事が望ましい。また受信機が蓄積機能を持つ場合、また外部の記録機をコントロールする機能を持つ場合も、以下の事項を守る事が望ましい。
 
・放送信号若しくは、放送信号等に含まれる記述子やデータなどを使い、例えば告知や広告部分のカット、スキップを自動的に行う様な機能の実装、及び蓄積機能、外部記録機の自動制御を行わないこと。なお、ユーザーの操作による早送り、一時停止などはこれにあたらない。
 
・放送番組及びコンテンツの提示中に、それと全く関係がないコンテンツ等を意図的に混合、または混在提示しないこと。例えば、提示中の放送番組の表示にその番組と全く関係が無いコンテンツや告知、広告を混合提示し、意図的にそのコンテンツや告知、広告が放送番組と一体であるかの様な誤解を視聴者に与える提示を行う機能がこれにあたり、テレビ放送画面とインターネットのブラウザ画面が一体であるかのように視聴者に誤解させるような機能を装備することなどを指す。なお、受信機の機能として、上記の様な誤解を与える事を目的とせず、ユーザーの操作により複数のコンテンツを一画面に同時提示する事、例えば2画面表示、小画面表示機能はこれにあたらない。

そういう意味で、矜持だけを鵜呑みにするわけにもいかないのですが、
逆に「そんなルール無意味だよ!」とだけ安易に言ってしまった場合、
テレビ受信機はネットを通じて 放送画面に何でも混ぜて良いのか?
という話になりえるということも考慮をして議論しておかなければなりません。
 
寡占であるが故に厳しい目で監視されている放送局とは違い、受信機メーカー
とそこに入り込む広告・アプリにはどんなものが紛れ込むかわかりません。
 
 
・・・みたいな話が、前からあって。(ふう)
 
いえ、この件でテレビ局を擁護しようとか単純にそういうことでは全くなくて、
この「放送には内容と違うものを勝手に混ぜない」という矜持があることと、
それを錦の御旗にして「CM枠の価値の希少性」を守る、という 2つの意図が
一体となって いることについては、以前から多くの指摘を受けていました。
 
進化を阻む問題でもありますし、一方で、テレビをネットと同じような渾沌に
しないための防壁でもあるワケですね。テレビ受信機を作る側としてみれば当然、
コンテンツ編成(CM含む) のコントロールを家電側に持ってきたいわけです。
放送局はもちろんその逆です。
 
では、コンテンツ制作(番組供給)側 はどうなのか? というと、
画面に混ざり物があるのが当たり前の状態ではコンテンツの価値が棄損こそすれ
向上はしない(例、前述のラピュタへのガリガリ君L字、等)、という意味で
テレビ局側と同じく「一意性保持は堅守してくれ」という立場に位置することになります。
 
そんな中で、Panasonicにしても、Sonyにしても、テレビ受信機を作る側としては
テレビ局側と揉めない範囲でどのようにネット機能を盛り込んでいくか、という
微妙なせめぎあいをしてきました。レコーダも、STBもまた然りです。
 
今回のお話も、「テレビ局の汚い利益独占の場に、Panasonicが反旗を翻した!」
みたいな単純な 対立構造のお話という感じはしなくて
普段から互いに配慮してやってきたのものが、ちょっと踏み越えた、踏み越えない、
という話で揉めているということなのだと思います。
 
というのも、先述の ARIB TR-B14 9.3 のガイドラインの説明文を見てみても、
このルールはそんなに頑ななものにはなっておらず、家電やパソコンメーカー側の
商品企画の意図にも配慮を持った説明になっています。
 
なお、番組とそうでない情報とを明確にわかるようにする手段として、リモコンを使って視聴者に操作を求めること で明確化することは有効である。ただし、取扱説明書等への記載のみでは十分ではなく望ましくない。
なお、TR-B14/B15第二編9.3章/7.3章にも記載の通り、例えばユーザーの操作によってテレビ受信アプリケーションとその他のアプリケーションを同時に起動するなど、視聴者に混乱を与えない」ことが明確なケースにおいては、番組の一意性確保の点で特に問題はないと考えられます。
というように、ユーザが 自身の操作で意図的にマルチ画面にするケース
についてはまったく咎めることはないことが明記されています。
 
Q2:本ガイドライン第4章「番組の一意性の確保」に、「番組とそれ以外の画面が明確に区別できるような受信機の画面構成を設計する必要がある」とありますが、明確化の具体例はありますか?
 
