Updated: Tokyo  2013/07/05 04:03  |  New York  2013/07/04 15:03  |  London  2013/07/04 20:03
 

ドラギ総裁:政策金利は長期にわたり現行水準かそれ以下

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  7月4日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は4日、政策金利は「長期にわたり」低水準にとどまると言明した。市場金利の上昇に歯止めをかけるため、「コミット(約束)しない」ECBの原則を曲げ、またも未踏の領域に踏み込んだ。

ECBはこの日、短期金利の調節手段である短期買いオペ(売り戻し条件付き債券買いオペ=レポ)の最低応札金利を過去最低の0.5%で据え置いた。長期金利上昇が景気回復を脅かす中で、ドラギ総裁は現行の低金利をいつまで続けるかに言及。いわゆるフォワードガイダンス(時間軸政策)の導入に踏み切った。

金融政策決定後の記者会見で総裁は「ECBの政策金利が長期にわたり現行のままかそれを下回る水準にとどまると、政策委員会は考えている」と言明。「政策委はこの日、予見可能な将来における政策金利について下方バイアスを加えたということだ。出口は非常に遠い」と述べた。

この発言を受け、欧州株と債券相場は上昇。ユーロは下落した。

コメルツ銀行の債券戦略責任者、クリストフ・リーガー氏は「ECBがこれ以上のハト派になるとすれば、あとは実際の行動だけというほどのハト派度合いだ」と指摘。「ECBの新たな姿勢は、債券利回りが現在の水準以上には上がらないという安心感をもたらすだろう」と語った。

行動より言葉

ドラギ総裁によると、政策委は利下げについて「じっくりと議論」した後、行動よりも言葉で示すことを選んだ。ガイダンスを採用する決定は全会一致だったという。現在ゼロの中銀預金金利をマイナスに引き下げるかどうかについては、引き続き予断を持たず検討していく姿勢も総裁は示した。

ベレンベルク銀行のシニアエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は「政策委は今月、全ての選択肢を議論した。事態が悪化する場合に備え、これらの選択肢は引き続き検討対象となるだろう」とし、「今回は追加利下げを避け、代わりにフォワードガイダンスを導入するというミニ革命を起こすことを決めた」と論評した。

ドラギ総裁はフォワードガイダンスを用い、低金利が長期化するとの認識を定着させようとした。これによって長期金利を押し下げ、個人や家計の借り入れコストを低く抑えて経済活動の活発化を図りたい考えだ。ECBではドラギ総裁もトリシェ前総裁も、将来の金融政策について「決してあらかじめコミットしない」と言明するのが通例だった。

フォワードガイダンス導入という「前例のない」措置に踏み切った理由を、ドラギ総裁はユーロ圏経済が広範囲で弱い中でインフレが中期的に抑制されるとの見通しをECBが抱いているからだと説明した。

リスク引き続き下向き

ドラギ総裁は「ユーロ圏の経済見通しについてのリスクは引き続き下方向」だとし、金融環境が最近、世界的に引き締まったことをリスク要因の一つに挙げた。総裁は「長期」の具体的な期間を述べることはせず、ガイダンスについて幾つかの形式が議論されたと語った。

事情に詳しい関係者によれば、ECBは金利の方向を検討する際の特定の経済目標設定や正式な枠組み作りはまだ行っておらず、マネーサプライと多様な経済指標を2つの柱とする同中銀の伝統的アプローチを堅持するという。

金利が既に下限あるいは底に近い中で世界の中銀は、市場を動かすためにコミュニケーションへの依存を強めている。ドラギ総裁は3月に初めて「政策は必要な限り緩和的にとどまる」と言明し、将来の方向性を示唆した。

この日のECBのフォワードガイダンスは米金融当局ほど明瞭ではない。バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長は事実上のゼロ金利政策の解除時期を左右する目安として失業率とインフレ率を利用している。

原題:Draghi Says ECB Rates to Stay Low for ‘Extended Period’(2)(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net;フランクフルト Jana Randow jrandow@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net

更新日時: 2013/07/05 02:58 JST

 
 
 
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