速算術について

願望 ほんのわずかな工夫で計算式を見る目が180度変わる強力な計算技巧があるにもかかわらず、何故学校で教わらないのか。どんなに計算力が低い子でも、8925+9999のような計算が1秒でできるようになるのに。たった1時間でいい。たった1枚のプリントでいい。たったそれだけで学生に大きな感動を与えることができるのだ。文部科学省は何をやっているのだろう。まだ基本計算能力が固まっていない小学生低学年には早いかもしれないが、中学生以上の人には常識であってほしい。

意義 数学の試験では最終的には計算スピードがものを言う。速算術は計算そのものの時間を短縮する以上に、筆算を書く必要がなくなることによる時間短縮効果が大きい。複雑な計算を避け、計算回数を減らすことで、計算ミスの減少にも貢献する。受験で役立つのはもちろん、実生活でも役立つ。

訓練 速算術は単に方法を知っているだけでは実戦で使えない。気に入ったものを普段から意識して使うようにして、少しずつ使えるものを増やしていく。慣れてきたら、複数の技巧を組み合わせて使うこともできるようになる。

原理 原理はほとんど省略した。特に掛け算の速算の原理は展開・因数分解が背景にあるので、中学校で学習を終えた後ならば、考えてみるのもよい。


暗記すべき計算


足し算の裏技


引き算の裏技


掛け算の裏技


割り算と分数の裏技


倍数条件


上級者用の速算術


暗記すべき計算

 暗記に勝る速算は存在しないことを肝に銘じておこう。


頻出2乗計算 ★★★

 11と15は後述の方法を使って、暗記とほぼ変わらない速さで求めることもできる。


頻出2乗計算

頻出累乗計算 ★★★

 2の累乗は、パソコンやゲーム機のメモリの値だと考えると覚えやすい。これらの累乗は、指数・対数分野や場合の数・確率分野で特によく見かける。


頻出累乗計算

頻出の小数と分数の相互変換 

 小数のほうが計算しやすい場合と分数のほうが計算しやすい場合があるため、小数→分数、分数→小数の双方向ができるとよい。小数は数学ではあまり出てこないが、理科ではよく出てくる。


頻出の小数と分数の相互変換

 頻出の小数と分数の相互変換



足し算の裏技

足し算は引き算で考えよ ★★★

 キリのいい数を足した後で引いて調整することで、繰り上げが多くて鬱陶しい計算を瞬殺できる。


 足し算を引き算で考える

複数の数の足し算の速算 ★★

 和がキリのいい数になる組み合わせを先に計算する。うまい組み合わせがない場合、キリのいい数を利用するとよい。


 複数の数の足し算

複数の近い数の足し算の速算と仮平均を利用した平均値 

 近い値が複数ある場合、1つ基準を作り、そこからの誤差を考えて計算する。この技巧は、平均値を求めるときによく使う手法である。


 仮平均を利用した平均値



引き算の裏技

引き算は足し算で考えよ ★★★

 キリのいい数を引いた後、足して調整することで、繰り下げる必要がなくなる。


 引き算を足し算で考える

1000=999+1と考えよ ★★★

 キリのいい数から引く場合、このように考えると繰り下げる必要がなくなる。


 1000=999+1と考える



掛け算の裏技

 足し算や引き算は計算力が高い人であれば、普通に計算するのに比べてそこまで時間を短縮できるわけではない。しかし、掛け算は数倍の速度で計算が可能になる。掛け算こそ速算術が最も威力を発揮する演算である。


(偶数)×(5の倍数)、(4の倍数)×25、(8の倍数)×125の速算 ★★★

 偶数を分解し、先に10の倍数を作るように計算する。利用できる機会は多く、特に身につけておきたい速算術の1つである。


 偶数の利用

キリのいい数に分解して展開せよ ★★★

 掛け算を引き算に変換できる。特に×99は、下2桁は100との差、上2桁は(元の数)ー1となる。速算効果が大きく、広く応用が可能である。


 キリのいい数と展開の利用

暗記した累乗を利用せよ ★★

 先に述べた頻出の累乗計算を暗記していることが前提である。


 暗記した累乗の利用

○△×11の速算 ★★

 ○と△の和を間に入れるだけ。和が2桁になる場合、百の位に繰り上げる。筆算する場合を考えると当然のことだが、知っていると筆算する必要がない分時間短縮出来る。


 ○○×11

○1×△1、 ○12の速算 ★★

 ○と△の和を十の位、積を百の位に入れる。和が2桁になる場合、百の位に繰り上げる。


 ○1×△1

○5の速算 ★★★

 下2桁は必ず25、上2桁は○×(○+1)となる。これは後述の十等一和の特殊な場合である。使用機会がそこそこ多く、覚えやすい方法であるから、習得しておくべきである。


