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設計者の想いの日々(ブログ)住宅・建築業界大手ハウスメーカーの平均坪単価上記は住宅業界の専門家向けに開催されたセミナーの資料で、大手ハウスメーカ-の平均坪単価です。特に凝った住宅というわけでなく、あくまで、ごく一般的な普通の家の単価です。 大手ハウスメーカーの販売価格に対する工事原価の割合は5~6割です。つまり、3000万の家だったら、1500~1800万程度しか、実際の工事には割り当てられていません。 その他4~5割は販売などの経費となります。 建物の内容と比較して、大手ハウスメーカーのコストパフォーマンスは格段に落ちますが、「大手のブランド力」や「イメージ戦略」が、高価格をカバーしていることになるのでしょうか。 けれども、本物を志向する建築士から本音を言わせて頂くのであれば、「大手のブランド力」や「イメージ戦略」は、単なる「幻想」に過ぎません。 それが「幻想」であることに気がついたお客様にとって、これからも、当設計事務所はお役に立てる存在でありたいと、私は考えています。
建設業の許可について
建築業者あるいは各種専門工事業者が、ある一定の金額以上の工事請負契約を消費者と交わす場合、建設業の登録が必要です。それは「建設業法」という法律で定められています。
こんな当たり前のことをわざわざ書きたくないのですが、無許可の業者が後を絶たない現状に忍びありませんので、敢えて詳しく書き記したいと思います。 住宅などの建物の新築工事をまるまる一式請け負う「建築一式工事」の場合、1500万以上の請負金額となれば、建設業の登録が必要です。 外壁などの塗装工事、屋根の葺き替え、太陽光発電などの各種専門工事を請け負う場合は、500万以上の請負金額となれば、専門工事の建設業の登録が必要です。 各種専門工事は、26区分に分かれ、塗装の場合は「塗装工事」の建設業の許可、屋根は「屋根工事」、太陽光発電は「電気工事」の建設業の許可が必要です。 その他、「大工工事」、「管工事」、「タイル工事」、「板金工事」、「鉄筋工事」、「舗装工事」、「左官工事」、「石工事」、「とび土工コンクリート工事」、「内装仕上工事」、「建具工事」、「造園工事」などがあります。 住宅などの「建築一式工事」を、建設業無許可の業者に依頼した場合、法的に義務付けられている「瑕疵担保保険」に入ることが出来ないケースが頻発していますので、ご注意下さい。 ちなみに、無許可で建設工事を請負った業者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑を科せられます。 ついでの話ですが、「建設業法」とは別の法律で、電気工事業を営む業者は、「電気工事業の業務の適正化に関する法律」により、電気工事を請け負う場合、金額の大小の如何を問わず、「電気工事業」の登録が必要です。 これは、感電や電気火災の危険の発生の防止するために設けられている法律ですが、現在、流行している「太陽光発電」の設置工事は、「電気工事業」の届出が必要となります。 いまどきの販売力重視の太陽光発電設置業者については、「電気工事業」の届出をして居ないケースが、相当数、頻発しておりますので、この点も、くれぐれ、ご注意ください。
住宅業界の二極化
昨日は建築士試験の試験官でした。
受験者数はこの10年で半減です。 あと数年で、一級建築士合格者より司法試験合格者の方が多くなるかもしれません。 建築士は団塊の世代前後の方々に非常に多く、あと5~10年で引退する方も少なくないでしょう。 年々、建築士の責任が重くなり、業務も多肢に渡っている一方で 画一的・工業的・インスタント食品のような建築も増えています。 今の住宅業界はインスタントラーメンをイメージ・ブランド戦略で500円で売ろうとするものが多いのが現状です。 インスタントラーメンを150円で売る住宅会社もありますが、いずれ食傷気味となって飽きられるのを延々と繰り返しているのが現在の趨勢ですね。 優れた技術を持つ建築士や、日本の伝統を継承してきた大工などの職人がこれから急激に減っていくなかで、これからの住宅業界がどのような方向性に進むのかと言えば、益々、二極化が進行していくことでしょう。 つまり、建築技術やコストパフォーマンスを大切にしながらの本物志向のものを作り上げていく地道な方法と、販売に重きを置いたインスタント商品の大量な普及ですね。
安易な地盤調査と地盤改良に警鐘を鳴らす
