マスメディアはなぜ暴走するのか

2013/07/06


文春の騒動について思うところがあるので書いてみます。


マスメディアはなぜ暴走するのか

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簡単に経緯を述べると、文春が安藤選手の出産について「1)あなたは安藤美姫選手の出産を支持しますか? 2)子育てをしながら五輪を目指すことに賛成ですか?」というアンケートを行っています。

現在、特に質問①に対して、ウェブ上で強い批判感情が渦巻いています。ぼく自身も、このアンケートは文字通り意味不明だと感じます。何のために取ってるんでしょう?


しかし、こうした文春の理解困難な行動は、必ずしも彼らだけに責任があるわけではありません。マスメディアが暴走するのは、ぼくら市民にも責任があるのです。


こうしたアンケートの前提には、「市民のなかから安藤選手の出産に対する批判の声が高まっている」という事実があります。文春はむしろ「後追い」でアンケートを実施しているわけです。

この突然の告白に対し、出産を祝福する声が上がると同時に、まだ結婚しておらず、父親が誰かも明かさないことへの疑問や、子育ても競技も中途半端になるのではないかなどの批判もあります。

緊急アンケート!安藤美姫選手の出産を支持しますか? | お知らせ – 週刊文春WEB


先行して批判の声を挙げたのは、ほかの誰でもなく、ぼくら市民の側です。引用しませんが、ツイッターや2chなんかを見ても、たしかに罵詈雑言も散見されます。フェイスブックページも荒らされたそうで。

コメントの増加に伴い、誹謗中傷や「汚い言葉」も投稿されるように。運営側は「いただいたコメントは貴重なご意見ですし、批判的なものであっても消したりしない、という方針で運営してきた」が、「さまざまな生き方を選択した女性に対して差別的」であったり「セクシャルハラスメントそのもの」にあたるものも含め、今後「目に余る表現・内容のコメント」は削除するという。

出産告白の安藤美姫選手、公式Facebookページにコメント殺到 「目に余るものは削除」と運営発表 – ITmedia ニュース


批判的なコメントをしたユーザーの一人ひとりは、「軽い気持ちで」彼女の出産について批判的なコメントを行っていると思われます。

彼らはちょうどお茶の間でニュースを見ていて「えっ、出産したの?そりゃないでしょ」と家族と話題にするような感じで、強烈な悪意があるわけではありません。実際、コメントをしたユーザーの一人ひとりを抽出しても、まぁ、普通に常識的な人々が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

この構造は、岩手県議に対して「死ねばいい」というコメントをした人々についても、同じことが指摘できます。彼らは非常に軽い気持ちで「死ねばいい」と語ります。彼らのツイートを見てみると、ごく普通に日常生活を送っている人間であることがわかります。極悪人でも何でもなく、普通の市民なんですね。


しかし、そうした小さな声が重なってくると、大きな影響を持つようになります。一人ひとりは軽い気持ちで「出産はないよねぇww」と語っているとしても、それが一万人、十万人の規模ともなれば、「社会的な関心」となり、マスメディアに捕捉されます。


「マスメディアの暴走」は、次のようなプロセスで発生します。

市民がまず話題にする→マスメディアが捕捉する→マスメディアが話題にする→市民がさらに話題にする…。


今回の件に関しても、市民が誰一人、安藤選手に対する批判の声を発しなければ、こんなアンケートが取られることもなかったはずです。市民とメディアは「共犯」関係にあるのです。

文春のアンケートは違和感の強いものですが、このアンケートが生まれた背景には、ぼくら市民の微弱な批判の集合があります。そのことを理解しなければ、「マスメディアの暴走」は今後も相変わらず発生していくでしょう。


他者批判を行う際は、慎重になりましょう。ツイッターでも、お茶の間でも、職場の雑談でも。あなたが軽い気持ちで発した他者批判は、ほかの誰かの声を混ざり合い、強烈な攻撃性を持ちうるものです。

もちろん、あなた自身がその発言の責任を追及されることはないでしょう。しかし、あなたには発言の責任は存在します。それはあまりに微弱であるため、構造的に追及することができないだけです。


マスメディアの暴走の責任は、ぼくらにこそあります。

規律は簡単です。他者批判を行うときは、慎重になる。それだけです。

批判を行うときは、「相手が目の前にいても、その言葉をぶつけられるか」という想定に立ちましょう。その上で、あなたが語る必要があると考えるのなら、堂々と批判すべきです。

相手が目の前にいたとき、思わず引っ込めてしまうような言葉なら、それは発言すべきではありません。

このことに注意するだけで、マスメディアの暴走はぼくらの手で防ぐことができるでしょう。


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