無料低額宿泊所に関する名古屋地方裁判所岡崎支部判決について
2013年(平成25年)6月24日
杉浦工業訴訟原告弁護団
1 名古屋地方裁判所岡崎支部(黒岩巳敏裁判長)は、本日、人材派遣業者である杉浦工業株式会社(本社 愛知県岡崎市)が設置していた無料低額宿泊所(2009年3月から7月までは無届の施設)に入居していた生活保護受給者が、不相当かつ高額な家賃や各種手数料を徴収されたため手元にわずかな金員しか残らず、生活再建を妨げられたことについて、杉浦工業を相手取って損害賠償等を請求していた事件について、元従業員の原告1名について暴行・脅迫を受けて退職を強要されたことについて損害賠償を一部認容したものの、路上生活から生活保護を受給し、被告施設に入居した2名の原告の請求を棄却する不当な判決を下した。
2 原告らのうち2人は、路上生活を送っていた2009年3月に、生活相談の支援を受けて岡崎市に生活保護の受給申請をし、杉浦工業の施設(第2協栄荘)への入居を勧められた者であり、1名は杉浦工業で派遣社員の送迎車の運転、寮の清掃などに従事していた元従業員であり、業務中の接触事故による賠償金の支払義務があるとされ、解雇扱いで退職させられた上で、問題となった杉浦工業の寮(第2協栄荘)に住み続けさせられた上、失業保険や生括保護を受給させられ、その大半を杉浦工業に徴収されてきた。
杉浦工業の施設は、築22年の建物で3畳半程度の個室、トイレ、風呂等はなく、共同のトイレや風呂なども劣悪な環境であるにもかかわらず、生活保護の住宅扶助額の上限である3万7000円の居室料が徴収されてきた。
原告らは、居室料のほか「管理費」や「施設運営費」など様々な名目で、無届施設時代には月7万1000円(居室料を含む)、無料低額宿泊所届出後は月9万2000円もの費用を徴収されてきた。
そのため、原告らの手元には2万円~4万円程度しか残らないことになり、生活の再建が妨げられてきた。生活保護受給者を入居させ、様々な名目で費用を徴収するという杉浦工業の手法は、「貧困層をターゲットにし、かつ貧困からの脱却に資することなく、貧困を固定化するビジネス」としての「貧困ビジネス」の典型例であった。
しかし、名古屋地方裁判所岡崎支部は、被告の管理者会議の記録から被告が貧困ビジネスと称して事業を行っていたことを認めながら、被告に不法に利益を得ようとする主観的意図はなかったとした。原告らと被告との間に締結された「貸借契約書」「施設利用契約書」について、成立時の問題点や内容の不合理性に踏み込むことなく契約としての拘束性を認めたものであり、貧困ビジネスの実態から目をそむけて被告の主張を鵜呑みにした不当な判決といわざるを得ない。
3 わが国における貧困の拡大に伴い、生活保護受給者が増加し続け、生活保護受給者の数は過去最高を更新し続けている。
これに対して、貧困をなくすという根本的な対応を取ることなく、生活保護基準の切り下げや、生活保護申請を困難にする生活保護法の改正案が審議され、また生活保護受給者に対する偏見に満ちたバッシングも行われるという現状があるもとで、貧困ビジネスによる被害救済に司法が背を向けたことは極めて重大である。
当弁護団は、名古屋地方裁判所岡崎支部の不当判決に対し厳しく抗議するとともに、貧困ビジネスの根絶のために、立法府及び行政の努力が求められていることを指摘するものである。
以上
首都圏追い出し屋対策会議が中心となり、下記の記者会見を開催いたします。
この件では、生活保護問題対策全国会議も緊急要請書に連名しています。
ぜひご注目ください。
*記者会見のお知らせ*
マンボー脱法ハウスへの仮処分の申立と千代田区等への緊急要請
近時、「貸事務所」「倉庫」などと謳って利用者を募集し、実際には住居として狭小な部屋をレンタルする「脱法ハウス」が、消防法違反を指摘されるなど社会問題化しています。脱法ハウス側は、自治体の建築指導部局に「居住施設ではない」と主張し、必要な安全措置を講じないケースもあると報道されています。また、今回申立の相手方となったマンボーについては、今月末日限りの退去を迫り、入居者を強引に追い出そうとしています。
この点について、太田国土交通大臣も11日の閣議後の記者会見で、実態調査を指示し、都道府県や政令市などに情報収集と報告を求めたことを明らかにしています。この実態調査により、居住者の安心や安全を確保するための施策を国としても講じることが求められます。
今月末で突然閉鎖の対象になったマンボーの神田に居住者4人が6月12日(水)に住居としての賃借権を被保全債権として、占有侵害禁止の仮処分を申立てました。
まや、マンボー神田には、千代田区の福祉事務所の勧めで入居した者がいることなどが判明しているため、私たちは千代田区に対し、区の責任において違法・不当な立ち退きをさせないこと、生活保護を利用している入居者に対しては、本人の希望に応じて、すみやかに転宅一時金を支給し、適切な居住環境のアパートへの転宅を進めることなどの要請を行う予定です。
