日本軍「慰安婦」をテーマにした南朝鮮の写真家・安世鴻さん(41、名古屋市在住)の写真展「重重〜中国に残された朝鮮人元日本軍『慰安婦』の女性たち〜」が、ニコンによる一方的中止通告を跳ね返して、昨年6月、東京・新宿のニコンサロンで開催された。本書はその写真展の待望の書籍化である。
2,500円+税。大月書店、03-3813-4651
写真展には、2001年〜2006年まで7回にわたって中国各地をまわり、現地で暮らす朝鮮半島出身の元日本軍「慰安婦」の女性12人を撮影した約40点の作品が展示された。
日本軍に「慰安婦」として中国に連行され、戦後に現地に取り残されたハルモニ(おばあさん)たちの70余年間にわたる孤独との死闘が、写し出された。
安さんは「普通であれば、『歳月は薬である』(時が流れれば解決してくれるという意)のことわざのように暮らせたのに、日本軍性奴隷を強いられたハルモニたちの苦しみは筆舌に尽くしがたい。彼女たちの人間的な側面と元日本軍『慰安婦』被害者としての一面というぎりぎりの境界を注意深く把握し、歴史の真実を写真に刻んだ。
彼女たちの苦痛を多くの人々に伝えたかった」と話した。そして、日本軍性奴隷制という戦争犯罪を知らぬ、存ぜぬと頬かぶりすることや「沈黙」することは、何人も許されないと指摘。そのうえで、表現の自由や報道の自由を主張する写真家たちが、この問題に沈黙するなら、日本の民主主義は死んだも同然ではないかと語った。
ハルモニたちの「恨」を一刻も早く解くために、多くの人たちに、是非、手にとってほしい一冊。(粉)