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AniFav スペシャルの一覧へ戻る 更新日:2013年06月20日 22時35分

総力特集! アニメ『ゆゆ式』(3)――シリーズ構成・高橋ナツコ インタビュー 「普通のアニメでは当たり前のことが『ゆゆ式』では当たり前じゃない」(後編)

ライター:
高瀬司(聞き手・構成)、前田久(聞き手)

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総力特集! アニメ『ゆゆ式』(3)――シリーズ構成・高橋ナツコ インタビュー 「普通のアニメでは当たり前のことが『ゆゆ式』では当たり前じゃない」(後編)

『ゆゆ式』特集の導入コラムはこちら

インタビュー前編はこちら
インタビュー中編はこちら

 

(中編からの続き)

■女子高生の今を切り取る

――シリーズのなかでも、第5話「唯と縁 とゆずこ」は四コマのパッチワークが最も広範囲に渡っていたエピソードだったと思います。原作ではスパイス程度に散りばめられていた、「唯と縁という幼なじみの2人組」という構図が感じ取れるエピソードをあえて一箇所にまとめあげることによって、ゆずこを独自に掘り下げていく。脚本も高橋さんご自身が手がけられた極めてアクロバティックな回だったと思うのですが

『ゆゆ式』幼い縁・唯高橋:第5話は最終話と並んで一番難しかった回ですね。ただシリーズの中盤で一度、ゆずこをしっかりと描いておきたいという想いは初めからありました。『ゆゆ式』では「今この瞬間が楽しい」っていう3人を描くことがテーマの一つなので、昔を振り返ってどうこうというのはやらないようにしてたんですよ。使ってるのは相川さんによる入学式の回想と、第8話の「色々あった、様な、気がする!」のときくらいですね。でも第5話だけは特別に、回想なども大きく入れることで3人の絆の根っこみたいなところが描けたらなと思ったんです。
 なのでもしこの構成で、ゆずこの疎外感が目立って世界観が暗くなってしまったら大失敗で、第5話の最後のような「ずっと一緒だったら不死身だね」っていう絆の方を感じ取ってもらえればうれしいです。

――今を描く『ゆゆ式』において、過去を掘り下げることで未来を予感させるという特別な回だったわけですね。描かれ方の面でも、特に回想シーンなどは他とは異なった手触りを残すものだったように思います。

高橋:そうですね。普通に観ていただく分には違和感なかったと思いますけど、あそこの回想シーンは実はシナリオのセオリーとしても少し不思議なやり方になってるんです。一般的に誰かの視点から入った回想はその人の視点で閉じていくものなんですね。そこで一区切りにするんです。
アニメ『ゆゆ式』縁とゆずこ でもあそこでは、唯の回想から入っていくのに、途中で縁の視点に変わって、最後にまた唯に戻って終わるんですよ。これは原作でもそうなってるんですけど、セオリーで言えば、唯の視点から切り替えるときは一旦現在に戻って、あらためて縁の回想が始まる、というのが生理的には気持ちいいはずなんです。でもそのパターンでやってみると、どうしても原作より説明っぽい回想シーンになってしまって……。やっぱり、あの3人は3人で一組みたいもので、あの回想も誰かの回想なんじゃなくて、3人にとっての回想なんですよね。
 だからあそこは、セオリーから外れてる分違和感が出ないよう余計に、映像的にもシナリオ的にも微妙なところにこだわって随分丁寧に紡いでいます。

――原作の、マンガやアニメづくりにおける一般的なセオリーに則っていないところを、セオリーで直すのではなく、セオリーから外れているけれども説得力がある形に整理をされているわけですね。

高橋:そうなんですよ。私ももう20年くらいこの仕事をしているので、原作をセオリーに乗せることはそんなに難しくなくて、むしろ普通にやってると自然とそう整理してしまうんですね。けれど『ゆゆ式』ではあえてセオリーではない方法を取ってまで、あの3人の特別な雰囲気はどうすれば一番よく描けるかってことをすごく探りました。

■大人な3人をめぐるオリジナルのラスト

アニメ『ゆゆ式』情報処理部――3人の独特な空気感を、あえて言葉にするとすればどういったものになるでしょうか。……まず特徴の一つには、3人それぞれがコミュニティのなかでの自分の役割に自覚的である点があげられるかとは思いますが。

