プロローグ
ゴロ、ゴロロロ……
遠くから雷鳴が轟いてきた。
急がなきゃ、家にたどり着くまでにびしょ濡れになっちゃう!
クリーニングに出して戻ってきたばかりのリクルートスーツを濡らしたくない。
でも、いくら急がなきゃって言っても、家に向かうには心臓破りの坂を駆け登らなきゃいけないのはちょっとキツイ。
しかも履いてるのはローヒールパンプス。
走りにくいことこの上ない。
でも、就職活動に精を出している今、風邪なんか引いていられないもんね!
『あなた、本当に募集要項見たの? ちゃんと実務経験者って記載してあるでしょう?』
『うちは新卒は採らないんだよ。他をあたって』
『君、お父さんのお店で働いたらいいじゃないか。お父さんは有名人なんだしさ』
あーもう!
嫌な言葉が頭を駆け回っちゃってる!
本当にムカツクわ、あの面接官たち!
何が実務経験者よ!
私は新卒だけどさ、小さい頃からお父さんの料理見てきたんだし、学校でもかなり良い成績だったんだからねっ!
ムカツク、ムカツクわ~っ!!
『見つけた』
ん?
何を見つけたの?
―― ってか、面接官、こんな事言ったっけ?
違う、この声、上から聞こえる?
上って、空よね?
見上げると、見事に鉛色の雷雲。
今にも雷がどかんと落ちそうなカンジのヤバイ雲。
『私の声が聞こえたのなら、あなたで決まり』
ヤバイ……空から幻聴が聞こえるなんて、私疲れてるんだ!
早く帰って寝よ!
『いらっしゃい、私のもとへ』
はい?
雲が光る――?
ゲッ、これ、雷!?
逃げなきゃっ!!
バシィィィン!!!!
光が、私を直撃した――
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