特集ワイド:続報真相 「あまちゃん」快走のわけ じぇじぇ!…社会現象「アマノミクス」!?
毎日新聞 2013年07月05日 東京夕刊
中森 宮本信子や渡辺えりらベテラン陣を相手に、あの堂々とした演技。いささかの不安は、あまりに適役すぎて、ドラマが終わった後もずっとあまちゃんと呼ばれ続けないかということ。「おしん」の小林綾子や「ふたりっ子」のマナカナみたいに。
亀和田 僕らがそこまで心配しなくても……。
中森 心配になるくらいはまり役なんですよ。
−−アキの母、春子役の小泉今日子も話題です。
亀和田 春子はアイドルを道半ばで挫折し、アイドルを目指すアキに反対します。1980年代に「史上最強のアイドル」だった小泉が挫折した役を演じるのが面白い。
中森 「なんてったってアイドル」を大ヒットさせた当人が「アイドルなんて浮ついたこと!」ってアキを叱っているのが笑える。「あなただってアイドルだったでしょ」と突っ込みたくなる。
亀和田 アキを相手に数分間も熱くアイドル論を語る場面がありましたね。
中森 「今はグラビアアイドルとか何アイドルとかに分かれてるけど、昔は全部ひとりでやったのよ」とか、「(松田)聖子ちゃんはすごかったのよ」とかね。芸能界を知っていて娘を守ろうとする姿が説得力を持つのは、キョンキョンだから。春子役は彼女以外にありえない。
−−アキたちが驚いたときに発する「じぇじぇ!」という方言、すっかり全国区になりました。
中森 新語・流行語大賞決定といわれてますね。
亀和田 「じぇじぇ!」がなければ、ここまで盛り上がらなかったね。言葉の持つ力を改めて感じさせられた。
中森 例えば「安藤美姫が出産!」のニュースに驚いたら「じぇじぇ!」と自然に口から出ちゃう。僕のツイッターの反応から、世間の人は驚きたがっていると感じます。
亀和田 視聴者も僕らも、日々さまざまなニュースに触れてシニカルになっている。素直に感動したり驚いたりが難しくなってますよね。だから「あまちゃん」で登場人物と一緒に驚きたいという欲求があるのでしょう。
−−宮藤官九郎さんの脚本はいかがですか。
中森 従来の主な視聴者である熟年層向けの明るいホームドラマ路線に加え、僕らサブカルチャー、アイドル好きも見たくなる小ネタや青春アイドル路線にもしっかり目配りしている。脱帽です。
亀和田 なのにアイドルに対する視線はクール。批評精神が感じられます。