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DeNA南場さんの講演「ことに向かう力」がいい話だったので全文読め

女性リーダーが一堂に会するイベント「グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット」の特別講演にDeNA取締役、創業者の南場智子さんが登壇。「他人とか自分のことをあまり意識せず、コトに向かうように」というメッセージで、すごく楽しいスピーチでした。

更新日: 2013年07月03日RSS

narumiさん

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Ustreamで録画が見られます。
http://www.ustream.tv/recorded/35252739






だいたいの内容はこんな感じ。

書き起こしてみました。

南場:南場です。私あのぅ、今日すごいアウェイ感を感じてまして。女性であるとか、男と女という枠組みで物事を捉えることが、すごく苦手というか、好きではなくて。

それで会社を起業したものですから、我が社の知名度が上がると、よく海外から「もすとぱわふるうーまんず、なんとか」に出てくれとかですね。そういう言葉を聞いただけで、クラクラと目眩がする感じで。

それで今日なんでここにいるのかなっていうと、日経さんで本を出しまして、お世話になっちゃったもんで(笑) 頼まれて来たという感じで。

さっきシェリル(FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグ氏)のスピーチを見たら、モストパワフルウーマンがここにいたという感じで、ちょっと塩梅が、分が悪いという感じです。

私は「女性に教育は必要ない」という父に育てられまして、そして家庭の中は母親が、私たちから見たら、なんというか、お手伝いさんみたいな感じですね。

父がすごく偉くて完全なる男尊女卑で、それで母はもう小間使いのような感じで、重要なことはすべて父が決めるという。そういう家で育ちました。

私は男であること、女であること以上に、何でも自分で決められない。例えば自転車を買ってくれとか、そういうことも父がダメと言えばダメ。それから門限も非常に早いし。非常に窮屈で、もう家から飛び出たいなと思っていました。

社会に出る前に大学があるんですけど。大学で東京に来たものですから、自由になれたかなと思いましたら、うちの実家は新潟なんですけど、なんか見張られているような気がして、寮の門限も、もし遅れたりしたら、父が見張ってるんじゃないかとか、寮母さんが父に言ってるんじゃないかとか、非常に怖かったのを覚えています。

そこで当時、私が大学生だったのは80年代ですから、「Equal Rights Amendment」。女性の平等を憲法で保障するという動きが米国で70年代に始まって、82年くらいにそれが批准されなかった。結局、流れたわけですが、私がいた大学は女性の教授が非常に多くて、女性の社会進出を必死に言ってました。そして、そういった環境にいたもんですから、どうしてこれが流れちゃったのかなとつらつらと見ていました。

女性の解放について、激しく運動する女性。それをストップしようとする女性。それからストップしようとする男性。応援する男性。すべて自分なりにめくって見て感じたのは、「この動きはあまり好きじゃないな」ということですね。個人的に言うと、誰に対しても大きな共感を覚えなかった。就職をして、男性女性まったく隔たりなく、がむしゃらに仕事ができる環境に来て、私は本当に、初めて開放されたような気持ちになって、そして一生懸命に働きました。

夫の実家で「不快感を表明しました(笑)」

それから結婚もしました。旦那は富山の田舎の出身。旦那の実家に行ったら、とても大きなお魚を切り分けてもらいまして、「あ、お嫁さん、大事にされて嬉しいな」と思ったら、「丈夫な子どもを産んでね」と言われてですね。そして私はまだ若かったんでしょうね、不快感を表明しました(笑)

それで終わってしまいまして、それから二度とこのことは旦那の実家の両親も何も言わなくなりまして、自由奔放と。

そして起業しました。社会に出たら、家庭の中とは全然違って、「私は女性だからやりにくい」と感じたことが一度もないんです。女性ということで苦労したことがない。そしてどこにいても、「黙れ」と言われたこともない、女性という理由では。バカなことを言って、「黙れ」と言われたことは多々ありますが、しかし女性ということで、された覚えはまったくないんです。ですから正直、なんでここにいるんだろう?という感じで、すみません(笑)

