リタイア後の生活資金や子供の大学進学資金など、将来必要になるお金を長期計画でつくるなら、投資信託の積み立て投資が適している。一定金額を毎月買い付けるだけなので、忙しいビジネスマンや投資入門者にも向く。投信なら、円安やインフレに対抗する株式投資や海外投資も手がけやすい。
「日本が将来インフレに転じ、日銀が目標とする年2%のインフレ率となった場合、100万円は30年たつと約55万円の価値に下がる計算。年0.5%と低く見積もっても86万円程度になってしまう」と、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏は説明する。
増税や社会保険料のアップ、年金給付開始年齢の引き上げなどの負担増も見込まれ、今後は「ためる」と同時に「殖やす」努力が欠かせなくなる。
積み立て投資は時間を味方にする方法であり、スタートは1年でも早いほうが有利だ。リタイア後に過不足ない生活を送るには「夫婦二人の場合、60歳で3000万円が目標」と岩城氏。例えば、現在30歳の人が60歳までにゼロから3000万円をためる場合、毎月3万7000円を積み立てて年利5%で運用すればいい計算だ。
市場平均並みの値動きのインデックス投信を用い、下の円グラフのような資産配分で投資すれば、過去データによる計算上では年5%程度の利回りが期待できる。インデックス投信は保有中のコストである信託報酬が安いのが利点だ(代表的なインデックス投信は次ページの表を参照)。
資産配分のうち日本株式はインフレに対抗し得るもので、外国の株式や債券は円安への備えになる。個々に値動きのある資産に分散投資すれば、全体のリスクを抑える効果が期待できる。
この資産配分に沿って毎月5万円積み立てると、26年目で3000万円に到達する計算。4万円なら29年目だ。期間が長いほど複利効果は大きくなり、毎月3万円でも30年で約2500万円に達する。
スタートが35歳の場合、60歳までに3000万円にするには毎月5万2000円が必要。これが40歳では7万4000円、45歳では11万3000円になる。銀行に眠らせている預金でもない限り、毎月10万円を超える額を積み立てるのは至難の業だろう。
積立額を変えずに資産増加ペースを速めるには、投資の資産配分を変えて期待利回りを高める手がある。年利7%で運用するなら、残りが20年の40歳スタートでも毎月6万円弱まで積立額は減る。それでも金額的に難しい場合は、目標額を2000万円や2500万円に減らして無理のない運用をするのが妥当な判断だ。
運用の期待利回りは、資産配分のなかで債券を減らして株式の比率を上げたり、新興国の債券や株式を多めに組み入れたりすることで高められる。債券の一部をREIT(不動産投資信託)にするのもいい方法だ。
ただし、期待利回りを上げるとリスクも高まるので、運用資産の増減の幅が大きくなる。株式相場が世界的に軟調な時期や、円高進行局面などでは、それまで積み上げた資産が大きく目減りする可能性もある。積立予定期間が短い場合は、リスクの取り過ぎが失敗につながるので注意がいる。
逆にリスクを抑えたいなら、債券を増やしたり、新興国を減らして日本や先進国の比率を上げたりすればいい。期待利回りは低くなるが、若い世代で長い時間をかけてじっくり投資したい人や、毎月の積立額は増やせるので、そのぶんリスクを低減したいという人であれば、考えられる選択だ。