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2011年11月18日 (金)

空間線量率の読み方

 沼田市で市内各地の空間線量率を公表したことがきっかけになってか、市内各地で空間線量率を自主的に測る動きが増えているようです。そして、1時間あたり数マイクロシーベルトといった数値が出て、心配を募らせている方が増えているようです。
 しかし、話を聞いているとどうも誤解があるようです。たしかに、1時間あたり5μシーベルトと表示されると、5×24時間×365日と計算すれば、1年間で43.8ミリシーベルトとなります。これでも、健康被害が出るような数値ではないと思いますが、ここではその議論はひとまず置いておきます。
 まず、シーベルトにも2種類あると言うことです。一つは「等価線量」というものでもう一つは「実効線量」というものです。
 「等価線量」というのは各臓器・組織が受ける被曝量と思って下さい。甲状腺が10mSv被曝したとか、右足が100mSv 被曝したというものです。局所的被曝を表す事が出来ます。
 しかし、一口に被曝といっても、全身が被曝するのか局所的に被曝するのかによって、健康への影響は大きく違ってきます。また、局所的な被曝といっても放射線の影響を受けやすい臓器の方の方が影響は大きいのです。全身が被曝することが一番影響が大きいことはいうまでもありません。
 そこで「実効線量」と言う概念が出てきます。これは、異なる臓器の局所被曝と全身被曝を一つの物差しで表す概念で、局所被曝を全身被曝した時の影響に換算して表します。数式で表すとこうなります。
実効線量=臓器1の等価線量×臓器1の組織加重係数
      +臓器2の等価線量×臓器2の組織加重係数
      +臓器3の等価線量×臓器3の組織加重係数
             ・・・・・・
と続きます。
 例えば、甲状腺の組織加重係数は0.05です。甲状腺が20mSv の被曝をしても、実効線量は1mSvです。また、皮膚の組織加重係数は0.01です。皮膚が100mSv の被曝をしても、実効線量は1mSvです。
 そして、基準となっている年1mSv は実効線量です。したがって、局所被曝の場合は、組織加重係数をかけて実効線量に換算してからこの1mSvと比較しないといけないのです。

 さて、沼田市の発表値ですが、これは「局所的に高いと考えられる地点の地表面の空間放射線量」です。ここに立っていたとしても全身がこの線量率で被曝するわけではありません。多くの場合、足だけでしょう。そして、足の組織加重係数は0.05ですから、5×24時間×365日×0.05となり実効線量は年間2.19mSv です。(実際にはもっと複雑な計算になります。)
 実際に全身被曝量に効いてくるのは地表から1m~1.5m程度の空間線量率なのです。局地的に地表面の線量率が高いことよりも、生活空間での1m~1.5m程度の空間線量率で判断すべきなのです。大切なのは平均値です。こちらは、沼田の街なかで0.1から0.2μSv/h、高いところで0.5μSv/hです。

 つぎに、重要なのは空間の線量ではなく実際に被曝した量ということです。沼田の場合高いといっても年単位の長時間被曝で始めて問題になってくる量です。空間線量率がいくら高くてもそこに滞在する時間が短ければ問題になりません。
 どうしても心配なら、空間線量率を測るよりもフィルムバッジや熱蛍光線量計といった個人被曝モニターを付けることをおすすめします。これで、1ヶ月の被曝線量が100マイクロシーベルトを超えなければ何も心配する必要はないでしょうし、増えたその時の生活パターンから線量の多いところが推測出来ます。実際に多くの被曝をしていないのに、空間線量が高いことで必要以上に気に病むことはかえって害があります。

 こういった空間線量率の意味や読み方を説明しないまま数値を公表した沼田市のやり方は感心出来るものではありません。風評被害を増加させ、市民の不安を煽り、自分の首を絞めたに過ぎません。今からでも丁寧な説明が必要です。(杉山弘一)

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