社説

’13参院選 もたつく復興/平時の発想では追い付かぬ

 「一丁目一番地」。政界における頻出用語である。最優先で取り組むべき政策課題を指す。
 今回の参院選で言えば、さしずめ東日本大震災からの復旧・復興だろう。実際、与野党の別なく複数の政党が公約のトップに掲げている。
 安倍晋三首相(自民党総裁)はことあるごとに被災地の復興と福島の再生の加速を強調。その福島で遊説を始めた。民主党の海江田万里代表も初日、被災地岩手でマイクを握った。
 ただ、各党の公約や対応を額面通りには受け取りにくい。被災地以外では訴えのトーンを低くし、「地域課題」に格下げされてしまった印象もある。
 震災から2年4カ月。岩手、宮城両県の沿岸部では、がれきの撤去こそ進んでいるが、荒涼とした更地が広がる。
 災害公営住宅の建設をはじめ住居整備は遅れ、生活を支えるインフラの復旧はいまだ途上。雇用のミスマッチも目立つ。
 福島県は依然厳しい状況が続く。福島第1原発の周辺地域では、地震、津波、放射能の複合災害に見舞われた「あの日」がそのままの形で残る。
 除染は効果が薄く、帰還を促す環境整備が進まない。町外で長期避難を強いられる被災者が地域の一体感維持を期待する「仮の町」の実現も見通せない。
 現状は復興からはるかに遠い。気持ちがなえそうになる住民に政治はどう応えるのか。
 各党の公約には「巧言」が並ぶ。ただ、復興が進まない要因を掘りさげ改善に努めなければ、早期の達成は危うい。
 被災規模が大きく、その状況も地域ごとに異なる。高齢化、過疎化が進み、地域経済にも疲弊が目立つ。神戸市の復興もあまり参考にならない。
 経験のない困難な災害復興に、平時のシステムや論理で立ち向かっても効果は乏しい。
 「これまでの枠組み、制度的な条件を乗り越え、総力戦で向かわなければ突破できない」
 民主党政権当時、政府の復興構想会議のメンバーを務め、今なお被災地を巡り問題提起を続ける赤坂憲雄学習院大教授は、前例踏襲的な対応を憂う。
 非常時と受け止め「異次元の対応」に踏み込めないものか。復興庁の機能を抜本強化し本庁を現地に移すぐらいの決断があっていいし、法的な特例措置も果敢に講ずるべきではないか。
 被災者に寄り添い、社会の先行きを丁寧に読み込んだ市民協働の復興計画づくりを支え、事業進展を妨げる要素の除去に知恵を尽くす。政治・行政は今、あるべき原点を問われている。
 予算の流用など論外。事業推進の円滑化に向けて不足する職員や資材の確保も急ぎたい。
 復興がもたつく状況は裏を返せば野党の出番でもある。大胆で効果的な方策を練り上げ、有権者に呼び掛けてはどうか。
 避難生活を送る住民の帰還意識は低下する一方だ。復興は「時間との闘い」の様相を濃くしている。その加速は被災地にとって未来への希望。あすはわが身の全国民も注視していよう。

2013年07月06日土曜日

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