【フランクフルト=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は4日の定例理事会でユーロ圏に適用する政策金利を過去最低の年0.5%で据え置くことを決めた。ポルトガルやギリシャで政権運営が不安定になったことで、金融市場の不安心理に火が付きやすくなっている。追加緩和を視野に入れるECBは潤沢に資金を供給して信用不安を抑えつつ、景気を下支えする。
「失業率の高い状態が続いている」。6月下旬、独与党の会合に出席したドラギ総裁は雇用悪化が景気の重しになっているとの懸念を示した。
5月の失業率は12.2%と1999年のユーロ発足時に比べて約2ポイント高い過去最悪の水準。欧州連合(EU)は3日にベルリンで開いた会合で若者の就労促進で合意したが、「雇用危機」に直面する南欧が苦境から抜け出すメドは立っていない。
雇用が悪化すれば個人消費が低迷し、景気回復が遅れる。それが新規雇用を妨げるという悪循環を生み、各国政府の政権基盤をむしばむ。
財務相が辞任したポルトガルでは財政再建路線が後退するとの懸念から10年物国債の利回りが上昇(価格は下落)した。ギリシャでは連立与党のひとつが政権を離脱。「債務カットは時間の問題」(ライフアイゼン・リサーチ)との見方が浮上し、信用不安が頭をもたげている。
債務危機は最悪期を脱したとはいえ、ユーロ圏の不安定な状況を受けて通貨ユーロの信認回復はなかなか進んでいない。2日にECBが公表した報告書によると世界の外貨準備高に占めるユーロの割合は、2012年に23.9%と前の年よりも約1ポイント減った。
景気の下支えに加えて、市場安定を再び迫られたECBは、金融緩和の長期化に備え始めた。「出口にはほど遠い」。ドラギ総裁はこう述べて、金融緩和の縮小を探る米連邦準備理事会(FRB)には追従せずに当面は緩和路線を続けるとのメッセージを市場に送る。
「物価上昇のリスクは小さい」。こう理事会メンバーは口をそろえる。裏を返せば、いまならインフレを気にせず市場・景気対策に取り組めるということ。「物価安定を軽視している」との批判が高まらないように念入りに理論武装する。
どのような追加緩和策を講じるのかは、まだ見えていない。9月にはドイツの議会選と、ECBの南欧支援の是非を審査する独憲法裁判所の判定が控えている。それを待った上で政策決定するとの見方が欧州では多い。
政策金利は今秋以降に0.25%下げる可能性がある。国債や資産担保証券(ABS)の買い取りなどは景気や金融市場の動き次第となりそうだ。
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