楽天の横暴にモノ申す
東洋経済オンライン 7月6日(土)0時0分配信
■ 100歩譲っても、今回は楽天のやり方が幼稚で下品
さて、私は三菱UFJモルガンスタンレーから金をもらっているわけでもなく、楽天で買って不良品が送られてきて楽天に復讐を誓っているわけでもない。しかしなぜフランスからわざわざ、他にもやることが一杯あるのに寝る直前にこんなレポートをプンスカ怒りながら書いているのかというと、これはどう考えても楽天のやり方が下品に見えるからである。
まずITセクターのアナリストで時価総額の大きい楽天の取材ができない状態が続けば、アナリスト及び三菱UFJモルガンスタンレーのお客さんである投資家からの仕事が落ちる可能性が高い。大企業である楽天が荒木アナリスト個人のキャリアを左右するような大々的な批判を投資家向けの公開文書で開示した点に憤りを感じている。三菱UFJモルガンスタンレー株式調査部長は、楽天からビジネスを獲得したい投資銀行部との調整もあるだろうが是非、一企業からの圧力に屈せずアナリストの独立性を護ってほしい。
なおこれは荒木氏に関することではないが、一般的に言っていい加減すぎるレポートが横行する資本市場の現状にも警鐘を鳴らしたい。私も機関投資家の立場でいい加減なセルサイド投資銀行のレポートはたらふく読んできた(ちなみに私を担当してくださったアナリストの皆様は素晴らしい方が多く大変参考にさせていただいたので、私をカバーしてくださっていたアナリストの方がこれをご覧になられても決して気を悪くなさらないでください)ので、会社側の怒りもわかる。
それでも資本市場に向けて“このアナリストの話は参考にしないで”と発信したことは楽天のコミュニケーション手法の未熟さ及び、それに対し社内で歯止めがかからなかったガバナンスの弱さが浮き彫りになってしまっている。実際は単に間違っている点を粛々とアナリスト説明会やIRの機会で議論すればいいことである。
ちなみに楽天の発表文書にある税率予測の問題はまだしも、あの純利益予想で金利を払った後の数字なのに、“計算された時価総額に足すノンオペレーティングアセットから借入金を引いている”という点への批判だが、これはこの業界の人でないとピンとこないかもしれないが、金利と元本の返済は別なのでこの計算で合っていると思うのだが、荒木氏はなぜ訂正したのだろう。
不完全な情報をもとに急ぎで書いているので私の誤解かもしれないのだが、そもそもPERが21倍ターゲットだとか17倍ターゲットだとか、バリュエーション比較対象の同業他社の選定からなにからどうせ適当なのは分かっているのだから、つまらない論点でつばぜり合いを演じず、大人の対応をしてほしいものである。そもそも短期間で7割とか株価が上がると当然投資家の中には売りたい投資家もおり、セルサイドとしては“売りレポート”を出すことでトレードを促しビジネスにするのは市場参加者なら皆さんご存じではなかったのか。
なおファイナンスの理論上間違っているという話だが、真面目にファイナンスの理論を勉強されたのなら、PER手法がどれだけいい加減で到底理論などと言えない、というのもご存じなはずである。
最終更新:7月6日(土)0時0分
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