現在の住宅の地盤調査では、ほとんどがスウェーデン式サウンディング試験という簡易的かつ安価な方法で行われています。このスウェーデン式サウンディング試験も、以前は手動式や半自動式が主流でしたが、最近は自動化・機械化が進み、地質の知識が全く無い者でも操作できるような試験方法に変わってきました。
元々、このサウンディング試験、その精度には難があり、補助的な地盤調査資料として、あるいは、軟弱地盤かどうかの目安を確認する程度のものでした。土質を判別するに十分な地中の土を採取することが出来ないのが最大の欠点です。 近年、スウェーデン式サウンディング試験の自動化・機械化が進んだことで、その試験の精度が上がったという誤解が、巷間、まかり通っているようですが、それは全くの誤りで、安全側に過剰に反応するこの自動的試験のお陰で、半数以上の敷地で、地盤改良が必要であるという不可思議な結果が生じています。 このサウンディング試験では、一般的に、25cm毎に、その地層の持つ強度を現す数値(換算N値)を算出して、5~10m位までの深さまで、結果表にまとめられています。 但し、このサウンディングの最近の自動式試験は、実際には、1cm毎にその結果を算出することが出来るようです。つまり、25cm毎に、換算N値を算出していくに当たって、その論拠となる数値は25個あるわけですが、その25個のなかでも最悪の数字を採用して、地盤調査の結果表を作成しているようなのです。 地盤が建物を支えるに当たっては、たった1cmの地点が建物を支えているのでなく、全体的な面として支えているわけですから、1cm毎に25通りの結果が出されたならば、その25通りの平均の数字が妥当な数値であるべきです。それが建築構造計算にあたっての常識的考え方です。 このサウンディング試験、一つの敷地につき、4~5ヵ所のポイントで測定が行われますが、結論から申し上げると、たった一ヶ所のポイントで、1cmでも悪い部分があれば、地盤改良が必要という結果を人為的に導き出されることが非常に多いようです。 こんな人為的な結果は、いわゆる「シロアリ悪徳商法」と何ら変わるところはないと私は思います。無料もしくは格安で床下を点検し、業者が勝手に白蟻を蒔いて、すぐ駆除工事をしないと大変なことになるっていう詐欺商法です。 このスウェーデンサウンディング自動化試験も、原価では3万程度で、格安に設定されています。普通に考えて、こんな金額で出来るはずはないのですが、その後の地盤改良工事が控えているので、そこで十分に元が取れるということでしょう。 このような理不尽な地盤調査方法がまかり通っているのは、まず、地盤調査を行う会社 が地盤改良工事をも、請け負ってしまうことが原因です。 こんないい加減な調査方法で、無駄な地盤改良工事が日常茶飯事に行われている現実について、疑問を呈している者は、建築の素人で多くを占められている現在の住宅業界のなかに於いて、皆無に近いのが現状です。 また、住宅会社にとって、この地盤改良工事が大きな追加工事として利潤を確保できる側面があることも、現在の地盤調査の安易なあり方に拍車をかけているのではないでしょうか。 保険の意味で、仮に必要性が無かったとしても、地盤改良工事をしておけば、何かと安心という考え方もあるでしょう。 ところが、この地盤改良の大半の工事について、将来、私たちの子孫に、非常に大きな問題を残すことが明白なのです。 一番、安価な地盤改良工事として、柱状改良というものがあります。地盤にセメントミルク(セメント+水)を注入して、土と攪拌して、直径60cmの柱を、4~5mの深さまで作るものです。平均的な住宅の床面積の建物で、この柱というか杭は、30~40本作られます。 問題となってくるのは、この柱状改良の寿命です。例えば、50~100年後に家を建替える際、この柱状改良が再利用できるかというと出来ません。かといって、この柱状改良を撤去するのも、やってやれないことはないでしょうが、大変な工事と金額になることでしょう。また、この柱状改良杭を避けて、新しい建物を配置することも非常に難しいでしょう。 つまり、産業廃棄物が埋められた土壌を子孫に残すということになります。あるいは土地を売却しようにも、そのような汚染された土地では、それも難しいでしょう。 ちなみに、この柱状改良された地盤で、先の震災において、基礎の不同沈下の被害が多く報告されています。 安易な地盤調査と地盤改良は、貴重な財産を失いかねない行為ですので、当設計事務所としては、現在のこのような趨勢を憂慮し、警鐘を鳴らさざるをえません。
無限の世界に耐え得ること
家造り、あるいは、広義の意味での「建築」にしても、答えは無限にあります。もちろん、諸条件・価値観・美意識・予算などの制約はありますが、それでも、答えは無限です。