そんな感じなんですけど、ただ、子どもがいたらどうだったのかなということですね。私は子どもに恵まれなかったので、選択肢がなかったんですね。要するに子どもにもっと没入するという選択肢がありませんでした。あればそれを選んでいたかもしれない。そして今と同じか、それ以上にハッピーだったかもしれない。よく「子どもを産んで一人前」と言われますけど、私はそうは思わないです。子どもを産んで、自動的に一人前になるかっていうと、そんなこともないし、子どもを産まなければ得られない経験はたくさんあるけども、例えば年老いて、子どもがない夫婦で寂しく暮らすとか、あるいは夫婦だけで暮らすというのも、それなりの経験だと思いますので、それに優劣はないと思います。

ただ、ライフイベントとして、子どもを産むということがなかった。そういうものであるということで、会社を起業して、経営者になったときは人一倍、そういったライフイベントには手厚くしたいと思っていました。会社がほんの少しだけ黒字になった。その時に始めたのが、「子ども手当」です。それは黒字になる前もだったかもしれないけど、とにかく起業したばっかりのスタートアップは忙しい。みんな本当に猛烈に働いている。だけども子どもを持つこととか、家族・子どもを育むことは本当に奨励したいという気持ちで、会社に利益があがってないときは、私のポケットマネーからお小遣いとしてでも、お年玉として、子どものある家には、大事な子どもがいるのに会社に来てくれてありがとう。そして、子どものために、「子どもを育むということを私も会社も奨励しているんですよ」ということをメッセージとして伝えたかった。そういうことをやっていました。

「男と女」以上に大きな違いは、「仕事ができるか、できないか」

Photo by Creatas Images / Creatas

ただし男と女という枠組みで、例えば何か数えたりとか、女性がもう少しマネージメント層に来なければいけないということで昇進をさせたりとか、あるいはそういう枠組みで人を捉えるということが、私は経験としてまったくないんです。

男と女以上にでかい違いは、「仕事ができるか、できないか」であって。あるいはできる人材は1人でも多く採用しようとしていて、それがもちろん女性であったら、女性としてのライフイベントは大いにサポートしたい。

それから育児であれば男性も女性も関係なく、育児で時短とか休むことも大いに奨励したい。男と女ということはまったく関係なく、サポートしたいと思っています。

ですからマネージメント層とか政治家とか、「女性と男性が50:50にならないといけない」という論にもあまり賛成はしていません。それぞれ選択肢が自由であれば選んだ結果かもしれない。それから誰も逆差別を提唱していないということは百も承知なんだけれども、数字が1人歩きするというのも大変に怖いことだと思っています。

やっぱり人事はベストな人材が実力と実績で曇りなく選ばえれるべきであり、そこに少しでも曇りがあると、その人事が歪んでしまう。その結果、得られた数字にはまったく意味がなくなってしまうんじゃないかと感じています。ひとことで言うと、古い人間ということなのかもしれないなと思っています。

そうですね、私のこの辺に関する考えは『不恰好経営』の7章に書いてありますので(笑) この辺をぐだぐだ話すのがそんなに好きではないんですね。

Photo by Jupiterimages / Brand X Pictures

ただ、「ダイバーシティ」ということを捉えるときには、男と女の枠組みではなく、男女も1つの多様性ですけど、国籍であるとか、文化的な背景であるとか、あるいは性格ですとか、特技ですとか、いろいろな違い。

とにかく経営者として言えるのは、「人は多様である方がいい。チームは多様なメンバーから組成されていた方がうんと強い」ということです。

それはどうしてもそうなんです。チームの底力は多様であればあるほど強い。これは私が長年、会社をやって感じたことですね。本当に単一のまったく似たようなメンバーの組織はまとめやすいんだけれども、変化に弱いし、改革に弱い。それから全体の能力も一人ひとりの力が最大化される。ですから経営者にとって、多様なチームをどうやってマネージしていくかは非常に大きなポイントになるということです。経営者というか、企業のトップとしては、異なる人材を集めれば集めるほどパワフルである。だけどそれは同時に、難易度を非常に上げてしまうということなんです。

私は前職がマッキンゼーのコンサルタントなんですけど、初めてマネージャーになったときに、米国のどこかの都市の研修に呼ばれました。そして新任のマネージャーたちが世界中から集まってきた。そのトレーニングというのは、人を内向的か、外向的かとか。知ってますこれ? センシングか、セイリングか。それからインチュエーションか、パースペクティブとか。いくつかの、すなわち2の4乗で分けてた。16通りです。人を16通りに分けて認識して、それに対してマネージメントスタイル、コミュニケーションスタイル、あるいはコーチングスタイルを変えていこうと。理解をした上で、激励の仕方とか、コーチングの仕方を変えていこうという内容だったんですね。

