参院選2013をバラエティと割り切る人の、6つの注目ポイント
1.タレント候補の主張と応援に来る人
タレント候補は、主張内容と、選挙運動の仕方が見物である。
今回の候補者は以下の皆さんである。
半ば恒例である「レスラー枠」は、維新からアントニオ猪木が出馬。
闘魂注入も各候補者に行っていくそうだ。支持者にもやるのだろうか?
「1票入れますから1発お願いします」とか…
実際の闘魂注入はこんな感じである。
(避難所で「闘魂注入」を受ける被災者の男性=福島県いわき市)
応援にはさっそく「アントキの猪木」と「アントニオ小猪木」がかけつけている。炊き出しのときのような揃い踏みが見られるかもしれない。タレント候補者の応援者はタレントである。
(左から、アントニオ小猪木、春一番(元祖 猪木芸人)、アントニオ猪木、アントキの猪木=東京・新宿中央公園 2013年1月のホームレスへの炊き出しにて)
2.泡沫候補と選挙運動(とくに政見放送)
東京では、泡沫候補のBIG3(ビッグスリー)と言われる、ドクター中松、マック赤坂、又吉イエスの全員が出馬する。
年齢からして、これら重鎮の豪華揃い踏みは最初で最後のものとなりそうだ。ぜひとも脳裏に焼きつけておきたい。
ドクター中松(中松義郎)
東大工学部卒。前回の2010年参院選では、幸福の科学の信者ではないが、幸福実現党の党特別代表として出馬。
2011年東京都知事選のドクター中松
占領憲法・占領典範の無効確認の都議会決議を求める集会にて西村眞悟と出席するドクター中松
マック赤坂(戸並 誠)
京大農学部卒。伊藤忠商事勤務を経て、レアアース等の非鉄金属の輸入販売会社「マックコーポレーション」代表取締役。財団法人スマイルセラピー協会会長。スマイル党総裁。「マック」は本名の誠(まこと)、「赤坂」は自身が好きな街の東京・赤坂に由来する。
年商50億円とも言われ、2010年には所得約2億3千万円を隠し所得税約7千万円を脱税したとして、東京国税局から所得税法違反で東京地検に告発される。
政見放送では、奇抜な服装で登場し、スマイルのポーズを撮ったり、机の上に立って踊ったりするパフォーマンスで有名である。
↑詳細画像はクリック。
また、泡沫候補を「本気の夢追い人」として描くドキュメンタリー映画『立候補』(2013年6月29日全国順次公開、藤岡利充監督)に出演し、ポスターも飾っている。
又吉イエス(又吉光雄)
中大商学部卒業。自称「唯一神又吉光雄・イエス・キリスト」。世界経済共同体党代表。天皇制廃止、共産主義否定、堕胎・性転換・同性愛・体外受精・代理出産・ミニスカート等の禁止を主張。著書に『再臨のキリスト、唯一神又吉イエスは日本・世界をどうするかどのようにするか』(2003年)などがある。
「小泉純一郎は腹を切って死ぬべきである」「又吉イエスが、小泉純一郎を、地獄の火の中に投げ込むものである」など、政権演説で過激な演説を繰り広げることで知られる。
秋葉原の街頭演説でも、ちょっとしたニュースに。(…って、東スポであるが)
ちなみに、関西や東北を中心に立候補し、映画『立候補』にも出演している羽柴誠三秀吉は、今回不出馬とのことである。「安定の羽柴秀吉」と言われ待望論が出ていただけに、残念である。
比例については、泡沫政党の地位を着実に固めつつある幸福実現党から、「国士」として知られるTOKMAが出馬。2012年都知事選の雪辱を誓う。
TOKMA(椙杜徳馬 すぎのもり・とくま)
青山学院大経済学部卒、幸福実現等党青年局長。2010年、国有化直後の尖閣諸島に泳いで上陸。無許可だったことで軽犯罪法違反で書類送検(のち起訴猶予)。この事件を機に政界進出を目指す。
サングラス姿がX JAPANのToshlにそっくりだと一部で話題になっている。Toshlはかつて、ホーム・オブ・ハートという宗教団体の顔であった。そして両方ともロックミュージシャン。
今回は大川隆法総裁(東大法卒)は出馬しないようである。
新党大地からは、鈴木宗男代表と同姓同名の「鈴木宗男」が、公民権停止中で出馬できない代表に代わって出馬。千葉県君津市の会社社長で、松山千春から強烈に出馬を説得されたという。
「知名度を生かした支持票を集める狙いがある」などと報道されているが、話題性があるというのは表向きの理由だろう。実際のところは、「本気で混同させ、投票させる狙いがある」、そして「代表の公民権停止を知らない有権者が、誤って代表の名前を書いても死票にならないようにする狙いがある」だろう。
こういった理由から、ネット上では「影武者」「ダミー」「死票受け皿マシーン」などの呼び名で区別されている。
また、代表が「鈴木さんとは(名前、ネクタイの色、)理念、政策、すべての面で一致している」と発言していることから、「傀儡」「ムネオ・クローン」「カーボンコピー」などの呼び名も広まりつつある。
まあ、外見から端的に、「頭が光ってない方」「髪がある方」と区別すればいいのであるが…。
かつて国民新党の亀井静香がペルー元大統領アルベルト・フジモリ(日本名・藤森謙也、現在収監中)を擁立したように、小政党は話題作りを行わないといけないところもあるのかもしれない。しかし「奇策を弄しやがって」「有権者を舐めてんのか」と叩かれることもありそうだ。
3.ブラック企業シンボルの当落(当選 → 日本企業総ブラック化 → 日本のブラック国家化?)
