特集ワイド:続報真相 「あまちゃん」快走のわけ じぇじぇ!…社会現象「アマノミクス」!?
毎日新聞 2013年07月05日 東京夕刊
中森 そう思います。ローカル線が経営難になってアキたちが地元アイドルになって地域おこしに一役買うように、実際に全国の疲弊した地方都市が地元アイドルとゆるキャラで再起を図るケースは多い。しかしそのやり方を単純に賛美してはいません。
亀和田 アキを利用しようとする勝手な大人たちを春子がたしなめる場面があった。大人の欲が丸見えだと。
中森 日本はアニメや漫画を「クールジャパン」と誇らしげに輸出しているけど、どこかうさん臭い。それは結局、何とかもうけてやろうという経済第一主義が透けて見えるから。かつて日本は軍事で大失敗し、戦後に経済発展を遂げたが、そこでもつまずいた。なのに今もまた経済第一主義で進もうとしている。国民はもう無理なんじゃないか、と気付いているのに。
亀和田 原発輸出ビジネスをして経済をよくしようというやり方にも表れている。
中森 じゃあ経済第一主義に代わるものは、と言われてもなかなか答えが出せない。そこへ、このドラマは「純粋に人を喜ばせる、人から喜ばれることって大事なんじゃないか」というメッセージを投げかけています。「喜ばれる国になる」という道があるんじゃないかと。観光向けとなった海女もアキが目指すアイドルも人を喜ばせる点では全く同じ。日本人の場合、空気を読んで控えてしまう部分があるけど、ドラマでは「喜んでもらいたい」という気持ちをストレートに表現している。そこに視聴者は共感しているのではないでしょうか。
−−大震災のあった東北沿岸部が舞台です。
亀和田 僕は今、東北を舞台にしたドラマを作るなら笑いが必須だと思っています。確かに、復興に向け多くの課題があるのは事実です。だけどドラマの中で真正面から向き合うと悲壮感やシリアスさ、正義感を前面に出さざるを得ない。しかしそれだけだと、受け手は重たく感じてしんどいんですよね。「あまちゃん」が多くの人に受け入れられている一つの大きな理由は、笑いだと思います。
中森 例えば昨年の大河ドラマ「平清盛」は内容は悪くなかったのに視聴率は記録的に悪かった。あれは平家没落の物語で、今の日本にあまりにぴったりだったから。