米国揺るがした最強トレーダー、マーク・リッチ氏死去
6月26日(ブルームバーグ):1980年代に米国で起訴される直前に同国を離れ、約20年後に当時のクリントン米大統領によって恩赦を受けた商品トレーダー、マーク・リッチ氏が死去した。78歳だった。
派手なネクタイとキューバ産の葉巻がトレードマークだったリッチ氏は、原油のスポット市場を考案したことで知られる。後に17年間にわたり、米捜査当局にとってホワイトカラーの逃亡者としては最重要指名手配者の1人となった。米国を離れ亡命の身であった時代に、現在のグレンコア・エクストラータ の前身となる商品取引会社を創業する。
広報担当者のクリスチャン・ケーニッヒ氏は電話インタビューで、リッチ氏が26日早くに、スイスの自宅近くの病院で息を引き取ったことを明らかにした。
リッチ氏は1983年、有線通信不正行為や恐喝、米国が経済制裁を科していたイランとの原油取引、4800万ドル(現在のレートで約47億円)余りの米所得税脱税など50を超える罪で起訴される数時間前にスイスに向け出国。罪に問われることになった数百万ドルに上る一連の原油取引は80年代初めに世界の石油業界を揺るがした。
同氏は一貫して無罪を主張。クリントン元大統領は2001年1月、自身の在職最終日に恩赦を与えた。
リッチ氏は09年に出版されたダニエル・アマン氏著の「キング・オブ・オイル マーク・リッチ アメリカを揺るがした最強トレーダー」(日本語版は10年出版)のインタビューで「われわれは原油を購入し、輸送を手掛け、売却した」とし、「彼らは自分たちでできなかったから、われわれが行うことができた」と語っている。
「偉大な先駆者」リッチ氏が築いた数十億ドル規模の「商品取引帝国」は、ロシアのニッケル鉱山やマレーシアのすず鉱床のほか、ロンドンや香港、ニューヨークのトレーディングルームに及んだ。原油タンカーも数隻保有し、キッシンジャー元米国務長官やオペラ歌手のプラシド・ドミンゴらと交友を深めた。
原題:Marc Rich, Fugitive Commodities Trader in 1980s, Dies at78 (2)(抜粋)
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更新日時: 2013/06/27 10:54 JST