Photo by Noel Hendrickson / Digital Vision

私はそれが大変に不快で(笑) それであの1週間あるトレーニングだったんですけど、2日目の朝に荷物をまとめて日本に帰ってきてしまったんですね。

そのとき言われたのは「マッキンゼー始まって以来だ」と。昇進して、研修をして、怒って帰った人。私がなんで怒ったのかというと、怒っても1週間くらい遊んでればいいんですけど、何が気に入らなかったのかというと、人をたった16の引き出しに分類するというのが。一緒に仕事している人ですよ? チームメンバーですよ。

マッキンゼーは労働時間がものすごいロングアワーですから、マッキンゼージャパンは特にそうですね。さきほどシェリルも言ってましたが。マッキンゼーはジャパンとデュッセルドルフが一番ロングアワーなんですね。

ロングアワーを働いて、ほとんど一緒に暮らしているような相手を、わざわざ16の引き出しに分類し直すというのがまったく意味がわからなかった。それからもう1つは、その相手に応じてスタイルを変えるというのもちょっと無理があるよね…と。なんとなく全体的に非常に幼稚でアメリカンな感じがして(笑) そりゃアメリカンが幼稚だってことじゃないですよ。ただ、例えば研修の終わりに、みんなで一言ずつ今日の研修について言いましょうっていうときに、米国人はなんて言ったかな、インサイトフル、オープニング、エクセレント、オウサム。だいたいそんな感じでしたね。

私はひとことって言われたときに、立ち上がって、「アメリカン」って言って帰ってきたんですね(笑) あ、今日は私、全然シェリルに喧嘩売ってませんし、そういうことじゃないんですけど、そのときそういうことを言ってしまったというだけなんですけども。

一番大変なのは「モチベーションの源泉」が違うこと

ただ、確かに多様な人材をまとめていくのはものすごく大変で難しいことだなと思っていまして、特に国籍とか男女差とか、あるいはエスニック・グループよりも、うんとマネージメント層にとって大変なのはモチベーションの源泉の違いですね。

モチベーションを何から得ているのかがまったく異なっている人たちをまとめていくのはすごく難しい。難易度が高いことだなと感じました。

もちろんコンサルタントをずっとやっていますと、あとビジネススクールにも行きましたので、そういうことを教えてくれるわけなんですけども、そこでいろいろなティップス、Dos & Don'tsを習います。そのコンサルタントを14年もやっているわけですから、本当に何か聞いたら、立て板に水のように、「そういう場合はこうして、こうして、こうして」と言えるようになってるわけですよね。マネージメントの要諦みたいなものです。

ただ私はマッキンゼーで10年間、それからビジネススクールの2年間、あわせて12年間で学んだことよりも、本当に本件に関して、12年よりも多くのことを学んだ一瞬があったんです。その一瞬を今日みんなにお見せしたいと思いまして持ってきました。それがこの写真なんです。

DeNAの初めてのサービスが生まれた瞬間

これが私たちが、DeNAを立ち上げて初めてのサービスが生まれた瞬間なんです。「なんだ、みんな日本人の男じゃないか、しかも全員20代」と思われるかもしれないですが、この4人はおよそどの4人を集めてもそうなんですが、モチベーションの源がまったく違うんです。

一番右の子。赤い服の人は匿名希望の「渡辺雅之」っていうんですけど、この人は褒められたいんですね。そして彼の目標は歴史に彼の名前のついてチャプターを残すということなんですね。すごいドラマチックな人です。

真ん中がいまの我が社の社長の守安ですね。彼はすっかり、いま変わっちゃったんですけど、あのときはまだ若くて、髪の毛もずいぶんあって、彼はこのときは「お金」って言ってました。「自分はお金持ちになりたいんだ」と。

いまは全然変わっちゃったんですよ。もっともっと違うことが彼のモチベーションの源泉なんですけど、当時はとても若くて、「自分は10億円貯めたいんだ」と言ってました。それで何したいの?って聞いたら、「うーん、馬主」って言ってました(笑)

その隣の人はユーザーが大好き。コミュニティが大好き。そしてユーザーを愛してる。とにかくユーザーのために尽くしたい。それやってる時間が好き。それからユーザーに「ありがとう」と言われると嬉しい。他の人じゃだめ。社長もだめ。同僚とかも全然関係ない。ユーザーやコミュニティが大好き。