日本の教育の、理系・文系という大きな括りのなかで、「建築」は理系の部類に入り、「建築」に携わる者、特に建築士は、理系的素養を要求されます。理系的な考え方の特徴として、答えを限定的に考える、極端に言うと、一つにしたがる傾向にあります。「1+1=2」の世界です。性格上、答えが無限にある世界に耐えることができないわけです。 その傾向は、「建築」に携わる者でも、特に若年層に顕著で、例えば、学校で、この先生は、このように言ったけれど、あの先生は違うことを言ってるのを許容できないのです。ある程度の経験を経れば、どちらの先生の言ってることも正解なのはわかるはずなのですが、どちらかに決め付けてしまって、さっさと混沌の世界から抜け出したがる傾向は、文系の学生より、理系の学生のほうが、はるかに強いと言えます。 本来、このような性格の者は、無限で混沌としている「建築」の世界には向いておらず、後年、様々な実務経験を経て、矯正されていくような柔軟性を持ち合わせていればいいのですが、必ずしもそうではないのが現実です。ここに「住宅・建築業界」の悲劇があります。 無限に耐え切れない性格の者が「建築」に携わり、自らの引き出しを広げようとする努力を怠り、「住宅・建築業界」の一翼を担った結果、工業的・画一的建築物が氾濫し、日本の伝統文化を破壊する遠因となっているのは、否めない事実です。
海千山千の住宅業界と一線を画す
住宅業界は嘘と偽装で充満した業界です。
消費者の陰で、「実勢坪単価から最低坪10万円を引いた坪単価で宣伝しなければ売れるわけがない」と豪語する経営者、「嘘つかなきゃ、営業なんて勤まるわけがない」とうそぶくトップセールス営業マンを、私自身、今まで多く見聞してきました。「生き馬の目を抜く」ような業界で生き残り、経営者が会社を存続させ利益を確保し、営業マンが生活のために歩合給を手にするためには、多少のモラルの欠如は大目にみて欲しいというのが彼らの本音でしょう。 このような海千山千と対峙する消費者は、彼らに対抗することができず、工事の出来高を大きく上回る前払い契約を余儀なくされているのが現実です。そして、標準仕様が外れるような工事を望めば、法外なオプション費用が発生し、建築士の資格ももたぬ営業マンが会社のマニュアルに沿って間取りの設計を行うケースも多いので、必然的に型にはまった建物になりやすく、メーカー側からすれば、工事がしやすく利益をあげやすい建物を量産することで、利益至上主義を謳歌しています。 対して、当設計事務所のスタンスは、「決して嘘をつかない」ということです。 嘘をつけば、嘘を隠すために更に嘘をつきます。いわゆる嘘の上塗りというものです。だいたい、お客様に嘘をついて良好なコミュニケーションが形成されるわけがありません。そして、往々にして、嘘は嘘で返されます。 当設計事務所は美辞麗句で飾った営業トークをせずに、建築士の立場で、是々非々を明確にしていきたいと考えています。 また、当設計事務所のもう一つのスタンスとして、「お客様の利益を優先して考える」ということがあります。つまり、お客様の意思を汲み取り、設計者がお客様の代理者としての役割を果たし、海千山千の住宅業界からお客様を守るということです。 当設計事務所は、いわゆる住宅・建築業界に生息しているとは思っていません。建築主に奉仕するサービス業に従事していると考えています。海千山千の住宅・建築業界とは、一線を画したいのです。 これらのスタンスを遵守する大前提があって初めて、最良の設計・工事監理業務が遂行できるのではないかと私は考えています。
住宅産業の栄枯盛衰
昭和40年代の頃、三大住宅メーカーと云えば、「日本電建」・「太平住宅」・「殖産住宅」でした。それから30年以上経過した現在、隆盛だったかつての三大住宅メーカーの全てが倒産などの憂き理由により存在しておりません。
私はこの住宅・建設業界に入ってから約20年になりますが、住宅に特化した業界においては特に栄枯盛衰が激しく、住宅メーカー・ビルダーが次々と倒産しては消費者に損失を与え、そして、新しい住宅メーカー・ビルダーが雨後の竹の子の如く設立されていくのを間近で目撃してきました。近年では、住宅業界の新陳代謝はますます活発化する傾向を帯びています。 戦後の日本は、高度成長や人工増加を背景に、多くの住宅を供給しなければならない必要性があったせいか、全国的な拠点を持つハウスメーカーのような存在が生まれました。