 ○5の2乗

十の位が等しく、一の位の和が10(十等一和)の速算 ★★

 下2桁は一の位の積、上2桁は○×(○+1)となる。○52の速算を一般化したものである。


 十等一和

十の位の和が10で一の位の和が等しい(十和一等)、 5○2の速算 

 下2桁は一の位の2乗、上2桁は(十の位の積)+(一の位)。


 十和一等

展開公式(A+B)(A-B)=A2-B2 を利用せよ ★★

 2数が近く、一の位の和が10であることを適用の目安とするとよい。


 (A+B)(A-B)の利用

展開公式を変形した A2=(A+B)(A-B)+B2 を利用せよ ★★

 一方をキリのいい数に、もう一方を逆にスライドさせ、スライドさせた分の2乗を足す。2乗の計算に有効で、特に100に近い数の2乗で最も威力を発揮する。


 (A+B)(A-B)の変形の利用

○22の速算 ★★

 これは原理を理解しておくとわかりやすい。


 ○2の2乗



割り算と分数の裏技

割り算は分数で考えよ ★★

 分数で考えることの利点は、約分が出来ることである。割り算の筆算は必要最小限で行う。


 割り算を分数で考える

÷5、÷25、÷125は掛け算に変換せよ ★★

 それぞれ2倍、4倍、8倍が10、100、1000というキリのいい数になることを利用する。また、一般的に割り算よりも掛け算のほうが計算が楽である。


 ÷5

公約数の見つけ方 

 分母と分子の差を求めて素因数分解すると、必ず素因数の中に公約数が含まれている。どの素因数でも約分できなければ、その分数は既約である。一見して公約数が見つからない場合でも、この方法で確実に見つけることが出来る。


 公約数の見つけ方



倍数条件

 実際に割り算を試さなくても約分が可能かどうかがわかるのは便利である。また、整数問題ではこれらの知識は必須事項であり、原理の理解も必要である。


数字の末尾で判別(2、4、8の倍数条件) ★★★

 2の累乗の倍数であるための条件は、末尾だけで判別できる。原理も理解しておきたい。また、割り切れるか否かより、余りが一致すると認識しておくほうが応用性が広い。ちなみに、同様の原理で5の累乗も末尾で判別可能である。


 倍数を末尾で判別

各桁の和で判別(3、9の倍数条件) ★★★

 3と9の倍数であるための条件は、各桁の和で判別できる。10=9+1や100=99+1のように分解する原理も理解しておきたい。割り切れるか否かより、余りが一致すると認識しておく。


 倍数を各桁の和で判別

互いに素な2整数の積(6、12、18の倍数条件) ★★★

 互いに素な2つの整数両方の倍数である。なお、互いに素とは、2つの整数の最大公約数が1であることを意味する。


 互いに素な2整数の積の倍数条件



上級者用の速算術

 元々計算力が高い人・数学的能力が高い人は、これらの速算術によって、さらなる高みを目指すことができるだろう。理解できる人だけ参考にしてほしい。


基数を利用した近い2数の掛け算の速算

 基準になる数(基数)を決めて、そこからの差を利用すると、近い2数の掛け算が簡単に行える。かなり応用性の高い方法である。


 基数を利用した近い2数の掛け算の速算

100に近い2数の掛け算の速算

 上の基数を利用した方法の特殊な場合である。100に近い2数の掛け算は、基数を100として考えると素早く暗算できる。


 100に近い2数の掛け算の速算

図でわかる2桁×2桁の万能速算術

 図のように計算することで、一桁の足し算と掛け算に帰着する。この方法ならば、ある程度計算力がある人なら、いちいち筆算形式に書き直さずに暗算できるようになるだろう。

 (ax + b)(cx + d) = acx2 + (ad + bc)x + bd のxに10を代入したと考えて、3段階に分けて桁ごとに計算できる。これを図で考えると次のようになっているのである。


 図でわかる2桁×2桁の万能速算術

図でわかる3桁×2桁の万能速算術

 3桁×2桁の場合は4段階に分けて桁ごとに計算できる。


 図でわかる3桁×2桁の万能速算術

図でわかる3桁×3桁の万能速算術

 3桁×3桁の場合は5段階に分けて桁ごとに計算できる.


 図でわかる3桁×3桁の万能速算術






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