全セ原監督決めた球宴2戦目夢プラン
全セの指揮を執る巨人・原辰徳監督(54)が1日、第2戦(神宮)でのオール新人リレーを明かした。巨人・菅野、阪神・藤浪、ヤクルトの小川と石山、DeNA・三嶋の5人で1試合をつなぐ。全パではロッテ・西野(新湊高出)、ソフトバンク・千賀(蒲郡高出)の育成からブレークした右腕が初出場する。
席巻
夢の球宴で黄金ルーキーリレーが実現する。原監督が菅野を20日のオールスター第2戦(神宮)に先発させることを明言。さらに今季のセを席巻している〝ルーキーズ〟がバトンをつなぐ夢プランを明かした。
遠征先の静岡市内で取材に応じた原監督は構想を披露した。「2戦目は智之が先発。2番手は小川、3番目は藤浪。3人で6、7イニングいってほしいけど、そうならなかった場合は三嶋を挟むかもしれない」。リーグトップ8勝の小川、同2位タイ7勝の菅野、高校出1年目ながらローテの座をつかんだ藤浪、リーグ奪三振4位と健闘の三嶋。さらに中継ぎで存在感を見せている石山にも登板機会がある見込み。1試合で一気に新人5投手がそろい踏みする異例の球宴となりそうだ。
気合
「今年は特に、若い力が高いレベルで力を出している」と指揮官。菅野も「自分が一番活躍するという強い気持ちを持っていきたい。同じルーキーの大谷くんを三振に取れたら一番良い」と気合十分。フレッシャーズぞろいの全セ投手陣が若さでパのスター軍団にぶつかっていく。
ビックリ小川「大谷勝負だ」
ヤクルト・小川が1年目からあこがれの舞台に立つ。「小さい頃からテレビで見てあこがれてきた夢舞台。監督から言われてびっくりした」。前回登板(6月29日)でセリーグ単独トップの8勝目を挙げ、ファン投票も広島・前田健に次ぐ2位。人気、実力とも文句なしの選出だ。
同期の石山とともに、ドラフト1、2位コンビそろっての出場。ヤクルト新人の球宴出場は、小川が生まれた1990年の古田敦也以来23年ぶり。投手では77年の梶間健一までさかのぼる。小川淳司監督(55)も「(後半戦に)疲れが出るかもしれないが、いつでも出られるとは限らないし、若い選手にはいい経験になる」と後押しする。
交流戦前にも対戦を希望した日本ハム・中田、大谷との再戦も心待ちに。「(大谷は)同じ新人で結果も出してるし、(2人とも)前回対戦の時に打たれているので、なんとかやり返したい。自分らしさを前面に押し出して、強気の投球で勝負したい」。愛知・成章高―創価大を経て一気に球界最高の舞台に上がる。
2013年7月2日 中日スポーツより抜粋
小川最下位ヤクルトで奮投8勝 大胆&細心!!リーグ単独トップ
巨人戦2勝2敗
ヤクルト2-1巨人
満員御礼の草薙球場で、ヤクルトの黄金ルーキーが強力打線を相手に7イニング1失点。粘りの投球でハーラー単独トップの8勝目をつかんだ。「自分の球を過信せず、一球一球丁寧に、一発を食らわないような投球を心掛けた」。試合後は、普段通り淡々と振り返った。
前回登板でプロ初完封。この日も5回まで無失点で切り抜けた。6回2死一塁、「完全な失投」という内角高めのチェンジアップをボウカーに捉えられ、あわや本塁打というフェンス直撃三塁打。同点に追い付かれたが、「打たれた後も気持ちを切らずに投げられた」。持ち前の冷静さで後続を断った。
子どものころは巨人ファンで、高橋由にあこがれていた。その巨人を相手に「大胆に行く所は行きながらも、場面場面で細心の注意を払い、メリハリをつけた」と2戦2勝。セ界トップの8勝目にも「まだまだシーズン中盤。優勝、日本一が目標なので、通過点と思って、目の前の1勝にこだわっていきたい」と、最下位からの巻き返しを誓っていた。
▽ヤクルト・小川監督「ライアン(小川)が粘り強く投げてくれた。(7回、小川に代打・田中浩を送った場面は)迷ったが同点である以上、点を取らないといけないので思い切って代えた。かけだったが、田中は内容のある打撃をしてくれた」
▽田中浩(7回1死三塁、決勝タイムリー)「(小川)ヤスヒロが強気な投球をしてくれたので、なんとしてもかえしたい気持ちでいっぱいだった。(内野の頭を越えたテキサス安打で)お立ち台は照れくさいような打球だったが、試合に勝てて良かった」
2013年6月30日 中日スポーツより抜粋
ライアン小川 プロ初勝利に続き2つ目の「新人一番乗り」
ほっとしました
ヤクルト3-0広島
114球目。最後の二飛がグラブに収まった時も、小川はにこりともしなかった。「ほっとしてました」とは言うが、喜怒哀楽は表に出さず、堂々のプロ初完投初完封。12球団の新人では完封一番乗りで、巨人・菅野と並ぶリーグトップの7勝目。小川監督は「きょうは小川とバレンティンに尽きる。2人がいい動きをしてくれて、明日に向かっていける」と、期待にこたえた孝行息子に目を細めた。
1回、先頭のルイスに中前打されて1死二塁のピンチを迎えたが、3、4番を連続空振り三振で切り抜けて波に乗った。大竹との投手戦になったが、4回にはバレンティンが3ランで白星をプレゼント。援護をもらったルーキーは以降もテンポよく打ち取り、自己最長タイの8回が終わった時点で球数は99。未知の9回も中軸3人を三者凡退で仕留めた。被安打は5。三塁を踏ませない快投だった。
2013年6月23日 中日スポーツより抜粋
ライアン小川 創価大→ヤクルト 「貧困に打ち克ったアイデア特訓と家族愛」
「泰弘が中学の時ね、鉄の棒を使って一緒にバッティング練習してたんですよ。ちょうど私が仕事で解体作業とかやってたもんだから、廃材の鉄棒にゴルフ用のグリップテープを巻いて、バットを自作したんです。私がゴルフボールを投げて、泰弘が鉄棒で打ち返す。すぐに芯で捉えるようになったんで、こりゃ危ないと思い、私は洗濯カゴをかぶって投げるようにしました(笑)」
そう懐かしそうに語るのは〝和製ライアン〟こと小川泰弘(22、ヤクルト)の父・吉弘さん(60)だ。
ノーラン・ライアンを参考にした、左足を高々と上げるフォームで注目を浴び、先発3試合で2勝0敗、防御率1.89と文句ナシの成績(4月23日時点)を挙げている新人王候補・小川。そんな彼のグローブに刺繍されている3文字をご存知だろうか。
親孝行――。
「ごっつぁん! って感じだね(笑)。周囲に支えてもらって今がある、っていう気持ちの持てる子なんだな」(吉弘さん)
ヤクルトにとっても小川家にとってもこの上ない孝行息子に育った泰弘は、5人兄弟の末っ子として愛知県田原市に生を受けた。祖父母、両親、5人の子供たちの9人家族。兄弟仲は良好だった。
「家が小さかったから自分だけの部屋はもらえなくて、全員分の机を並べた7畳間が私たち5人の部屋でした。姉たちがテレビを見て笑ってる脇で、ヤッくん(泰弘)とお兄ちゃんが勉強してる、みたいな感じで、いつも同じ部屋でにぎやかに過ごしてましたね」(三女の智子さん)
小さい頃からボールで遊ぶのが好きで、兄弟みんながキャッチボールの相手だった。本格的に野球を始めようと思ったのは小学3年生の時だが、大家族の小川家は決して裕福ではなかった。母の弘子さん(59)が当時をふり返る。
「ほら、野球は用具代が嵩むし、クラブチームに入れば会費もかかるでしょ。だから私は返事を渋っていたの。そしたらヤッくんが泣きながら『やらせてください』って頼み込んできて、9歳上の長女も『私がグローブを買ってあげるから、やらせてあげて』って後押しするんです」
こうして少年野球を始めた小川は中学に上がると、大工の父とともに前述の〝鉄棒〟特訓に励む。メキメキと技術を上げる一方、自ら考案したメニューによる体づくりも怠らなかった。
「兄弟みんなが使っているタンスにつないだチューブを引っ張ってインナーマッスルを鍛えたり、股割りをしたり、毎日何かしら体を動かしていました」(次女の陽子さん)
中学時代は軟式野球部に所属し、エースとしてチームを県大会出場に導く。高校は地元の県立成章高校に進学し、2年時にエースに収まると、秋季県大会でベスト4進出。3年の春には21世紀枠でセンバツ甲子園に出場した。
「とにかく野球部員は体を作らにゃいかんと思って、昼食用のおにぎりは毎日9つ持たせていました。当時は9人家族だったので食費も大変でしたけど、おばあちゃんが畑で野菜を作っていてくれたので助かりましたねぇ」(弘子さん)