そこで、表記の件の報告について、以下のとおり、記者会見を行なう予定です。
<記者会見日時>
2013年6月17日(月)13時~ 司法記者クラブ
千代田区霞が関1-1-4高等裁判所内 電話:03-3581-5411
なお、同日、午前11時より千代田区役所生活福祉課への申し入れをおこないます。こちらも取材をお願いします。
<記者会見内容(予定)>
①仮処分申立の報告
担当代理人による概要説明、当事者(入居者)の発言等
②千代田区等への緊急要請の報告
(お問い合せ先)
首都圏追い出し屋対策会議
弁護士 林 治(担当)
同 戸舘 圭之
〒151-0053
東京都渋谷区代々木1-42-4 代々木総合法律事務所
TEL03-3379-5211/FAX03-3379-2840
(千代田区に対する要請書)
2013年6月17日
千代田区長 石川雅己殿
千代田区福祉事務所所長殿
脱法ハウス立ち退き問題に関する緊急要請書
首都圏追い出し屋対策会議
ホームレス総合相談ネットワーク
首都圏生活保護支援法律家ネットワーク
生活保護問題対策全国会議
住まいの貧困に取り組むネットワーク
国民の住まいを守る全国連絡会
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
千代田区内で株式会社マンボーの運営する「シェアハウス」(いわゆる「脱法ハウス」)の入居者が6月30日までに退去を求められています。入居者の中には生活保護利用者も多数含まれており、「千代田区福祉事務所の職員に紹介され、契約時に職員も立ち会った」という証言もあり、区としての責任は免れません。
この問題に対して、緊急に以下の対応をおこなうよう要請します。
1.区が株式会社マンボーに入居者を紹介、あっせんした事実関係を調査確認すること。
2.区の責任において、同社に対して入居者への立ち退き行為をやめるよう通告すること。
3.生活保護を利用している入居者に対しては、本人の希望に応じて、すみやかに転宅一時金を支給し、適切な居住環境のアパートへの転宅を進めること。その際、他区・市への移管の希望がある場合は居住地域の制限を行わず、すみやかに移管を進めること。また、仮に本人がアパートへの転宅を希望しない場合も、住宅扶助費の特別基準を用いて、適切な居住環境の居所に移転できるように支援すること。
4.生活保護を利用していないが、生活保護の要件を満たす入居者に対しては、すみやかに生活保護の申請援助を行い、希望に応じてアパートへの転宅につなげること。
5.生活保護の要件を満たさない入居者に対しても、東京都などと協議し、適切な居住環境のアパート等に移転できるよう支援を行うこと。また、区として居住支援協議会を設立し、対応すること。
以上
(豊島区に対する要請書)
2013年6月17日
豊島区長 高野之夫殿
豊島区福祉事務所所長殿
脱法ハウス立ち退き問題に関する緊急要請書
首都圏追い出し屋対策会議
ホームレス総合相談ネットワーク
首都圏生活保護支援法律家ネットワーク
生活保護問題対策全国会議
住まいの貧困に取り組むネットワーク
国民の住まいを守る全国連絡会
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
豊島区区内で株式会社マンボーの運営する「シェアハウス」(いわゆる「脱法ハウス」)の入居者が6月30日までに退去を求められています。入居者の中には生活保護利用者も含まれていると見られます。この問題に対して、緊急に以下の対応をおこなうよう要請します。
1.豊島区福祉事務所など区の機関が株式会社マンボーとの間で入居者を紹介・あっせんするなどの接触があったのかどうかを調査確認すること。
2.区として株式会社マンボ―に対して入居者への立ち退き行為をやめるよう通告すること。
3.生活保護を利用している入居者に対しては、本人の希望に応じて、すみやかに転宅一時金を支給し、適切な居住環境のアパートへの転宅を進めること。その際、他区・市への移管の希望がある場合は居住地域の制限を行わず、すみやかに移管を進めること。また、仮に本人がアパートへの転宅を希望しない場合も、住宅扶助費の特別基準を用いて、適切な居住環境の居所に移転できるように支援すること。
4.生活保護を利用していないが、生活保護の要件を満たす入居者に対しては、すみやかに生活保護の申請援助を行い、希望に応じてアパートへの転宅につなげること。
5.生活保護の要件を満たさない入居者に対しても、東京都、豊島区居住支援協議会などと連携しながら、適切な居住環境のアパート等に移転できるよう支援を行うこと。
以上