K-1参戦!? 底なし泥沼の向こう側に小さな希望を見た!!
── 司法制度を変える? 具体的にビジョンはあるんですか?
松野:「えぇ、司法試験も受けましたし」
── えぇ!? 松野さんって司法試験にも挑戦されてたんですか?
松野:「弁護士や裁判官、検事の方とか、そういった人たちって有名大学を卒業して、俗世界から自分を遠ざけて、一心不乱に勉強されてその道に入られた人がほとんどじゃないですか。でも、これからの時代は、いろんな経験をしてきた人間がそういった仕事をするのが大切だって離婚裁判中に心の底から思ったんですよ」
── 年齢制限もありますし、なれるとしたら弁護士なわけですが?
松野:「ですね。裁判官にしろ検事にしろ弁護士にしろ、世間を知らない人が多いんですよ。行きも帰りもハイヤー、居酒屋で飲むなんてあり得ない。そんなんで一般の人間と同じ尺度でものを見れるとは思わないんです。だから不思議な判決が飛び出すのも日常茶飯事なんですよ。ボクはですね、弱気を助け強気をくじく、庶民派の弁護士になって司法制度に殴り込もうかと考えているんですよ」
── でも、司法試験のハードルはかなり高いですよ?
松野:「のぞむところです。既に一度落ちてますけど、ボクはプロレスラーでもあるわけですし、何度負けても必ず立ち上がりますから」
── ちなみに、初めての司法試験の結果の詳細は?
松野:「31点でしたね。合格ラインは42点付近なんですけど、やっぱり市販の参考書とかだけじゃ中々難しいですね。でも、頑張りますよ! 自分よりも大きな相手に立ち向い、勝つことによって子どもに夢を与えることこそがプロレスラーの特権であり仕事ですからね。司法試験も多きな壁ですし、マイティー・モーも大きいし」
── え!? ちょっと待ってください。中途半端にいい話をされるんで眠気が大回転してたんですが、マイティー・モー!? 突然何を言い出すんですか?
松野:「マイティー・モーをご存じないんですか?」
── もちろん知ってますよ! 「怒涛のサモアン・フック」の異名をもつスーパーサモア人、『K-1』で快進撃を続ける超ド級ファイターですよね。
松野:「その通りです。ボク、彼に挑戦しようと思ってるんですよ(あっさりと)」
── 大巨人のチェ・ホンマン、元ボクシング王者のフランソワ・ボタとかをあっさりとKOした男ですよ!
松野:「いやぁ、勝てるかなぁと思って。2007年のゴージャズ松野は『K-1』を主戦場に、マイティー・モーの首を土産にGP制覇を狙います!(天に指をかざしながら断言)」
── 勝算はあるんですか? 弱点は見当たらないですけど。
松野:「(肘を突き出して)ボクの必殺技をご存じないんですか? ゴージャスエルボーで一発ですよ!」
── 松野さん、『K-1』は肘禁止です。
松野:「(無視して)『K-1MAX』も考えたんですけど、、魔裟斗君じゃボクの相手としては役不足だし、でもいきなり魔裟斗君とはやらせてくれないでしょうから、『K-1 MAX』はちょっと遠慮しておこうかなと思いまして、あとは三沢かな」
── 三沢って、まさかNOAHの三沢光晴のことですか?
松野:「えぇ、この話の展開で三沢とくればその人しかいないでしょう?(不思議そうに)」
── なんでまたいきなり三沢さんなんですか?
松野:「ちまたでは『NOAHだけはガチ』とか言われてるみたいじゃないですか。そこまで神格化されているリングってどんななんだろうって興味がありましてね。しかも、三沢の必殺技はエルボーっていうじゃないですか。数あるエルボーの中で、ボクのゴージャスエルボーが最強だってことをプロレスファンにも知っておいてもらいたい気持ちもありますし、NOAHは業界の中でもトップメジャー。あのエメラルドグリーンのリングを、三沢の血でゴージャスな赤いバラに変えてみせれば、そんな幻想も吹き飛ぶかなと思いまして」
── ゴング後数秒で地平線の彼方まで松野さんが吹き飛ばされるかと思うのですが、司法試験に合格すれば『K-1』や『NOAH』も松野さんを放ってはおかないと思いますよ……多分。
松野:「ですよね? プロレスラー議員ってのは結構いますけど、プロレスラー弁護士っていうのは初でしょう! そうですね、プロレスラーとしての高見を目指すなら、まずは司法試験ですね」
── 司法制度を変えたいという真っ当な志もお忘れなく。
松野:「もちろんですよ。こんなことばかり話してたら誰かに怒られそうですけど、今って冤罪とかよく話題になるじゃないですか。ボクね、見方を変えれば冤罪で社会から抹殺されたみたいなものだと思うんです。ボクはそういった経験を活かして、同じような境遇の方を弁護してあげたい。助けてあげたい。『絶対に無理だろう』って思う人が大半、いやそれ以上だと思いますけど、ボクはドン底から這い上がって、ここまできました。食べるために路上で人生相談をしたり、ギャラが貰えるということで整形手術までしました。話題になればと思い新宿は歌舞伎町でホストにもなりましたし、演歌歌手としてCDも出しました。そして、こんなボクでも子どもたちが一度は見るであろう夢の一つ、プロレスラーになれて、後楽園ホールというプロレスの殿堂で試合もしました」
── スゴいですよね、松野さんを見ていると、人間は死にものぐるいになれば何でも出来るんだなってホントに思いますよ。
松野:「人生というのは分かれ道だらけです、そして、その分かれ道と退治する瞬間瞬間に、結果はどうあれ判決が下るわけです。ボクの人生、思えば敗訴だらけです。でも、道はまたひとつになり、また分かれだす。一度の判決に揺らいでいるようじゃ、先は明るくないと思います。じゃあ、揺らがないためには何をすべきか? それは自分を信じることだと思います。自分を信じることによって、今自分に何が出来るのかがちゃんと理解できると思うんです」
聞き手・構成:村山 陽(iact) 写真:豊崎 淳、高雄弘孝(iact)
デザイン協力:サニー・サイド・スマイル
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