同校に創部103年目の甲子園初白星を完投勝利でもたらした小川は、スポーツ推薦で創価大に進学。ただ、大学の授業料は小川家にとって相当な負担だった。
「差別しちゃいけないけれど、男の子二人(長男と泰弘)は大学まで行かせたかった。そのために娘たちには進学を諦めてもらったんです」(弘子さん)
後年、泰弘は「姉たちが我慢してくれたおかげで今の自分がある」と、ことあるごとに話していたという。感謝の心は彼の半生を語るうえで欠かせないキーワードだ。弘子さんが続ける。
「大学で池田大作先生の教えに触れたことも大きいと思います。試合でヤッくんが投げている間、先生はご高齢にもかかわらず、神宮球場の周りを車で走りながらお祈りしてくださったんです」
小川の修行の道に終わりはない――。
2013年5月10日 FRIDAYより抜粋
小川 愛知凱旋白星
7イニング1失点で2勝目
ルーキー一番星を挙げた男が、2勝目にも一番乗りだ。ヤクルト・小川が生まれ故郷の愛知県で初登板し、5回までノーヒットノーランの快投を魅せた。プロ初安打に初失策もありで、7イニングを1安打、1失点に抑えきった。
地元で初のヒーローインタビューでも「お世話になった方がたくさん来てくれて、いい投球ができて良かった」とマウンド上と変わらぬポーカーフェース。登板中も「応援の気持ちだけ受け止めて、あえて客席を見ないようにした」というが、インタビュー後にスタンドから手を振る知人たちの顔を見たとき、初めて頬がゆるんだ。
どんな局面にも動じない、新人らしからぬ冷静さが、171センチの小柄な体を大きく見せる。4回に2四球で初めてピンチを背負ったが、クラークを空振り三振で切り抜けた。逆に、3点先制してもらった時でも「うれしいけど、その後打たれたら何にもならない。そんなに喜ばずに投げようと思った」と浮かれない。荒木投手コーチは「気持ちが前向きでどんどん攻めていけるのが小川のいいところ」と精神面の強さを絶賛した。
マウンドでの冷静さは、スタンドから見守った恩師も太鼓判を押す。成章高の糟谷(かすや)寛文前監督(62)は「高校生らしいヤンチャさとは無縁で、担任からも頼りにされていた。『はい』しか言わない子が多い中で、小川は1年春から『今は肘の状態が思わしくないので、投球はやめさせてください』などと自分の意見をしっかり言ってきた」と明かす。
6回に自身の失策が失点に結び付き、自責点はゼロ。初勝利を挙げた3日の広島戦でも捕手の失策が絡んでおり、開幕から計13イニング2/3、自責点ゼロが続いている。「チームが勝つのが1番。もっともっと頼りになるような投球をしたい」と、早くも頭を切り替え、次を見据えた。(竹村和佳子)
▽ヤクルト・畠山(6回2死満塁、走者一掃の先制二塁打)
「打ったのはチェンジアップ。小川に先制点をなんとしても取ってあげたかった。みんなでつないで回ってきたチャンス。集中して打席に入って行けた。ボールに逆らわず打ち返すことができた」
有言実行でプロに 高校の恩師 糟谷さん
小川の恩師、愛知・成章高の前監督・糟谷(かすや)寛文さん(62)は、約20人の同校OBらと晴れ姿を見守った。「東京の大学に行く前に『僕は必ずプロに行きます』と言っていたが、言葉どおり実現させたのがすごい。このナゴヤドームでこんな姿を見られるなんて」と感激した。
小川が「第2の父」と慕うのが、小学時代の少年野球チーム・赤羽根クラブで当時会長兼コーチの鈴木秀和さん(55)。「小さいころから落ち着いていた」。後援会長を買って出て、手作りのプラカードを振って応援した。
小学時代バッテリーを組んでいた中村真崇さん(23)は、5回まで無安打無得点ペースだった投球に「昔からほとんどヒットを打たれたことがないから、そんなに意識してないんじゃないかな」と、さも当たり前と言った表情だった。
2013年4月11日 中日スポーツ新聞より抜粋
小川 新人1勝一番乗り
ヤクルト4連勝
ヤクルト6-2広島
ヤクルトが4連勝。プロ初登板の小川が七回途中を2失点でまとめ、新人では両リーグ通じて一番乗りで初勝利を挙げた。二回に宮本の適時打や失策に乗じて3点を先取した打線は五、七回に加点。広島は七回の2得点がやっとだった。
「和製ライアン」母の誕生日飾る
藤浪(阪神)や菅野(巨人)らが大型新人として注目を浴びる中、ルーキーとして一番乗りでプロ初勝利を挙げたのはヤクルトの小川だった。七回途中を2失点(自責点0)。「うれしい。でもシーズンは長いので一喜一憂せずに次の登板に準備したい」と喜んだ。
一回。先頭打者にはストレートの四球。プロ初登板に「緊張した。独特の雰囲気があった」と思い返したが、何とか落ち着きを取り戻すと、持ち前の切れのある速球を軸に後続を断った。三塁を守る宮本の「うまく投げようとしないで、どんどんいけ」という激励も効いた。六回まで危なげなくゼロを並べ、七回の失点は失策絡みだった。
愛知・成章高では21世紀枠で選抜高校野球に出場。米大リーグの名投手、ノーラン・ライアンを参考にした、脚を高々とあげる独特のフォームで、創価大では通算36勝(3敗)を挙げた。キャンプではリリーフ陣入りが検討されたが、オープン戦で好結果を重ねて見事に先発枠を勝ち取った。
ヒーローインタビューでウイニングボールをどうするかと聞かれ、この日が母親の誕生日だと明らかにした右腕は「プレゼントしたい」と満面の笑みを見せた。
【試合結果】
ヤクルト | 0 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | | | 6 |
広島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | | | 2 |
小川 泰弘さん(赤羽根町出身)・埼玉県戸田市在住
プロ野球:東京ヤクルトスワローズ/投手
◎赤羽根小学校・赤羽根中学校を卒業。小学校3年から野球を始め、6年の夏には東海大会に出場し準優勝投手に。中学校時代は軟式野球部で愛知県大会4強。成章高校3年の春に甲子園出場。1回戦で駒大岩見沢高校に完投勝利した。創価大学(東京都)に進学後は、2年の春からエースとして活躍。昨年のプロ野球ドラフト会議で、東京ヤクルトスワローズから2位指名を受け入団。プロ1年目からの活躍が期待される。
【大学時代の主な成績】
・通算36勝3敗(35完投23完封)、防御率0.60
・MVP、ベストナインを5回受賞
最優秀投手賞、最多勝、最優秀防御率を4回受賞
※東京新大学野球リーグ戦(春・秋)のタイトル
今まで支えてくれた皆さんに感謝
―これまでの野球人生を振り返って
【小川さん】 プロ野球選手になることは、保育園の時からの目標でした。何がそう思わせたのかは覚えていませんが、「行きたい」というよりは、自分は「行くんだ」と思っていました。
小学校3年生から地元の少年野球チームに入りました。練習はとても厳しかったですが、今思えば、そのかいもあって、中学・高校、さらには大学と、ここまで頑張れたと思っています。
振り返ってみると、成章高校3年の春に出場した甲子園での1勝。大学時代の全国大学野球選手権大会への出場など、自分なりに頑張ってきたこれまでの努力を、関係者の皆さんに評価してもらえたことが自信につながり、それが力となって、目標であったプロ野球選手という夢を手にすることができたのだと思っています。
そして何よりも、家族はもちろんのこと、地元の皆さんの温かいご声援、指導者や諸先輩方からの激励など、本当に多くの方のおかげだと、今はただ感謝の気持ちでいっぱいです。
「絶対に勝つ」強気でマウンドへ
―自分の持ち味は何だと思いますか?
【小川さん】 周りからは「常に冷静」と思われていますが、自分としては、何事に対しても「強気」なところだと思います。強気でいるのは、一つは自分に言い聞かせるという意味もありますが、ある先生から教えていただいた“必ず勝つと決めた方が勝つ”の哲学からです。マウンドに上がれば「絶対に勝つ」という気持ちしかありません。これまで、迷いや不安を吹き飛ばすだけの練習をしてきたので、これからも自信を持ってマウンドに上がります。そして皆さんに、強気なピッチングを見せたいと思います。
これからの目標は?
