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ネット選挙―語り合う力を高めよう

誰に投票しようか。選挙のたびに頭を悩ませたり、つい棄権したりしている人にとって、今度の参院選はちょっと違ったものになるかもしれない。インターネットでの選挙活動が解禁され[記事全文]

企業の統治―イエスマンは時代遅れ

最大で1千億円を超える損失を、なぜ20年間も隠せたのか。オリンパスの粉飾決算事件をめぐり、菊川剛(つよし)元社長ら旧経営陣3人に有罪判決が下された。事件が映しだしたのは[記事全文]

ネット選挙―語り合う力を高めよう

 誰に投票しようか。選挙のたびに頭を悩ませたり、つい棄権したりしている人にとって、今度の参院選はちょっと違ったものになるかもしれない。

 インターネットでの選挙活動が解禁された。各政党・候補者は自分たちの主張や行動をホームページや、ツイッターなどのソーシャルメディア、動画サイトなどに流している。

 といっても、初体験だ。中傷や「なりすまし」などの被害が出る恐れはあるし、「大して効果がない」と思う陣営も少なくないだろう。

 ネットを「選挙のための道具」と考えるなら、たぶんそこで終わりだ。

 選挙データベースなどを手がけ、早くから政治家のネット活動を支援してきたボイスジャパン社長の高橋茂さんは「政治を変えるための道具」と言う。日々の政治活動で使いこなしてこそのメディアなのだ。

 有権者にしても、「政策」で投票先を決めるのは理想だが、案外むずかしい。「白か黒か」で割り切れる問題は少ないからだ。景気対策でも原発政策でも憲法改正でも、「この部分は賛成だが、こちらは疑問」という場合はよくある。

 ネットは、そんなときに使える。気になる政策があれば、政党や候補者のサイトを見てみよう。知りたい情報がなければ問い合わせもできるのが、双方向メディアの強みだ。返事がくるとは限らないが、返事がないことも判断材料になる。

 「政治の言葉」を磨くことにもつなげたい。

 選挙公報や街頭演説、政見放送は紙幅や時間が制限され、ていねいな説明には不向きだ。印象に残りやすいスローガンに傾きがちになる。

 後援会など、身内の結束ならそれで済む。でも、多様化した社会で必要なのは、負担のわかちあいのための論理や、意見や立場の異なる人たちを包摂していく説得の言葉だ。

 ネットでのやり取りは、ともすれば攻撃的になる。先日、動画サイトでの党首討論会で野党の党首が発言した際、自民党のネット責任者が「黙れ、ばばあ!」と書き込んでいたと話題になった。

 東京新聞の取材に当人は「申し訳なかったが、(国会の)やじみたいなもの」と弁明したという。そもそも国会がその程度のレベルでしかないなら、こんな情けない話はない。

 政治家も有権者も、語り合う力を身につける。ネット活用はそのためにある。参院選はスタートにすぎない。

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企業の統治―イエスマンは時代遅れ

 最大で1千億円を超える損失を、なぜ20年間も隠せたのか。

 オリンパスの粉飾決算事件をめぐり、菊川剛(つよし)元社長ら旧経営陣3人に有罪判決が下された。事件が映しだしたのは、身内で固め、チェック機能の働かない貧弱な企業統治の姿である。

 時効で訴追は5年前までしかさかのぼれず、先代の社長らは起訴されなかった。菊川氏は「負の遺産を引き継いだ」という理由で実刑を免れた。責任の所在は今もうやむやだ。

 不正をただす機能は、取締役会、監査役会、監査法人など、複数ある。オリンパスの場合、取締役会は経営のチェックどころか逆の方向で立ち回った。

 菊川氏の後に就いた英国人社長が、過去の不審な支出の解明を求めると、その社長を解任した。のちに事情を調べた第三者委員会は「取締役にはイエスマンが多く、取締役会は形骸化していた」と指摘している。

 取締役会には、経営トップの評価も含めた、企業全般を監督する使命がある。トップとの緊張関係が前提であり、米国などでは社外取締役が取締役会の多数を占めている。

 一方、日本企業では、内部から出世の末に取締役に選ばれるのが主流だ。自分を引き立ててくれた過去の経営陣のおこないや、トップに不都合なことを、言いにくい土壌がある。

 そのため、法務省は会社法を見直すなかで、上場企業などに社外取締役を置くよう義務づけることを検討した。だが、経済団体の反対で見送られた。

 社外取締役といっても、社長の友だちから選べば、緊張感に欠ける。報酬目当てで引き受けるケースもあり、チェック機能が必ずしも高まるわけではない、との意見もある。

 とはいえ、空気を読まずにものを言う人は受け入れたくないというのが大方の本音だろう。

 国際競争が進むなか、企業の内部統制をみる市場の目は厳しくなる一方だ。説明責任を果たし、社会的な信頼を得てこそ、海外からの投資も当て込める。生え抜き意識で固める狭量な経営でしのげる時代ではない。

 事件の教訓は数多い。監査法人について金融庁は、単なる会計の確認ではなく、不正の発見という使命があることを明示した。不正を告発する内部通報も含め、企業の犯罪を見逃さないための広範な対策が必要だ。

 企業がチェック機能を高めるのは自らを守るためでもある。オリンパスは法人として7億円の罰金を言い渡され、株主による訴訟も起こされている。イエスマン統治の代償は大きい。

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