A2:受信機の実装については基本的に各受信機メーカの商品企画ですが、本ガイドラインの趣旨に沿って、第4章に記載の手段のほか、例えば以下の方法による明確化が望ましいと考えます。
 
電源投入時 (テレビ機能起動時)、受信したテレビ映像を表示画面全体に表示する
・テレビ映像画面とその他の画面を同時表示する際、テレビ映像とは異なるサービス/コンテンツプロバイダから供給される 異なったサービスであることが明確に分かる画面構成とする(図1を参照)
・可能であれば、テレビ映像以外の画面の情報を送り出し責任を持つサービス/コンテンツプロバイダ名を表示する
・放送事業者以外が提供する情報は、テレビ映像画面以外の場所で表示する(例えば告知情報、緊急警報、ロゴなど)

とQ&Aにもあるように、少なくとも 電源投入時 はテレビ放送波のコンテンツだけを
表示して「混ぜ物」をしないように、ということ、および、ユーザ操作によって
マルチ画面になった場合にも、放送枠とそれ以外の 枠が明確に区別できる
ようなレイアウトにするように、という注意を守るように説明されています。
 
おそらくPanasonicは今回の「スマートビエラ」もARIBの意図に反しないように
注意しながら作ったつもり なのだと思います。が、今回はこの「電源投入時」の
挙動が違反をしているという解釈になったのでしょう。(繰り返しになりますが、
ユーザのメニュー操作によってマルチ画面になることは禁止されていません)
 
今はこの「スマートビエラ」のL字にはネットのブラウザが並んでいます。
しかし、あくまで可能性の問題ですが、これがいつの間にか 一面「バナー」に
変わっていて、前述のような「放送コンテンツの意図を歪めるような使い方が
できるのでは」というのが、放送局側の建前としての問題意識だと思うと、
「そんなのどうでも良いよ」と全部一蹴して良いものでもないという話に
なってくるはずです。
 
たとえばですが、このルールを完全無視すると、常にL字でバナーが出る
かわりに 受信機自体はタダ、みたいなテレビが作れることになりますね。
(インターネット黎明期の「ハイパーネット」みたいなもののイメージ)
最近、スマホでWebを見るときにキワドイ電子書籍のバナーが出て子供の目に
触れるのが問題になっていたりしますが、テレビ放送のための受信機にも
同じようなことが起こってきます。
 
繰り返しになりますが、「放送」は大きな利益独占をしている代わりに、厳しい監視を
受けて 法律や自主規制で縛りを いれているという建前がありました。
一方の受信機メーカーは、開き直ってしまえば何でもやり放題になってしまいます。
そこで先のARIBのルールはテレビ受信機メーカーも放送を司る仕組みの一環で
あるとして、ガイドラインに沿って運用されることを求めているというワケです。
 
そんなの建前でしょ!ホントはCM独占権を守りたいだけでしょ!というのは
まったくもって正論なのですが、こうして「そんな建前どうもいいでしょ!」
とは言い切れないものと 上手く(?)セットに することで放送はその利権を
堅守してきたのだということは、改めて認識しておくと良いかもしれません。
 
ちなみに、「スマートビエラ」の例はL字表示でしたが、映像コンテンツへの
「オーバーレイ」で表示されるものはL字のような枠型よりも解釈としては
さらに厳しいようで、テレビ受信機はニコ動のように映像そのものの上に
コメントを流したりすることは、たとえ ユーザ操作を経ていたとしてもNG
になっているようです。
(前述のとおりPCやタブレットでは若干基準が曖昧になっているようですが)
これを許可してしまえば、文字通り「画面そのものが見えなくなるような乗っ取り」
が出来うることになってしまうからですね。(建前としては)
 
「デジタルテロッパ」 (EN-NL1068) のような外部機器によるソリューションは、
そういうルールとのせめぎあいで生まれたものだったりします。
HDMIの中間に挟んでオーバーレイ情報を付加する機器というのは、
それそのものは テレビ受信機ではない、という解釈ですね。
 
■2010/09/24 [デジタルテロッパ「EN-NL1068」向け、2ch実況を流し込むスクリプトを作ってみた]
■2011/12/06 [ラピュタと「バルス」と実況レコーダ - デジタルテロッパの「タイムシフト」実験(実践編)]

 
今後のいわゆる「スマートテレビ」の方向性がどうなるかはわかりませんが、
「受信機の勝手な都合で放送内容に別のものを混ぜ込まないように」
というルールの解釈について、放送局と受信機メーカーはずっとこうして
ラインの探りあいを続けてきた、という経緯についてイメージを
しておくと良いかもしれません。願わくば、ユーザメリットのあるような進化を
妨げることのない「上手いライン」を探っていって欲しいところですね。



投稿者 CK : 記事URL | コラム | | 2013/07/07 10:26


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▼ コメント ▼

No.33992   投稿者 : スマートで無い   2013年7月 7日 12:18

この問題の内容がよく分かりました。

一つ疑問ですが、今回問題となっているスマートビエラは、「ARIB規格に準拠」+「著作権保護機能を遵守」が確認出来ていたモデルではないですか?
B-CASカード発給の審査に今回の「放送の一意性確保」は審査対象に入っていなかったのでしょうか?
少し疑問????


No.33994   投稿者 : .   2013年7月 7日 14:46

難しい問題ですね。
TVはTV以上になってはいけないとも取れなくはないですか?
PCでできる事をTVでできないなら、TVはどうなるんでしょうね?
PC側がもっとTVの機能に特化して来た時、TVに逃げ場がなくなるような気もしますね。
TV視聴専用アンドロイド端末の登場や、アップルTVに脅威を感じているのかもしれませんね。


No.33998   投稿者 : さき   2013年7月 8日 04:28

とても良くまとまっていて勉強になりました


No.33999   投稿者 : Qちゃん   2013年7月 8日 08:45

こうして揉めている間に中国メーカーが同じものをパクリ、
安価で世界に輸出したとさ、情けない…


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