【小川さん】 まずは家族に恩返しをしたいです。自分は5人兄弟の末っ子なのですが、姉たちはやりたいことがあっても我慢していたと思います。そして、特に物心両面で支えてくれた両親には、これからは少しでもいい暮らしをさせてあげたいです。そのためには、一日でも早く、そして一日でも長く一軍のマウンドで活躍する姿を見せることが今の目標です。
―田原市の皆さんへメッセージを
【小川さん】 特に子どもたちには、スポーツや勉強など、何事もやる前からあきらめない気持ちを常に持ってほしいと思います。消極的な成功よりも、積極的な失敗からその原因を見つけ、反省しても決して後悔をしないでほしいと思います。
市民の皆さんには、これまでもいろいろなところで応援や激励をいただいてきました。これからは、自分が活躍することで、皆さんに勇気や感動を与えられる選手になれるよう頑張りますので、応援をよろしくお願いします。
広報たはら 平成25年3月15日号より抜粋
強気の「ライアン」実戦堂々
ヤクルトのドラフト2位新人の小川(創価大)が18日、練習試合の韓国・起亜戦で実戦デビューした。左足を肩の高さまで上げる独特のフォームから繰り出す直球は140キロ台中盤をマーク。制球も抜群で2回を1安打無失点に抑えた。
元大リーガーの4番・崔熙渉には「ぶっつぶしてやろうという気持ちでいった」と直球で真っ向勝負。左前安打されたが、小川監督から「気持ちが強い。中継ぎでいいところを任せられるかも」と絶賛された。
大学3年春のリーグ戦で打ちこまれたのを機に、通算5714奪三振の大リーグ記録を持つノーラン・ライアンをまねた。「たくさん試合で投げさせてもらい、リーグ優勝に貢献すること」が1年目の目標だ。
=浦添
朝日新聞より抜粋
自己最速148キロデビュー
韓国・起亜と練習試合
ヤクルトは18日、沖縄・浦添市民球場で、韓国・起亜との練習試合をし、ドラフト2位・小川康弘投手(22)が実戦デビューした。往年のメジャーリーガー、ノーラン・ライアン(現レンジャーズ球団社長)似の変則フォームから繰り出した直球は自己最速148キロをマーク。2イニングを1安打、2奪三振、無四球でぴしゃりと抑える好投をみせた。
練習試合(浦添)
起亜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | | | 2 |
ヤクルト | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | | | 3 |
2イニング2K無四球ピシャリ
ツバメのライアンが堂々のデビューだ。小川は左足を胸につくほど高く上げ、大きな尻を打者の方へ突き出すように踏み出して腕を振り下ろす。独特な投げ方だが、制球良く変化球も多彩。この日は7種の持ち球すべてを使って起亜打線をテンポよく打ち取った。
「緊張したけど、しっかり自分の投球をしようと心掛けた。ストライク先行で行けたのが良かった」と、新人とは思えない落ち着きっぷりだった。
2イニング目の先頭打者・崔希渉は、2002年から4年間カブスなどで活躍した元メジャーリーガー。小川は知らなかったというが、196センチ、99キロの巨漢の4番に「ぶっつぶしてやろう、くらいの気持ちで向かっていった」と、171センチの小柄な体に闘志をみなぎらせて真っ向勝負。3球目にチェンジアップを挟んだ以外はすべて直球。10球目は148キロで自己最速も更新した。11球目を左中間前テキサス安打にされ悔しがったが、新田捕手は「フルカウントからどこまでストライクを取れるか、試しに全部真ん中直球を要求した。結局四球を出さないのはたいしたもの」と、その度胸と制球力に舌を巻いた。
監督と同じ名字で呼び捨てにしにくいため、選手間で「ライアン」のあだ名も定着。愛知県の渥美半島出身で、自宅近くの赤羽根海岸の砂浜を走って鍛えた太もも周りは、競輪選手並みの65センチ。楽しみな新人が現れた。
(竹村和佳子)
◆ドラ福谷とは高校時代からの知り合い
小川は愛知・成章高時代に、中日のドラフト1位・福谷と愛知県選抜チームで一緒になり、ともに米国遠征に行っている。福谷が連絡を欲しがっていると、人づてに福谷の携帯番号を聞き、キャンプ中にかけてみたら「出てくれなかったし、かけなおしてもくれなかった」と苦笑い。「グラウンドで会うのを楽しみにしている」と、プロとしての再開・対戦を楽しみにしていた。
ドラフト2位 小川「ライアンと呼んで」
ヤクルトのドラフト2位・小川泰弘投手(22)=創価大=が新人合同自主トレ初日の9日、「和製ライアン」の異名にちなみ、同姓の小川監督に「『ライアン』と呼んでいただければうれしいです」と売り込んだ。
視察した指揮官は「同じ名字で呼びづらいね。なんて呼ぼうかな」と思案していたのを伝え聞き、早速アピールした。
大学3年時にノーラン・ライアンをマネた投球フォームにして以降、仲間からの呼び名も「ライアン」が定着。プロでも自らの代名詞としたい。「ノーラン・ライアンさんに失礼じゃなければ呼んでほしいです」
その意気込みに、小川監督は「覚えておきます」と頼もしそうに笑った。かねて、その個性的なフォームを評価。「早く投げるのを見てみたい」と期待する。2月1日のブルペンでは、自然と「ライアン」と呼んでしまうかもしれない。
(福岡香奈)
中日スポーツ新聞より抜粋
ドラフト2位 小川武者震い
ヤクルトは7日、昨秋ドラフトで獲得した7選手が、埼玉県戸田市のスワローズ戸田寮にそろって入寮。ドラフト2位で即戦力の期待がかかる右腕・小川泰弘投手(22)=創価大=は、初日の出に「ヤクルトに必要な存在になって、絶対優勝するぞ!」と誓ったことを明かした。
小川の実家は、愛知県渥美半島にある田原市。家から徒歩5分ほどにある赤羽根海岸は、初日の出の名所であると同時に、小川が子どものころから走り込んできたトレーニング場所でもある。砂浜を走ることで鍛えた強靭(きょうじん)な下半身が、往年のメジャーリーガー、ノーラン・ライアンをまねた豪快な投球フォームを支えている。年末年始も時間があれば4、5キロ砂浜を走ってプロ入りに備えてきた。
高校(成章高)時代、中日のドラフト1位・福谷とは愛知県選抜で一緒にプレーした仲。2人のプロ入りで計画された同期会は日程が合わず先送りになったが、プロで対戦することになれば、また交流も復活するだろう。「いよいよ戦いが始まるな、という緊張感がある」と、武者震いしてプロの第一歩を踏み出した。
(竹村和佳子)
中日スポーツ新聞より抜粋
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします!
《パソコンランド 成章野球部HP作成チーム》
小川君と大西君が並んでピッチング練習をしている姿を撮影できました。
小川泰弘君 東京ヤクルトスワローズ入団!
東京ヤクルトスワローズに入団が決まった小川君の激励会を成章野球部OB会の主催で12月15日(土)に崋山会館で盛大に行われた。激励会には成章在学中の恩師や甲子園出場時のチームメート、父母会の方々、野球部の顧問の先生など130名を超える人々に祝福された。
ヤクルト・ドラフト2位
小川投手 激励会で抱負
プロ野球東京ヤクルトスワローズにドラフト二位での入団が決まった田原市出身の創価大四年小川泰弘投手(二二)の激励会が十五日、市内であった。
母校の成章高校野球部OB会が主催。背番号「29」のユニホーム姿で登場した小川投手は「入団に満足せず日々精進し、一日でも早く一軍マウンドに上がりたい。球のキレを磨き、ボール一つ分の出し入れができる制球を身に付けたい」と抱負を述べた。
小川投手は成章高校のエースとして二〇〇八年春の甲子園に二十一世紀枠で出場。一七一センチ、七九キロと小柄ながら大学では最速147キロの速球を武器に通算36勝3敗、防御率0.59と活躍した。
(那須政治)
中日新聞より抜粋
ヤクルト入団の小川投手が決意 田原の成章高野球部OB会で
プロ野球・東京ヤクルトスワローズから2巡目指名を受け、入団が決まった成章高校出身の小川泰弘投手(22)=創価大学4年=が15日、田原市崋山会館であった同校野球部OB会(真木正五会長)主宰の激励会に出席し、憧れのプロ野球選手としての第一歩を踏み出した実感を語った。
入団が決まってから初めての帰省。球団から支給されたばかりの背番号29、真新しいユニフォームを着用して登場した。
「プロ野球に入るのは子どもの頃からの夢だった」という小川選手は「見る人に感動を与えられる投手になりたい。チームは来季、本気で優勝を狙っているので、一日でも早く1軍のマウンドに上がって優勝に貢献したい」と力強く語った。
球団からは、「まずプロの水に慣れるよう助言された」という。「一日も早く慣れたい。慣れれば(早い段階で)中継ぎでも使ってもらえると思う」と自信をのぞかせた。
今後の課題は「長いシーズンを通して投げられる体づくり」と、プロとしての自覚をのぞかせた。
激励会には同部OBや学校関係者ら約120人が出席。真木会長は「厳しい競争が待ちかまえているが、一日も早く1軍のマウンドで、和製ライアンの雄姿をみせてほしい」と激励した。
高校時代の恩師・糟谷寛文前監督(61)は「会うたびにたくましくなっている。初登板がいつになるか、今後の楽しみが増えた。孝行息子のようだ」と喜んだ。
正月明けの1月7日に埼玉県戸田市の球団寮に入り、9日から戸田球場で練習を開始する。
(加藤広宣)
東愛知新聞より抜粋
平成24年12月1日
関係者各位
実行委員長 真木正五(OB会長)
小川泰弘君・激励会の開催について(ご案内)
師走の候、皆様方におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さてこの度、本校卒業生の小川泰弘君が、今年度のドラフト会議で東京ヤクルトスワローズから指名を受け、プロ野球選手の仲間入りをすることになりました。つきましては、下記のとおり小川泰弘君・激励会を開催いたします。公私ともご多用の折とは存じますが、ぜひともご出席くださいますようご案内方々お願い申し上げます。
記
1.日 時 平成24年12月15日(土) 開会17時00分(受付16時30分~)
2.会 場 崋山会館
〒441-3421 田原市田原巴江12-1 TEL:0531(22)1700
3.会 費 OB会 4,000円
その他 3,000円
※当日、会場にて徴収いたします。
なお、出席される方は準備の都合上、12月7日(金)までに、下記連絡先までお知らせくださいますようお願い申し上げます。
《連絡先》
愛知県立成章高等学校
教諭 河合 邦宗
学校 0531(22)0141
【ヤクルト】ドラフト2位で指名した創価大の小川泰弘投手(22)=171センチ、79キロ、右投げ右打ち=の入団が決まった。契約金7000万円、年俸1200万円で合意した。
(金額は推定)
中日新聞より抜粋
成章野球部のホームページ「夢をつかむまで」は甲子園出場という目標と別に、人生の目標を見つけてほしい、との思いをこめて作っています。
2008年3月22日に選抜野球大会に出場して成章野球部創部以来の夢であった1勝をあげたチームの大黒柱だった小川君。その年の卒部式で「プロになります」と宣言したことを4年後の2012年ドラフト会議で東京ヤクルトスワローズに2位指名され、見事に夢をつかみました。大学4年間、目標を見失わずにここまで成長した精神力には「すごい」としか言いようがありません。そんな小川君を応援したくてこのホームページを去年企画して更新してきました。また、次の目標を見つけて「夢をつかんでくれる」と信じています。その夢を、私たちも一緒に見たいと思っています。
頑張れ小川君!いつもみんなで応援しています!