世界的に見て、他の国々は、戦前の日本がそうであったように、地域密着型である工務店・建設会社のような存在が住宅を建築しているのが一般的であって、全国的な拠点を持つハウスメーカーが存在しているのは現在の日本だけのようです。 過去の日本の歴史を振り返ったり、世界の国々の建築情勢をいろいろと調査してみると、各地域の気候・風習・文化に根ざした地域密着型の業者が住宅を建築して、建築された後も保守・点検・メンテナンスに積極的に関与していくことが社会的常識であると理解できますが、この社会的常識が戦後の日本で崩壊してしまったことこそが、日本の住宅の寿命が世界各国と比較していちばん短い一因となっているのは否めない事実であります。 住宅産業のなかで栄枯盛衰が繰り返されるのは、日本の住宅の方向性が迷走していることの証左であると思いますし、各地域の文化に根ざした地域密着型の業者が生き残ってこそ、日本の住宅文化の再生ができるのではないかと、設計者の立場として、強く申し上げたい次第であります。
販売から本来の建築技術の世界への再生
昔々、人間が住んだり、利用したりする建築物は職人の手によってのみで造られていました。地域に密着した大工(棟梁)、屋根、左官などの職人が時間をかけて、建築物をじっくり造り上げていきました。
明治に入り、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの技術が西欧から伝達されて、木造以外の建築の技術も上昇していきました。その後、建築士の制度も導入され、戦後、地震の多い日本では、その建築や土木の技術の進歩や流播は飛躍的なものがありました。 職人や建築士などの技術者が中心となって、住宅・建設業界を土台から支えてきたと思います。 近年、地域のコミュニティの絆も弱まり、その「しがらみ」から脱して、人々の価値観が多様化し、社会も複雑化していき、特に住宅業界の流れとして、職人や建築士などの技術者が中心となっていた世界から、多様化している人々の価値観をいかに惹き付けて、いかに利益を上げようとするかという「販売」を重点に置く世界に変質していきました。 その結果として、大工などの技術職人の地位が下がり、「販売」に従事するハウスメーカー・ビルダーが販売経費を稼ぐために、職人の手間を叩いて、大工に至っては、世間の平均賃金を大幅に下回る手間で喘いでいるのが現状です。 つまり、職人や建築士などの技術者が中心で回っていた住宅業界の世界に、技術は無くても営業に長けた「販売」を専業とする人間が大量に流入したことで、技術の対価に見合ったお金を貰えない技術職人が激増してしまいました。 そして、「販売」に従事するハウスメーカー・ビルダーも、入れ替わり立ち代わりが激しい、つまり倒産と新規参入が激しく相次いでいる状態で、「販売」の世界も迷走しているのが現状です。 このような状況のなかで、誰が舵を取っていくべきか? 建築の技術を持ち、多様化した人々の価値観と複雑化した社会を理解し、かつ、技術職人の立場も理解して、彼らの技術を上手に活かすことができるのは、建築主(施主)と直接コミュニケーションを取ることができて、独立した存在にある「設計・工事監理者」たる「建築士」以外には存在しえないと私は言い切ります。 住宅を「販売」から「技術」の世界に戻し、建築主たるお客様の価値観に対応して、消費者の利益を保護することが、これからの時代の流れとなる必然性を持つと私は考えています。
建築士を持たない者のモラル欠如
住宅などの建物を建てるために、「間取り」や「外観」を考える「設計業務」は、商業的利得を得ようとして業者が行う場合、業務契約の締結の有無にかかわらず、「建築士」が責任を持って業務を遂行しなければなりません。あるいは、「建築士」の管理下の元、「建築士」を持たない者が補助的に業務を行っていくこともありえるでしょう。そして設計補助業務を実地で経験して学んでいき、「建築士」を取得していく、これも建築技術の継承の観点から見て、大事なことです。
ところが、「間取り」や「外観」を考えるという、いわゆる「設計業務」が、「建築士」を持たない者、あるいは、将来、「建築士」の資格を取得する気がさらさらない人間の手によって行われることが、とりわけ住宅業界で横行しています。 特にハウスメーカーやビルダー、地場工務店の営業社員がお客様のご機嫌を取りながら、無資格でいわゆる「設計業務」を行って、「間取り」や「外観」がまとまって契約の運びになれば、自社の設計部や下請けの設計事務所に確認申請や瑕疵担保保険のために必要な図面や書類などを作成してもらうという概略の流れが出来上がっています。 