高橋:初めにゆずこがネタ振りをして、唯がきつすぎないフォローをして……みたいな基本パターンはありますよね。そうやってそれぞれの立ち位置が決まってるから、3人が集まると自然と一つの会話ができあがっていくところがあるんだと思います。
 やっぱり3人で一つなところがあるんですよね。これまで様々な作品に関わらせていただきましたけど、普通は特に思い入れの強いキャラや、共感の度合いが強い子が必ず出てくるんですよ。でも『ゆゆ式』に関しては本当に3人とも同じくらい大好きで、誰って決められないんです。
 3人とも人間関係についてすごくよく考えてて、距離感をちゃんと測る子たちじゃないですか。その辺りも独特なところの一つなんだと思います。相手がこう言ったらどう思うかなと常に考えながら話してる、思いやりのあるいい子たち。ある意味すごく大人なんですよね。

――原作ではゆずこがボケて唯がツッコむという流れの後に、「縁が笑う」というこれまた他ではあまり見られない独特な描写も繰り返し出てきますが、こちらも積極的に取り入れられていましたね。

高橋:縁の笑いもすごくこだわりました。シナリオ上でも「あはは」なのか「あはははは」なのか「アハハハハハ!」なのかっていう、笑いの長さとか声の質まで全て細かく書き分けているんですよ。オーディションでも、監督や音響監督の明田川(仁)さんと一緒に、笑いの演技はかなり細かくチェックしました。

『ゆゆ式』縁の笑い――ただ縁が笑う描写というのは、原作では第3巻から急増するようになっていますが……。

高橋:それに関しても「第1話から3巻以降をベースにやった方がいいんじゃないか」という議論をしましたね。でも最終的には原作に倣ってやろうということに決めました。というのも、季節が巡るにつれて徐々に笑いが増えていった方が、高校生になりたての3人がまだ手探りで情報処理部をやっている雰囲気から、2年生になってお互いの関係がさらに深まったという感じが出せるかなと思ったんですよ。

――なるほど。では相川さんたちに関してはいかがでしょうか? 作品の核としてゆずこら3人の親密さが描かれていく他方で、相川さんたちのグループとの交わりは、シリーズを貫くもう一つの軸となっていますよね。

高橋:そうですね。ただ普通女の子同士の関係というと、誰かの取り合いやグループ間の敵対なんかがよく描かれるじゃないですか。でも『ゆゆ式』はみんながお互いを好きで、でもちゃんと人との距離感をわきまえてるような子たちなんですよね。だから相川さんたちに関しては、女の子的な敵対とも、男の子的な何か大きな事件があってグッと近付くようなものとも違った、同じクラスになんとなく気になるグループがいる、という雰囲気を大切にしました。

――第2話での相川さんの登場以降、グループ同士が徐々に接近していく様がかなり丁寧に積み重ねられていた点は印象的でした。そのため脚本・コンテを拝見するまでは、原作第3巻のラスト、6人が廊下で偶然に出会って長谷川の家に向かうあのシーンが、シリーズのクライマックスにくるのかなとも予想していたのですが。

『ゆゆ式』6人高橋:わかります。もちろん会議でもその案は出ましたし、6人が一緒になる第9話のラストは実際一つのクライマックスとしても描いています。なので監督からの提案もあって、次の第10話は小休止として時系列を気にせずに、これまでのテーマごとにまとめていた回には入れられなかった、短い脈絡のないお話を集めた番外編にしたんです。
 ただやっぱり『ゆゆ式』ってゆずこと唯と縁のお話なので、一番最後は6人でまとめるんじゃなくて、3人の話に戻したかったんですよ。6人に増えたそのなかで、3人がどんな風に過ごしていくのか……第11話、第12話は前後編としてそのあたりを描いて終わる構成にしています。

――最終話の後半では、完全なオリジナルが登場していますよね。まさに相川さんたち3人との絡みもありながら、3人の物語として収束していくという展開に。

高橋:ここは三上先生にご監修いただいて、マンガでは描かれていない6人の新しい顔が見えるようにしてあります。誰をどういう順番で見せていくかについても随分話し合いましたね。最後は3人の話として、このまま3人はずっと一緒でずっと仲が良いんだろうなと思わせる、完成した高2の夏で締めくくりです。原作ファンの方々も納得してくださるラストにできたのではないかと思います。
 『ゆゆ式』は、私も現場もプロデューサーも、すごく愛情を注いだ作品なので、最後のオリジナルまで楽しんで観てほしいですね。(了)

(2013年5月27日、赤坂・ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメントにて収録)

■高橋ナツコ プロフィール

脚本家。シリーズ構成として手がけた主なタイトルに『スパイラル〜推理の絆〜』『極上!!めちゃモテ委員長』『東京マグニチュード8.0』『もやしもん』『ぬらりひょんの孫』などがある。

©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部

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