鈴木 正幸
父らが活躍に期待
東三河からは田原市出身の創価大4年小川泰弘投手(22)が、東京ヤクルトスワローズから2位指名され、両親や恩師が今後の活躍に期待した。
身長170cm、体重79kgと小柄ながら最速147km本格派右腕で、成章高校(田原市)のエースとして2008年選抜大会の21世紀枠で甲子園に出場。大学のリーグ戦通算成績は36勝3敗、防御率0.59を誇る。
自宅近くの飲食店でドラフト会議を見守った父吉弘さん(60)は「プロ野球のスタートラインに立てたことが素晴らしい。ヤクルトには小柄でも活躍する石川雅規投手がいるが、何かの縁なので頑張ってほしい」と喜んだ。
成章高野球部の監督だった糟谷寛文さん(61)も「卒業時の宣言を実現したのがうれしい。故障せず、早く一軍で投げる姿を見たい」とエールを送った。
(那須政治)
中日新聞より抜粋
大学リーグ戦でMVP4回、最優秀投手賞3回
プロ野球新人選手選択(ドラフト)会議が25日、東京都内のホテルで開かれ、成章高出身で創価大4年の小川泰弘投手(22)は東京ヤクルトスワローズから2巡目指名を受けた。全体として18番目の高い順位。指名前「どの球団でも」としており、入団交渉を順調に進むとみられる。
(矢所香)
高校3年春 センバツで完投勝利
指名後、小川投手の実家にヤクルト球団から電話が入った。「後日、両親へあいさつに伺いたい」の内容だったという。
成章高の非常勤講師で、小川投手が高校時代に野球部監督だった糟谷寛文さん(61)は、「2位という高い評価は、小川が努力を重ねた結果だ」とねぎらい、「プロでは派手さはなくてもきちんと押さえられる投手として、息の長い選手になってほしい」と期待を寄せた。
小川投手は同市赤羽根中の出身。成章高では抜群の制球力とピンチにも動じない冷静な投球で、3年春にはチームをセンバツ甲子園に導き、1回戦の駒大岩見沢に完投勝ちした。
創価大では、1年秋からリーグ戦に出場し、通算36勝を上げ、MVPに4回、最優秀投手賞に3回選ばれ、今春リーグの東京学芸大戦1回戦でノーヒットノーランも達成した。
なお、豊橋中央高出身の星山広宣投手(24)=シティライト岡山=は育生枠も含めて指名されなかった。
喜びに沸く父母ら 「これからが本当のスタート」
田原市赤羽根町の飲食店で、父吉弘さん(60)と母弘子さん(58)をはじめ、地元少年野球クラブOBの父母ら約30人が集まり指名を待った。
インターネット速報で東京ヤクルトの2位指名がわかった瞬間、店内は喜びの歓声に沸いた。
吉弘さんは「夢がかなってプロの土俵に上がることができる。これからが本当のスタート」と喜びをかみ締めた。
続けて「ヤクルトには小柄でも大成した石川雅規投手がいる。本人も第二の石川投手を目指してほしい」と話した。
弘子さんは「本人は、できれば関東地区の球団をと希望していました。それにしても2位という高い評価をいただけるとは」と驚きを隠さなかった。
赤羽根中学校野球部で3年間指導した長神塁教諭(38)は、「当時から吸収力と実行力が高く、アドバイスされればすぐに考えて実践できた。ピンチを迎えても、逆にチームメートを励ます心の強さもあった」と振り返った。
(加藤広宣)
東愛知新聞より抜粋
田原出身創価大 小川泰弘投手
プロ野球の新人選手選択会議(=ドラフト会議)は25日、グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)で開かれた。東京ヤクルトは2位で、田原市赤羽根町出身の小川泰弘投手(創価大4年)を指名した。
小川投手は、同市赤羽根中で軟式野球部に所属。卒業後は愛知・成章高へ進み、3年春の甲子園(センバツ)にエースとして「21世紀枠」で出場し、駒大岩見沢(北海道)を破って1勝した。進学した創価大硬式野球部では、東京新大学リーグで通算成績36勝3敗。防御率0.6の成績を収めている。身長171センチ、体重79キロ。右投げ右打ちの22歳。
11年春の同リーグで優勝を逃したことをきっかけに、米メジャー5714奪三振記録のノーラン・ライアンの足を高く上げる投球フォームに改造し、急成長。“和製ノーラン・ライアン”と注目を浴びた。
今年春には、同リーグ史上8人目のノーヒットノーランを達成。最速147キロの直球とカットボール、スライダー、フォークなど多彩な変化球を武器に持つ。
(斉藤理)
東日新聞より抜粋
やっくんがプロに―。プロ野球ドラフト会議で東京ヤクルトに2位指名を受けた小川泰弘投手の地元、田原市赤羽根町の和食店には、両親や少年野球関係者約30人が集まり、テレビ中継などで吉報を待った。午後6時10分、2位指名の一報が入った瞬間、会場は歓喜に包まれた。
ヤクルトが小川投手2位指名
父親の小川吉弘さん(60)は「プロ野球のスタートラインに立てた。今からだ」と話し、母親の弘子さん(58)は「本人からは『住み慣れた関東エリアの球団がいい』と聞いていたので、希望通り」と喜んだ。
小川投手が在籍した赤羽根少年軟式野球クラブ(現・赤羽根スポーツ少年団軟式野球部、鈴木秀和会長)は同日、「小川泰弘後援会」の設立準備を始めることを明らかにした。
■恩師「ナゴヤドームで見たい」
小川投手を指導した成章高校野球部元監督、糟谷寛文さん(61)は「ヤクルトならナゴヤドームでみられる。けがに気をつけて、早く1軍のマウンドで投げる姿を見たい」と祝った。
■田原市長も祝福
鈴木克幸田原市長は「小川君が、成章高校野球部のエースとしてセンバツに出場した時は、甲子園まで応援に行ったが、その勝利の時と同じくらい興奮している。一日も早く1軍でプレーする姿を楽しみにしている」とのコメントを出した。
(斉藤理)
東日新聞より抜粋
秋季リーグで自責点0を続けていたが10月20日(土)の東京国際大学戦で2失点!
しかし、チームは9回サヨナラで勝利、小川君は6勝目を挙げる。小川君の連勝記録も25連勝(連盟記録)となる。後は25日のドラフトを待つだけ!
