コアラ:新ウイルス確認…国内53%感染 京大チーム発表
毎日新聞 2013年07月06日 02時31分
国内で飼育されているコアラの約53%が、これまで知られていなかった新しいタイプのウイルスに感染していることが分かったと、京都大などの研究チームが発表した。コアラの赤ちゃんが母親の袋から落下して死ぬ事例があり、ウイルスとの関係を指摘する声も出ているため、コアラを飼育する国内の全8動物園は研究チームの調査に協力する方針を決めた。
◇繁殖に影響か
研究チームの宮沢孝幸京都大准教授によると、2008年7月〜09年1月、当時国内で飼育していた51頭(豪州北東部生まれとその子孫40頭、南東部生まれとその子孫11頭)の血液を採取して分析した。その結果、北東部系のコアラのうち27頭(67.5%)が新タイプの「レトロウイルス」に感染していた。
白血病などを起こす恐れのあるレトロウイルスにコアラが感染することは知られ、国内のコアラの約9割が感染しているとされる。今回見つかったのは、このウイルスとは遺伝子の塩基配列が異なる新タイプだ。
日本動物園水族館協会のコアラ種別計画管理者の黒辺雅実東山動物園副園長によると、コアラは胎盤がなく、生後約6カ月は母親のおなかの袋で母乳を飲んで育つ。袋は母親が座った時に下向きになる形になっており、赤ちゃんが袋から落下して死んでしまうことがある。原因は不明だが、落下の数は増加傾向にあるようだという。
宮沢准教授は「母乳を通して赤ちゃんがウイルスに感染し、病気で力がなくなることによって袋から落ちている可能性がある」と指摘。今後、血液を採取したコアラの追跡調査や死んだ赤ちゃんの提供を受け、ウイルスとの関連を調べるという。【藤野基文】