その隣にいるのが、歯しか見えてないですけど、いい男なんです。彼は技術ですね。「彼の技術が役に立った」という瞬間に最大の喜びを感じるんですね。この4人の違いというのは、およそどの4人を取ってもそうなんですが、これだけモチベーションが普通は違うんですが、これが例えば全員が性別も違って男女がミックスされていて、そして国籍もバラバラで、エスニック・グループもバラバラというグループ。それとまったく関係なく、モチベーションの源泉が違うということが一番マネージメントを難しくするんですね。

「純粋な高揚感」でずっとやっていこう。

どんなに国籍が違っても男女が違って、エスニックが違っても、モチベーションの源泉が一緒だと、本当にマネージメントは難易度がやさしい。この写真にあるように、みんながすごく嬉しそうな顔をしているんです、純粋に。このときに誰が一番貢献したかとか、このアイデアは誰に帰属するかとか、そういったことはまったくなく、全員が本当に純粋に、全員で、チームで、このサービスを世の中に産むんだということで、気持ちが高揚している瞬間なんですね。とても純粋だし、私はとても美しいと思いました。

この写真を撮ったのは私ではなくて、私の仲間の音部っていう女性なんですが、私自身も(カメラの)こっち側で同じような顔をしていたはずです。写真を撮っている音部も同じ顔をしていました。みんなとっても嬉しいときです。チームの目標が達成されたときの高揚感ですね。私はこれを見た瞬間に12年間、いろいろな座学とかコンサルタントとか、ビジネススクールで学んだDos & Don'tsを忘れよう、と。DeNAという会社を何かチームで共通の目的を達成したときの高揚感。この喜びで牽引していこうと決めた瞬間なんです。

これでまとめていくんだ、と。これがある限り、この会社はきっと大丈夫だと感じました。それから私はとにかく、ジェンダーだ、国籍だなんだと言わず、とにかくまったく違うメンバーでも人間である限り、自分がオーナーシップをもって取り組んだ仕事、そして掲げた目標。それを達成したときは、本当に純粋に高いレベルの喜びを感じ、純粋な高揚感を持つものだと。これでずっとやっていこう。これがたくさんある人生にしたいし、会社にしたいな。そんなふうに感じました。

それは簡単じゃないですよ、すごい単純なこと言ってるようですけど、実際、この喜びや高揚感で組織をまとめていくっていうのは、例えばチームの組成の仕方とか、役割分担の与え方。誰ひとり、自分が影に隠れていると感じてはダメなんですね。全員が球体の表面積であり、オーナーであると感じなければいけない。オーナーシップを持って、そして十分にエキサイトするに足る、十分に高い目標がなければいけなくて。チームの組成や目標設定の仕方、それから一人ひとりの責任の持ち方、オーナーシップの持ち方など工夫がいるんですが、これだけ腐心して、会社をマネージしていこうと、私にとってはカチッと入った瞬間でした。

「人や自分に向かわずに、コトに向かう」

これが企業のトップであるとか、リーダーから見た目線だと思います。ただ企業のトップとかリーダーではない人間から見ても、この瞬間が多い人生というのは、すごく、何て言うんでしょうか、輝いていて、彩り豊かでいいな、と感じます。どうやったらこうなるのか。やっぱり「人や自分に向かわずに、コトに向かう」。それが今日の1つのメッセージなんです。

そうですね、ちょっと抽象的な言い方だったかもしれないですが、誰についていくとか、誰に評価されるとか、あるいは自分ができる、できない、もう少し成長していかないといけないのではないか。そういうことに意識を向けるんではなくて、純粋はチームの目標や自分の目標に向かって、それに本当に集中してみると、すごく充実した人生が送れるんじゃないかと思います。

ここにいる人がどういう人なのか、まったくわからなくて、一人ひとりの顔もよく見えません。ただ、おそらく、何か仕事を一生懸命にやっていらっしゃる方々じゃないのかなと。そういう前提で話をしています。仕事で輝く人生、それはプライベートなワークライフバランスを捨てろと言っているのではなくて、そういったバランスを取りつつも充実したキャリアを歩むためには、私は「コトに向かう姿勢」が大事じゃないかなと。人とか自分じゃなくて。そんなふうに感じているし、コトに集中できるチームに呼ばれる人材であれたらいいなと思います。

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narumiさん

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