「負けない投手」への変貌
投球フォームを参考にし、剛球が持ち味とはいえ、“和製ノーラン・ライアン”などと例えていいものなのだろうか。小川泰弘は苦笑する。
「話題性としてはあるんでしょうけど、偉大な投手ですから。比較するとなれば、恐れ多いですよ」
だが、それが大きな成長をもたらしたのは確かだ。昨春、エースとしてリーグ7連覇を逃した小川はフォーム改造に着手した。注目したのは伝説の剛腕。足を高く上げれば位置エネルギーが増し、力強い体重移動ができるのではないか。そう考えた。
「170㌢と体が大きいわけでもないので、フルに使っていかなげればならないとは思っていたんです。夏の間に取り組んで、強い球が投げられるようになったと思います。リリース位置も高くなって、打ちにくくなったんじゃないでしょうか」
もともと成章高時代から愛知県選抜に選出、3年春のセンバツでも好投し、潜在能力の高さは見せていた。大学では1年秋の明治神宮大会関東予選で東海大・菅野智之に投げ勝って注目を浴び、本大会ではトルネードに近い投法から最速147㌔を計測。2年春には主戦として台頭している。だが、調子の波があった。上のレベルを狙うには、常に勝てる投手にならなければならなかった。
模索を経て独特なフォームに辿り着いた小川は、進化を遂げた。昨秋は8勝、リーグ新の防御率0.12という驚異的な数字を残し、王座も奪還。「コースが少し甘くても打者を押し込めるようになった」と手応えを得た。そして今春は、リーグ史上8人目となる無安打無得点を記録。通算30勝も達成し、8強入りした大学選手権では2試合で2失点と好投を見せた。さらに1年秋から登板試合数が3、5、6、6ときて昨秋に10試合72回1/3、今春に8試合68回2/3を投げた事実が、信頼度の高さを証明している。ある球団のスカウトは、小川をこう評する。
「相手が誰でも手を抜かずに攻める姿勢がいい。それで投げ切るスタミナもある。意識の高さがうかがえるし、いい球を投げているので楽しみ」
目標のプロ入りもいよいよ現実味を帯びてきた。そうなるとまた一つ、課題を乗り越えなければならない。実は、小川にも自覚はある。
「セットポジションですね。特に普段から軸足に力をためようと意識する分、クイックが遅くなりがち。だから、いかにすばやく軸足に体重をしっかり乗せるか。それと変化球をコーナーに投げ分け、直球もしっかり低めに投げること。打者のレベルが上がるほど失投を逃してくれないので、球の力に任せず、ここぞという場面での制球力にこだわりたい」
本家の持ち味は球速や奪三振だが、「和製~」と呼ぶ周りの声にも惑わされない。そんな芯の強さを持ち、小川は勝利に向かって投げ続ける。
取材・文=中里浩章 写真=高原由佳
週刊ベースボール別冊秋嵐号2012 ドラフト候補名鑑より抜粋
ドラフト上位指名に期待
プロ注目の成章高出身・小川投手
今秋に行われるプロ野球のドラフトで、成章高校出身の小川泰弘選手(創価大4)が上位指名候補にあがっている。「もっと球速を」と大学で左足を高く上げる投球フォームを変え、いまや「大学球界のノーラン・ライアン」と呼ばれるまでに成長した。(矢所香)
東京新大学1部リーグ戦で驚異的成績
今春、東京新大学1部のリーグ戦で10試合を投げ8勝0敗、防御率は0.12と驚異的な数字をたたき出した。
「東京新大学の顔」。これまでMVPに4度も選ばれ、最多勝利と最優秀防御率に3度輝いている。
高校時代の小川投手は「まとまった投手」だった。外角低めの直球とスライダーを決め球に、ときに内角を厳しく突いて打者に踏み込ませなかった。2年生の秋にはチーム県ベスト4に導き、翌春のセンバツ21世紀枠を引き寄せる原動力となった。
小川投手のすごいのは、センバツでも勝利(対駒大岩見沢)し、「完成した好投手」の殻を敢えて破ったところ。大学入学後、走り込んで下半身を鍛え、そのうえで現在のように左足を胸まで上げ、体全体をダイナミックに使うフォームに変えた。
高校時代と同じ身長171センチながら、球速は高校時代の130キロ半ばから現在は、最速150キロ近くまでマークするようになった。変化球もスライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップと多彩で、ほぼ同じ腕の振りで投げる。
ネット情報などによるとオリックスなどが上位指名を考えているという。
同級生には、桜丘高校出身で、「将来の4番」と期待される東北楽天イーグルスの中川大志内野手がいる。中川選手は豊橋市の桜丘高校出身。近い将来のプロ一軍での対決を首を長くして待ちたい。
東愛知新聞より抜粋
2012ドラフト特集 第4弾(画像をクリックで拡大表示します)
全日本選手権でベスト8
健闘光った創大野球部
創立者の激励胸に「秋の日本一」へ出発
熱戦が繰り広げられている第61回全日本大学野球選手権。創価大学は2年ぶり19回目の出場で、堂々ベスト8の成績を収めた。
「レギュラー、ベンチ、スタンドが一つになって戦えました。チーム、そして自分自身が成長できました」
倉本寿彦主将(4年)が皆の思いを代弁した。
創価大野球部は、試合の朝、部員全員で「創大学生歌」を合唱して大学を出発。光球寮の寮長で応援団を務めた中谷雄太さん(同)は「創立者のために勝つ!―皆が心を合わせて大会に臨みました」と語る。
プロも注目する好投手がそろった今大会。初戦の道都大戦(13日、神宮球場)はスコアボードに「0」が続く我慢の展開のなか、スタンドの大声援を受けるエース小川泰弘投手(4年)が踏ん張り、打線も奮起。3-0で接戦を制す。
九州共立大との準々決勝(14日、同)も投手戦に。0-2で惜敗するも、小川投手の連日の力投と、終始140㌔台後半の速球を繰り出す相手投手に最後まで食らいつこうとする執念が光った。
試合後、創立者は次の言葉を送った。
「よく頑張った。負けるが勝ちだよ。意味があることだから。次に大勝利するための道しるべだよ」「負けても朗らかに次の勝利につなげる。この方程式を忘れてはいけない」「創大野球部、万歳!万歳!万歳!皆で誉れの大拍手をしたよ。ご苦労さま」
岸雅司監督は力を込める。
「素晴らしいチームと対戦して、選手たちは乗り越えるべき壁が見えたはず。本当に全国大会は我々に大きなものを残してくれます。そして、創立者の勝負哲学が、そのまま創価の人間教育となり、選手たちは大成長します。〝目標は日本一。目的は人材育成〟ですから、あきらめません!秋にまたここに帰ってきます」
秋の全国大会である明治神宮野球大会。その前には群雄割拠の東京新大学リーグ、強豪が集う関東大会を越えなくてはならない。
「誓願の日本一」へ、創大野球部の新たな挑戦は、すでに始まっている。
聖教新聞より抜粋
創価大学がベスト8
◇準々決勝
創価大(東京新)
000 000 000|0
000 100 10×|2
九州共立大(福岡六)
第61回全日本大学野球選手権の準々決勝が14日、神宮球場で行われ、創価大学(東京新)は九州共立大(福岡六)に0-2で敗れたが、ベスト8の健闘に惜しみない拍手が送られた(関連記事11面)。
倉本主将(4年)は「どこまでも『日本一』を目標にチーム一丸となって一段と練習を重ね、秋の全国大会を目指します」と。
岸監督は語った。
「創立者をはじめ応援してくださった皆さまに心から感謝申し上げます。チーム全員が大きく成長できました。秋に必ず神宮に戻ってきます」
聖教新聞より抜粋
全日本大学野球選手権
創価大が快勝
準々決勝へ
第61回全日本大学野球選手権に2回戦から出場した創価大学(東京新)は、道都大学(札幌)に3-0で快勝。準々決勝へ駒を進めた(13日、神宮球場。)
行き詰る投手戦となるなか、五回裏、先頭の永井選手(4年)が先生本塁打を放つ。永井選手は3月に左手を骨折。春季リーグを棒に振るが、それがより練習に徹する力に。全国大会直前に復帰。逆境を支えてくれた人たちへの“感謝弾”が均衡を破った。
六回には高山選手(3年)が2点本塁打。投げてはエース小川投手(4年)が無四球11奪3進の完封で勝利をつかみ取った。
準々決勝は今日14日、神宮球場の第1試合(午前11時30分開始、雨天順延)、昨年ベスト4の九州共立大学(福岡六)と大戦する。
聖教新聞より抜粋
創価大・小川11K完封
「バイブル」見てフォーム改造171センチ小柄な体フルに使い力強く
投げ方そっくり和製ライアン
全日本大学野球<2日目>
◇13日◇1回戦3試合、2回戦4試合◇神宮、東京ドーム
和製ライアンだ。創価大(東京新大学)の小川泰弘投手(4年=成章)が道都大(札幌学生)を3安打無四球完封。171センチと小柄ながら大リーグの速球王ノーラン・ライアンばりの豪快投法で11三振を奪った。亜大(東都)は東浜巨投手(4年=沖縄尚学)が大学では自身最多の14奪三振で2失点完投。早大(東京6大学)は吉永健太郎投手(1年=日大三)の好投でコールド発進した。
わずか3安打
小川は171センチの体を、背番号18が打者からみえるほどにひねる。同時に左足を高々と上げ、右足に体重を乗せると一気に投げ込む。最速143キロ。9回、最後の打者はフォークで仕留め4者連続三振で締めた。被安打3、先発全員から11奪三振。「集中を切らさず、1球1球投げました」と113球を振り返った。
昨年は東京新大学リーグで東京国際大に敗れ、大会に出場できなかった。「絶対的な球がないんで、何か変えないと」。そう思って取り組んだのがフォームの改造だった。参考書はメジャー324勝のノーラン・ライアンが書いた「ピッチャーズ・バイブル」。同投手が投げる動画も繰り返し見て、フォームをつくりあげた。
効果は今春のリーグに表れた。7勝無敗、防御率0.76。東京学芸大戦ではノーヒットノーランを達成した。小川は「リリースポイントが高くなって打者からみえにくくなった。体重が軸足に乗って腕がよく振れる。力を抜いて、出所を隠して投げるんです」と説明した。下半身に負担がかかるが、その分は走り込みを増やしてきた。
スカウト集結
ネット裏に集結したスカウトの1人は匿名を希望してこう話した。「3位以内にあがる選手です。球に力があるし今日もよかった。変化球も多い。体は関係ないですよ」と話した。変化球はスライダー、カーブ、カットボール、フォーク、チェンジアップと多彩だ。
小川もプロを志望する。「大学日本一になって、将来はプロで一流の選手になりたい」。大学日本一にはあと3勝が必要だ。「(全試合登板の)覚悟はできています。ゼロに抑えれば負けない。目の前の相手をぶっ倒すつもりで投げていきます」。目指す「一流の選手」に向け、小さな右腕がダイナミックに踏み出した。