居酒屋チェーン「ワタミ」創設者・渡邉美樹会長が自民党「公認」で出馬(2010年都知事選では、民主党「推薦」だった)。
しかし、1カ月140時間超の時間外労働で社員が過労自殺し、労災認定されていた事件が表面化。労働環境が劣悪な「ブラック企業」のシンボル(首領、総帥、親玉)として有名に。2012年夏、「ブラック企業大賞2012」で「市民賞」受賞。渡邉氏は「ワタミは天地神妙(原文ママ)に誓ってブラック企業ではありません」と反論。社員の自殺についても会社側に安全配慮義務違反なしという姿勢を崩さず、遺族との直接の話し合いにも応じていない。
そのため、自民党に擁立への抗議が殺到。自民内部から擁立を取下げさせようとする動きもあったが、安倍首相自ら要請して出馬した経緯もあってか、そのまま出馬することになった。
しかし、「ブラック企業のシンボルの当選」 は、「日本企業の総ブラック化」へ向かわせるのではないかという懸念が浮かぶ。そしてゆくゆくは、ブラック化は企業だけでなく公務員にまで及び「日本のブラック国家化」に至るという恐怖だ。これがただの妄想で終わりますように。
なお、渡邉会長は肖像画や漫画にもなっているようだ。
ついでに、「渡邉会長」といえばもう一人いる。
どちらの渡邉会長も権力者。
4.8時ジャスト当選者
今回の参院選の予選・前哨戦とも言われた、2013年4月28日の参議院山口補選では、このような結果になった。
(江島潔元下関市長、開票時刻の午後8:00ジャストに当選確実)
今回この「8時ジャスト当選」が何人出るか楽しみである。
5.民主党は参院選後に解体
一方、民主党の凋落ぶり、嫌われぶりは凄まじい。ネガティブキャンペーンで言うのではない。選挙後にこの世に存在できなくなる可能性が現実味を帯びている。
ちなみに、ネット選挙解禁もあったので、試しに「民主党」で画像を検索してみたところ、政党ポスターの酷いコラージュばかり出てきた。
6.1票の較差4.77倍で違憲判決 → 選挙無効?
最後は、可能性は高くないが、裁判所によって今回の選挙がひっくり返らないかという点である。
都道府県選挙管理委員会は、選挙人名簿登録者(有権者)数を発表。議員1人当たりの有権者数は、北海道が最多で約115万人、鳥取が最少で約24万人。つまり、選挙区間の「1票の較差」は4.77倍。基本的に、較差が2倍以上で「憲法違反」と考えられている。
最高裁は昨年、2010年参院選の最大較差5.00倍を「違憲状態」と判断。与野党は抜本的是正策を協議したがまとまらず、神奈川、大阪の定数を2ずつ増やし、福島、岐阜を2ずつ減らす「4増4減」の微調整で決着。較差は僅かながら下がった。
しかし、すでに2つの弁護士グループが、選挙無効確認訴訟を提起する準備を進めている。しかも2012年衆院選でも同様に起こされた訴訟では、何と2つの高等裁判所で「選挙無効判決」が出てしまった。これまでは、選挙を全部やり直すと莫大な費用や労力がかかることを理由に、憲法違反を宣言するものの選挙無効にはしないという「事情判決」が出されてきた。しかし、このときは裁判所がもう我慢できず、ついに伝家の宝刀を抜いてしまったということだ。
これらは上告されて最高裁判所で審理中だが、今回の参院選の訴訟に影響することは間違いない。
しかも、裁判所が「4増4減」を評価するとは思えず、むしろ「国会の怠慢」として厳しく断罪しそうな感がある。果たしてどうなるか。
(2012年の衆院選で、憲法違反で初めて「選挙無効」判決を出した筏津(いかだつ)順子裁判長=広島高裁)
以上が、参院選2013をバラエティと割り切る人のための、6つの注目ポイントだ。もう一度最後にまとめておく。
1.タレント候補の主張と応援に来る人
2.泡沫候補と選挙運動(とくに政見放送) … 中松、マック、イエス、TOKMA、ダミー鈴木宗男
3.ブラック企業シンボルの当落 … 当選 → 日本企業総ブラック化 → 日本のブラック国家化?
4.8時ジャスト当選者
5.民主党は参院選後に解体
6.1票の較差4.77倍で違憲判決 → 選挙無効?