そして、この「建築士」を持たない者、将来、「建築士」を持つ気がさらさらない者が、自らの歩合給などのために行うモラル無い行為の数々には、酷い現状があると言わざるをえません。 建築的素養、建築基準法の知識がないのですから、モラルがないのも当然でして、狭い敷地に建蔽率オーバーの間取りを書く、隣地境界線から建物の離れが30cmしかなく、民法上訴訟の可能性がある、下手すると建物が敷地に入らない、玄関に入って真正面にトイレがある、2世帯住宅で1Fの寝室の真上に2Fのトイレがある、動線が滅茶苦茶、窓の無い居室、引渡し後に屋根裏を3Fの部屋に改造しようとする提案する、土地が決まっていないのに架空の図面を書いて契約を締結しようとする、どのお客様にもほとんど同じような間取りで押し通そうとする、お客様の機嫌を損ねたくないのでYESマンになりがち、そして、お世辞にも出来が良いと言えない間取りや外観をよく出来たと自惚れる、などなど枚挙に暇がありません。 昨今、姉歯元建築士による耐震偽装事件により、「建築士」としてのモラルの喪失がマスメディアに叩かれましたが、「建築士」を持たない者がもっぱら自らの利益のために、無資格で「設計業務」を行う法律を蹂躙するような建築士法違反にも今後メスを入れていくべきでしょう。 そして、「建築士」を持たない者、将来、「建築士」を取得する気がさらさら無い者が、「設計補助業務」という名目のもとに、「設計業務」を行うことを全面的に禁止すべきであると思います。 具体的に言えば、「設計補助」を行うための資格を創設して、それに合格した者でなければ「設計補助」を出来なくする、あるいは「2級建築士」を受験する要件を満たしている者であれば、「2級建築士」の受験を義務付けにして、合格基準点に達しなくても、「最低基準点」を設けて、それに達しない者は「設計補助」をできなくする等の方策が必要であると思います。 本来はこのような行政の改革を期待するのでなく、業界自らが襟を正すべきなのですが・・・。まだまだ道のりは険しいようです。孤軍奮闘という言葉はあまり使いたくありませんが、私は「建築士」の立場として、これからも正論を書き記していきたいと考えています。
久しぶりの住宅展示場巡り
先日、約10年ぶりに住宅展示場巡りをしてきました。過去に、同業であることが露見して、Mホームに展示場から追い出された経験がありますので、もちろん素人客を装って、各メーカーさんに寄らせていただきました。
10年間展示場に行かなかったのは、「人が住んでいく」という住宅の本質を忘れて、「見せて魅せる」という店舗的な建築物ばかりで、もう飽きてしまったんですね。過去に100ヶ所以上は回ったと思いますが、例外なくワンパターンで、もうお腹いっぱいという感じでした。 お決まりの下がり天井の隙間から漏れる間接照明、有名メーカーの高級グレードのシステムキッチン、中2F・半地下・小屋裏収納がある段差だらけの4~5層構造、全開サッシ、吹き抜けに勾配天井、リビングの造り付け造作、もちろん内装・外装は高級品を使って仕上げられていて、坪数は床面積で55~60坪以上、原価で4000万以上はかかっているなどなど、10年以上経過した現在でも、昔とその様相はあまり変わっていません。 変わってきた点としては、昔ながらの真壁(化粧の柱をみせる)の部屋が減っていること、オープンキッチンが主流となったこと、高級グレードの新建材の使用頻度が減って、塗り壁や無垢材などの自然素材志向がより強くなったこと、規制緩和により半地下や小屋裏収納の面積が大きくなったことなどが挙げられると思います。 そして、展示場で接客する営業社員の体質も変わっていません。お客さんのご機嫌を窺うばかりで、この展示場の仕様だといくらかかるのか?と私が質問すれば、「独自の企業努力で、坪50~60万台で当社は可能です」とか平気で嘘をついてきます。私がハウスメーカー勤務時代、このような営業社員の言動の尻拭いをどれだけ行ってきたかを想い出すと、つい失笑せざるをえませんでした。 ところで、建築の設計という仕事に長く携わる身として、何回も展示場を回っていると、ふと思うことがあります。 最高級品の材料を使っているから何なんだと…。 これから住まう身となるお客様の想いをどれだけ実現できる技術があるんだと…。 そして、少なくとも私は、展示場から「思想」を感じ取ることができません。 建物の「思想」は建築主であるお客様と設計者との協働作業から生まれます。この過程を経ていない生産者の思い込みに過ぎない建物に何の意味があるのか、幸か不幸か、私にはよくわからないでいます。
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