【米谷輝昭】
日刊スポーツより抜粋
小川11K完封発進
創価大8強進出
竜・石井スカウト 体小さくても「プロで通用」
ライアン投法
まるで跳ね馬のようだ。最後まで左足を高く跳ね上げ続け、9回は3人とも空振り三振に仕留め、派手に締めくくった。3安打完封発進した創価大の右腕・小川は道都大の先発打者全員から三振を奪った。「調子は決して良くなかったが、『ゼロで抑えれば負けない』と思って投げた。この大会は『ゼロ』を続け、日本一を目指したい」と威勢がよかった。
終盤のマウンドでは両ふくらはぎを伸ばすようなストレッチの動きを幾度もしたが、これだけ足を上げると、疲れが足にくるのだろう。それでも171㌢と小柄な小川はメジャー記録5714奪三振のノーラン・ライアンをまねたというフォームにこだわる。「足を高く上げるのは〝しんどい投げ方〟と言われるが、体の小さい投手は体全体を使って投げないと。それにフォームにためをつくれるし、ボールを隠すこともできるから…」。対戦打者に背中を見せるトルネード型投法だと、腕の出どころが確かに見えにくい。だからこの日、130㌔台後半の球速でも11三振を奪えたのだ。
大学で急成長
ネット裏では、中日・石井チーフスカウトがその投球にほれ込んだ。「スピードガン以上の速さを感じるし、小さくてもボールの角度十分。体に力もあるから、プロではセットアッパーで使いたいな」。愛知・成章高時代に春の甲子園に出場しても、プロ側から注目される投手ではなかったが、創価大に進んで急成長。昨春の東京新大学リーグで優勝を逃したのを機に、プロへの道を考えて新たに投球フォームをライアン型に改造した。それ以降、昨秋は8勝0敗、防御率0.12、今春は7勝0敗、防御率0.76とリーグ戦で超人的な成績を残してきた。
上背がネックで、ここまでプロからの芳しい評価は聞こえてこなかった小川がここへきて評価上昇へ。日本ハムの武田久(170㌢)、楽天の美馬(169㌢)と小柄な右腕が活躍している時代。「ボールの出どころが隠れるような投手は小さくたってプロで通用する」と石井スカウトは言い切った。 (阿知波浩二)
愛知・成章高出身
▼小川泰弘(おがわやすひろ) 1990(平成2)年5月16日、愛知県田原市生まれの22歳。171㌢、79㌔、右投げ右打ち。赤羽根中時代は軟式野球部。成章高では3年春のセンバツにエースとして「21世紀枠」で出場し、駒大岩見沢を破って1勝した。東京新大学リーグでは通算30勝2敗。今春の東京学芸大1回戦では同リーグ史上8人目のノーヒットノーランを達成。
中日スポーツより抜粋
小川泰弘[創価大]
選手のタイプ・ノーラン・ライアン(元メッツほか)
[投手]◎170cm74kg/右投右打/1990.5.16生
経歴→愛知・成章高
◎主な実績
【高校】
08セ2回戦、08夏東愛知大会準優勝
【大学】東京新大学リーグ通算:試27勝22負3回203 1/3責13防0.58
タイトル:MVP3回(10春、10秋、11秋)、最優秀投手賞(10秋、11秋)、
ベストナイン3回(10春、10秋、11秋)、10秋最優秀防御率賞、10春最多勝利投手
大学選手権→09・4強、10・8強
通算成績:試2勝1負1回12 2/3責5防3.55
神宮大会→09・1回戦
通算成績:試1勝0負1回6責3防4.50
170センチの小柄ながらノーラン・ライアン(現レンジャーズ球団社長)を参考としている左足の上げ方により、
マウンド上では躍動感がある。最速147キロの直球はキレ味抜群で、悲願の「大学日本一」へのみ照準を定めている。
週刊ベースボールより抜粋
東京新大学リーグのドクター・ゼロ
エースとしての強さを証明する春
小川泰弘[創価大]/投手]
多くのプロ野球選手を輩出している東京新大学リーグ所属の創価大。今年、ドラフトイヤーを迎える右腕・小川泰弘(4年・成章)も、プロの扉をたたく可能性を秘めた逸材だ。大学入学後、6シーズンの通算防御率は圧巻の0.62、リーグでは最優秀投手を2度受賞した。大学ラストイヤー、悲願の日本一を目指すとともに、自身はエースとしての強さを証明してみせる。(リポート/佐伯 要)
「東京新大学リーグのドクター・ゼロ」
創価大のエース・小川泰弘は、そう呼ぶにふさわしい投手だ。
昨秋はリーグ最多タイ記録の8勝(5完封)を挙げ、防御率0.12のリーグ新記録を樹立した。リーグ戦通算では30試合に登板し、23勝(14完封)3敗、防御率0.62。12年のドラフト候補としてプロのスカウトが注目する右腕の1人だ。
「スカウトの目は意識していません。エースとして、チームを勝たせることが大前提。そのために防御率0.00を目指しています。0点に抑えれば、負けることはありませんから。」小川の淡々とした口調には、自信が見え隠れしていた。
「ノーラン・ライアン(元エンゼルスほか)を参考にした」という左ヒザを胸に引きつけるように高く上げる独特のフォーム。170センチの体をいっぱいに使って、最速147キロの直球やカーブ、スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップと多彩な球種を投げ込んでいく。
八木智哉、大塚豊(ともに北海道日本ハム)といった創価大卒のプロ投手を指導してきた岸雅司監督に小川の評価を聞くと、こう感嘆した。
「直球の球質は大塚よりも上。小柄だが、マウンドでは大きく見える。努力に裏付けされた自信があるからでしょうね」
愛知・成章高では3年春に21世紀枠で甲子園に出場し、駒大岩見沢高戦で完投勝利を挙げた。大学で頭角を現したのは、1年秋。明治神宮大会関東代表決定戦・準決勝の東海対戦で、右ヒジを痛めた当時のエース・大塚の代役として先発し、5安打完封で相手エース・菅野智之に投げ勝った。2年春には卒業した大塚から背番号「18」を引き継ぎ、大黒柱となった。
だが、昨春は東京国際対戦で2試合連続敗戦投手となり、リーグ7連覇を逃した。「本当に悔しくて、何と言ったらいいのか・・・・・・、悔しかった。」ほかの言葉では表せないシーズンだった。
大学選手権へ出場できず、例年よりも早く訪れてしまった昨年の夏。小川は「もっと絶対的な投手に」と自分を追い込んだ。試行錯誤の中でノーラン・ライアンが著した『ピッチャーズ・バイブル』(弊社刊)に出会い、それまでのオーソドックスなフォームを前述のように変えた。さらにそのフォームに必要な強靭な下半身を作るために、徹底的に走り込んだ。
これが実を結び、昨秋は2季ぶりの優勝に貢献。自身3度目のMVPを受賞した。だが、小川は全く満足していない。
「投球内容にはまだ修正点があります。最期に高めを打たれたので、今は低めへ投げる意識を高めて練習しています」
「最後」とは、昨秋の明治神宮大会・準決勝の愛知学院大戦を指す。延長10回、タイブレークの一死満塁から高めの直球を安打され、サヨナラ負けを喫したのだ。
「抑えてやろうという気持ちが先走って、冷静さがなかったですね。何度もベスト4の壁に阻まれているので、今年こそ日本一になりたい。壁を破るのは自分たちの代しかないと思っています」
日本一のほかに、もう一つ今年の目標がある。松山暢浩(92年創価大卒)の持つ通算防御率0.81のリーグ記録更新だ。
「チームを勝たせるために、記録を更新したい。圧倒的に勝ちたいですね」
その表情が、エースとしての決意の強さを物語っていた。まずは、この春。小川は、その力を証明してみせるつもりだ。
週刊ベースボールより抜粋
片岡泰が見た
創価大4年 小川泰弘
大学球界の“ドクター・ゼロ”は東浜だけじゃない。東京新大学リーグで8日、創価大の今秋ドラフト候補右腕・小川泰弘(4年)が杏林大3回戦(岩槻川通公園)で散発3安打、毎回15奪三振で完封。自身18度目の完封(コールドゲーム4を含む)は、同連盟によればリーグ記録を更新中という。亜大・東浜巨(4年)の影に隠れた完封男をアマ野球担当キャップの片岡記者が、「見た」。
◇東京新大学リーグ(埼玉・岩槻川通公園)
杏林大000000000 |0
創価大10001003× |5
(杏)亀谷、加納-丸山
(創)小川-寺嶋
(創価大2勝1敗)
昨秋は防0.12 今季まだ1失点
勝ち点が懸かった大事な一戦。だが、ゲームセットとともに両校ナインは、淡々とホームベース前に並んだ。小川にとって今季早くも3度目となる完封劇は、通算で18度目。勝った方も、それが当たり前だと感じているようにも見えた。
最速147キロを誇る直球。この試合では145キロ止まりだったが、常時140キロ台前半を計測した。スライダー、カットボールなどの変化球もさえた。「序盤は1点もやれないと思って力んでしまった」と言うが、メジャー記録5714奪三振のノーラン・ライアンをまねた、左足を高々と上げるフォームには風格が漂っていた。
絶対的な安定感。そもそも、点をとられないのだ。リーグタイ記録の8勝を上げた昨秋は、72回1/3を投げて自責1(失点は3)。防御率0.12のリーグ新記録を打ち立てた。今季は登板5試合すべてに完投し、無傷の4勝。4月28日の東京学芸大戦でリーグ史上8人目のノーヒットノーランを達成するなど、47回を投げ失点1。防御率は0.19だ。創価大が絶対王者に君臨するリーグとはいえ、この数字は超人的だ。
171センチという投手としては身長が災いし、ここまでプロからの芳しい評価は聞こえてこなかった。だが、日本ハムは編成トップの山田GMが直接視察。「ボールに強さがあってコントロールもいい。上位候補に入ってくる。身長?関係ないよ。ウチは武田久(170センチ)とか谷元(166センチ)とか、小さくても活躍してるのがいるから」と満足げに帰って行った。
スタンドの観客は30人ほど。同じように完封を積み重ねる東浜とは、知名度に天と地ほどの差があるが「ノーヒットノーランを、もう一度やりたい」と言い切る肝っ玉右腕にも注目してほしい。
(アマ野球担当キャップ・片岡 泰彦)
◆小川 泰弘(おがわ・やすひろ)1990年5月16日、愛知・田原市生まれ。21歳。小3で野球を始め、成章高では3年センバツに21世紀枠で出場し、1勝を挙げる。大学ではリーグ戦通算35試合で27勝3敗。171センチ、79キロ。右投右打。
スポーツ報知より抜粋
安倍昌彦の流しのブルペンキャッチャーの旅
隠れた実力派右腕たちをキャッチ!!
安倍昌彦――人呼んで「流しのブルペンキャッチャー」。有望投手のボールを実際に受け、その体感を記す男。
小川泰弘(創価大学)の巻
“ライアン投法”がもたらすエース・小川の世界
大塚豊(現・日本ハム)が3種のフォークを投げ分けて、先発にストッパーにフル回転。絶対的エースとして君臨していた創価大に、小柄な1年生右腕が入学してきた。
ある日のオープン戦。
4人つないだ投手たちの最後に、9回のマウンドに上がったこの1年生。
それまで投げた3人の先輩投手たちとは明らかに違ったオーラを発しながら、あっという間に3つアウトを奪って、試合を締めてみせた。
7球の投球練習から、ボールの質が違っていた。この日の4人の中で唯一「加速度」を感じるストレート。ダランと軌道を変えるような変化球など、1球もなかった。
なにより「違い」が伝わってきたのが、そのマウンドさばき。
打席に入る打者を、この1年生はマウンドの上から見下ろしていた。
相手がどんなヤツなのか、感じようとしていた。何を考えているのか、何も考えていないのか、察しようとしていた。
そして、打席で打者が足の位置を決め、顔を上げた瞬間、その目をマウンドからにらみ下ろしていた。
打席に、打者を迎える。
やっているようで、実はほとんどができていない投手としての当たり前の所作が、この「1年生」にはもうできていた。
最初からモノが違っていた。
「小川だって、たまにはピンチ作るんですよ。そういうときね、行こうかどうか、迷うんだよね、マウンドに。ボクも長くやってるけど、そういうピッチャーって、小川が始めてだよね」
岸雅史監督すら、一目置いている。
気を遣わせるピッチャーだよね・・・。
監督のそんな表現も、実際受けてみると、実感としてよくわかる。
投手・小川泰弘は「世界」を持っている。
だから、軽率に声もかけにくい。彼の「宇宙」を侵すことになっては申しわけない。
「ボクが行って、あいつの邪魔になってもねぇ・・・」
冗談めいた言い方がかえって真実味を増す。
「でも、たまに行くでしょ、マウンド。そうするとね、ボクが何か言う前に、小川、『任しといてください』って言うんだよね。だからボク、『よろしくお願いいたします』って言って、ベンチに帰ってくるの」
エース・小川が渋く笑っている。
「よろしくお願いいたしますなんて、そこまでは言わないですけど、監督・・・」
つぶやくような語りでも、首が太いから声帯も太いのか、ひと言、ひと言、しっかり聞こえる。
「でも、なんとかします!っていう強い気持ちはいつも持ってますから。どんなピンチになっても」
身上は、粘りのピッチングだという。
「ランナーを出しても点はやらない。絶対負けたくないですから」
そう言った小川の顔がすごかった。
苦いものを食べさせられた時のよう。思い出した「何か」があったのだろう。
昨年・秋リーグ戦までで通算23勝して、負けは3つだけ。でもその「3つ」が、エース・小川には許せない。とりわけ、そのうちの2つ。昨年春のリーグ戦で、古葉竹識監督(元・広島)率いる東京国際大に勝ち点を奪われた2敗。創価大はリーグ戦7連覇を果たせなかった。
夏を越えて、雪辱を期した秋のリーグ戦。
エース・小川は登板した10試合で8勝を上げて、なんと5完封。
点をやらない、絶対に負けない投球。
彼が胸を張った身上をそのまま体現し、MVPに最優秀投手、最多勝にベストナイン。投手4冠に輝き、春の「学習」の成果を証明してみせた。
「エースとして、チームを勝たせることが僕の仕事ですから」
さらっと言った。
任しといてください!
指揮官に対して胸をたたける揺るぎない自信。エースの矜持が漂う。
「勝つために、自分のできることを全力で積み重ねてきたことが自信になっている・・・それが1球に伝わると思うんです。一つ、一つ、正確にやりきってきましたから。『準備力』っていうんですか」
ひと言、ひと言、意味をおさえるように、年を押すように論を展開する。
ある場面を思い出した。
いつもは軽快なテンポで投げ進めるエース・小川が、走者が二塁に進むと、一転、サイン交換に時間をかけ、セットポジションの間合いにバリエーションをつけて、打者をじらしながら用心深く打ち取っていく。
耳を傾ける者の理解を確かめるように話を進めるその様子が、彼のピンチでのピッチングそのものだ。
「積み重ねてきたものがたくさんある者は、やっぱり強いと思います。やってきた自信があるから、気持ちもいつも充実していられる。気持ちが充実していれば、自分のいいものを引き出せるじゃないですか・・・そんなにたいした力を持ってなくても、それを100パーセント出し切れば、どんな相手にも勝てると思ってます」
100の力を持っていても、半分して出せなかったら力は「50」。力は70でも全部発揮できれば「70」。
大舞台ほど、この「底力」が勝負を決める。
上げた左ヒザが顔にぶつかるほど高さをとる今の投球フォーム。
サイドぎみに投げていた高校時代。教えてくれる人がいて、腰の回転をタテに改造。そこからは、自分で研究して形にしてきたエース・小川。
学校の購買にわざわざ注文して手に入れた「ピッチャーズ・バイブル」を読んで挑戦した、ノーラン・ライアンばりのトルネード投法。
自分に合ったもの、自分を伸ばせるものを吸収したい。そんな意欲が、2年生以降の驚異的な成長に直結した。
「疲れそうなフォームって、よく言われるんですけど、実際のそこまでは疲れない。そのために、下半身も体幹も鍛えてきましたから。春先のオープン戦で、あまり足を上げないで投げたら、バッターのタイミングが合って結構打たれたんです。やっぱり僕は、上げたほうがいい。タメが作れますし、ボールも長く持てる感じなので」
実戦の「実験」で確信を得た今のフォーム。
「ベストフォームです!」
迷いなく答えた。
「でも・・・孤独、ですよね・・・」
突然、自分の「部屋」に。
そりゃあ、疲れるさ。
「いや、疲れはしないです」
マウンドに上がったら、全部自分だし。
「ピッチャー次第で、試合はどっちにもころびますから・・・」
言い聞かせている。
「創価大のエースとして、創立者や全国にいるOBのために、孤独より感謝や誇りを感じながら投げなくちゃいけないですから」自らに諭し聞かせている。
「でも、楽しいっすね」
一転、肩の重みをサッと掃うように。
「いいボールを投げて、バッターを迎えて、チームが勝つ。スタンド、あまり見ないですけど、でも、喜んでくれるとこっちも嬉しいですし」
笑顔、ちょっと作ったかな。
「使命だと思ってます」
エースの顔に戻った。
「チームを日本一にするのが、僕の使命ですから」
毎年のように、大学選手権、明治神宮大会、全国の舞台にコマを進めてきた創価大。
しかし、4強には勝ち上がっても、そこからの壁にはね返されてきた。
「力の差は紙一重だと思います。やっぱり・・・。チームの団結がいちばん大事だと思います。ベンチに入るメンバー、リザーブ、選手をバックアップしてくれるスタッフたち、どの役割の人も全員が目標の『日本一』に心を向けることができれば」
ならば、どうすればよい。
何が足りなかったのか。これから何をすればいいのか。
「ん~~~」
エースが腕を組んだ。
「ん~~~、難しいですね・・・」
アメを口に入れた。
「ん~~、具体的にですよね・・・」
強い目が中空をさまよう。
こんなとき、エース・小川は両のヒザを左右に向けて、思い切り股関節を広げる。
椅子に浅く腰掛け、両足が横長の「コの字」になっている。
「難しいですね・・・」
答えは出なかった。
ただ、出さねばならない「答え」なのだろう。エースとして、最上級生として、そして、チームリーダーの一人として。
難しい答えほど、何気ない瞬間、ふっと思い浮かぶものなのかもしれない。
岸監督がブルペンを眺めている。
出来立てのブルペンに4人並んでピッチング練習を続けているのは、ピッカピカの1年生たちだ。
どの投手にも、上級生に遠慮したようなオドオドした様子がない。自分の「世界」の中で、向き合うキャッチャーに、そのミットだけに集中して腕を振る。
「彼らはラッキーだよね、小川のすべてがこの目で見られるんだから。最高のお手本ですよ。ボクらが何百遍言うより、小川を見ることのほうが、ずっと彼らの勉強になる。逆に、小川がいるうちに、あいつのDNAを引き継いでいけるヤツを育てるのが、ボクらの仕事なんですよ」
小川みたいなピッチャーいたら、監督はうれしいよね。
楽ですよ・・・。
そう続けるのかと思った。
「うれしい。ほんと、うれしい。ボクから見ても、『ああ、ああいうのがピッチャーなんだなぁ』って思うもん。そういうピッチャーと一緒に野球できるなんてうれしいじゃない。こういうのが『監督冥利』っていうだろうね」
ユニフォームを着ると、終始きびしい表情を崩さない岸監督だが、こういうときだけは、まっ黒に日焼けした目尻がトロッとたれるのだ。
「監督からは、『グラウンドに入ったら鬼になれ』って言われてます。集中力です、自分の場合。まわりが近寄りがたいぐらいのムード出して。練習でも、試合でも、自分のマイペースで自分の仕事を全うしたい」
そりゃあ、ちょっとはわがままもあるかもしれない。傲慢に見えることだって。
その代わり、その代わり投げさせてごらん。誰も文句つけられないほどに、ピシャッと抑えてやるさ。
「それがなかったら、勝てないと思います。それがエースの魂ですから」
たまの休日。
戦いにほころびた心身をお湯の中に投げ出しに、エース・小川は日帰り温泉を訪れる。
湯船にゆっくりと体をひたし、湯上りに冷えたジュースをぐっとあおって、リラックスルームでしばし夢の中に遊ぶ。
「野球のこと、忘れたいですけど、どうしても残りますよね。でも、過ぎたことは考えないんで、自分。結構、切り換えるの早いですから。前のことより、先のこと。今後の試合、今度の相手。どうするか、どう抑えるか。そっちのほうばっかりですね、思いがいくのは」
エース・小川。
ずっとそう呼んできたが、チームには昨春のリーグ戦で同じ4勝をあげ、防御率で際どく上回って「防御率トップ」に輝いた遼友・関根裕之も控えている。
スライダーのキレとコントロールに長けたこの頼もしい同期の力も借りて。なんでも自分、自分と思わないで。肩の力、抜いて。
そんなこと言ったら、エース・小川、どんな顔するかな。
想像していたら、思わずふふっと笑ってしまった。
安倍昌彦のドラフト候補選手体感記 小川泰弘(創価大)
どこにいるんだろう・・・。
アップを終えて、外野でキャッチボールを始めた創価大投手陣。
すぐわかった。空気が違う。
たぶん、いちばん小さい。なのに、占めている空間が大きい。
全身をゆったりと連動させて、可動域を目いっぱいまで発揮しながら、豪快に躍動している。
一見、オーバーアクション。ヒザの頭で鼻をぶつけそうなほど左足に高さをとると、そこからゆっくり、しかも大きく踏み込む。
ここに時間をかける。
足の裏で正しい着地点を探すように。やっと左足が着いても、今度は股関節をじりじり、じりじりと前に移動させ、今度はなかなかボールを離さない。
白鵬だ・・・。
堂々と大きく、横綱土俵入りのようだ。
ゆっくりと、ブルペンのマウンドにやって来た。
仕事をしに来た男の顔。
あっちが上級生で、こっちが下級生。・・・お願いします!
小さい?
ぜ~んぜん関係ない。
逆に、怖い。
股関節の移動で腰がぐっと押し出され、ミットを構えてこっちから見ていると、そこで全身がズームアップ。
投手・小川の全身がグーッと大きくなりながら、こっちに向かってせり出してくるのだ。
右手に握ったボールは、ぎりぎりまでその「巨大化」した小川の後ろ。
最後の最後で体の左右を切り返されれば、目の前でボールが放たれるほどの体感。
身長はなくても角度がすごい。
さあ、ボールはどうだ?
立ち投げ。最初の2つはこっちの様子をうかがうように。3つ目ではじめて指をかけてきた。
うあっ・・・・・・。
悔しいほどのスピード。
こんちくしょう・・・。ケンカ腰じゃなきゃ、捕れっこないぜ、こんなボール。
負けそうな伸び。
向かってくるボールが途中から元気になるんだ。
快腕のボールはいつもこう。
投げ込むボールに疲れがない。
腰を下ろして、右打者の外。
構えたミットを外しても、4つの1つ。逆球なんて幼稚なボールはいっさいなし。
7球、8級。
ゆっくり起こして、グアンと踏み込んで、ビュンと腕を振る。
リズムに揺るぎなし。
9球目に内角をリクエスト。
かすかなシュート回転でスッと沈んで、ミットの中の手の平の骨にガンときた。
こんなボール、芯食ったって飛んでいくわけなし。だから、ランナー出しても点はやらない。
スライダー。
ショートバウンドを、伏せて捕りにいったミットにまぐれで入る。
定規で線を引いたような変化。
カーブはおそらくひねってる。タテに曲がって、それからが速い。
フォーク。
高さを保っていた右腕が、その一瞬だけ下がった。ショートバウンドがミットをすり抜けた。
「緊張してました・・・」
あとでつぶやいた。
ラスト、内角にストレート。
構えたミットの、そこに。
パッシャーン!
スポーツ玉澤製・流しミットならではの乾いた捕球音響きわたるはずだったのに、ボール半分ほど芯をはずれて、ネットで捕っていた。あ~こんちきしょう!
「ごめん、もう1球!」
言おうと思って向こうを見たら、エース・小川、もうスタスタとマウンドを下りてきていた。
ドラフトスカウティングレポート 2012春夏版より抜粋
創価大学硬式野球部
東京新大学春季リーグで36回目の優勝
6月19回目の全日本選手権へ
東京新大学野球連盟の春季リーグ戦で優勝した創価大学硬式野球部に「優勝旗」と「トロフィー」が贈られ、友が記念のカメラに納まった。
創大のリーグ優勝は2季連続36回目。同連盟の代表として、6月12日から神宮球場、東京ドームで行われる第61回「全日本大学野球選手権大会」に19回目の出場を決めた。
初戦は大会2日目、神宮球場の第2試合(6月13日午前11時半開始予定、雨天順延)。道都大学(札幌学生野球連盟)と国際武道大学(千葉県大学野球連盟)の勝者と大戦する。
◇
昨秋の全国大会(明治神宮野球大会)をベスト4で終えた瞬間、創大野球部の次の目標は定まった。
「6月の全国大会で誓願の日本一に!」
そこから、チームの一人一人が、“勝利への逆算”を始めた。
当然、全国大会に進出するためには、群雄割拠のリーグを勝ち抜かなくてはならない。昨年の春季リーグは東京国際大学に苦杯をなめた。どの大学が優勝してもおかしくない。
だからこそ、冬場に徹底して身を磨いた。「目標に向けて、今日、何をすべきか」を全部員が明確にしていった。
一戦必勝で臨んだリーグ戦。実力の拮抗した今季は勝ち星を奪い合う混戦に。その中で創大は一戦一戦を粘り強く戦った。
最終戦を待たずに、勝率の関係で創大の優勝が決まったが、確固たる目標を掲げる選手たちは、集中力を切らさなかった。
最終節の東京国際大学戦も、第1戦(26日)をエース小川投手(4年)が4失点の中、打線が奪起し5-4で勝利。第2戦(27日)は1点を追う七回、一死満塁から9番・寺嶋選手(2年)、1番・高橋選手(同)、2番・倉本主将(4年)の3連続適時打で5得点。チャンスを確実に生かし、5-2と連日の接線を制した。終わってみれば全大学から勝ち点を挙げる完全優勝。満を持して、2年ぶりの全日本選手権に挑む。
岸監督は語る。「全部員が一丸となって勝ち取った全国への挑戦権です。創立者・池田先生、応援してくださる皆さまにお応えすべく、誓願の日本一を目指し、まずは初戦突破に全力を尽くします」
聖教新聞より抜粋
小川泰弘君応援ページ