異世界召喚モノについて一言言っとくか
なにやら「異世界召喚モノ」の話がはてな匿名ダイアリーでなされているのを目にした。
最近のファンタジーはなぜ転生や召喚ものが多いのだろうか。
異世界を舞台にしたアニメの召喚/非召喚の分類
小説投稿サイト「小説家になろう」が『理想のヒモ生活』など異世界召喚モノだらけだ、という話はこのところ東京大学新月お茶の会の主要な話題だった。さらに付け加えるなら、『ロビンソン・クルーソー』のごとく、異世界に召喚された主人公がそこで如何にして「生活」していくかを話の主軸に据えたものが多く、「メタラブコメ(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『僕は友達が少ない』など、登場人物がハーレム的なラブコメ構造に自覚的な一連のライトノベル作品群)の時代は終わった。これからは生活がキーワードだ!」という話が無限ループのごとく繰り返されてきた。メタラブコメについては新月お茶の会の会誌『月猫通り』2138号の特集をお読みいただくとして(宣伝)、問題は異世界召喚モノだ。「小説家になろう」はロクに目を通していないので、他のジャンルの話をしよう。
まるっきりの異世界でなければ、前世紀初頭に書かれたエドガー・ライス・バローズの火星シリーズ(火星に瞬間移動した主人公が火星人と戦って美女を救ったりする)や、19世紀末のマーク・トウェインによる『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』(アーサー王の時代にタイムスリップした主人公が現代知識を駆使して活躍する)といった作品がある。このあたりは分類上はSFかな。さらに遡るなら、すでに言われているが浦島太郎だって似たようなものだ。で、id:miruna氏がキレ気味に指摘しているごとく、少女小説や少女マンガには昔から山のようにあるわけだが、そっちは識者にお任せしたい。
ではアニメはどうか。ぼくが10代のころ断片的に、あるいは通して観たものだけでも『魔神英雄伝ワタル』(88年)『魔動王グランゾート』(89年)『天空戦記シュラト』(89年)『NG騎士ラムネ&40』(90年)『魔法騎士レイアース』(94年)『神秘の世界エルハザード』(OVA・TVアニメともに95年)『ふしぎ遊戯』(95年……これは少女マンガ原作。奇しくも同作者による異世界召喚モノ『アラタカンガタリ~革神話~』のアニメ版を前クールに放映していた)『天空のエスカフローネ』(96年)とゾロゾロ出てくる。それより以前には富野由悠季監督作『聖戦士ダンバイン』(83年)があった。興味深いのは、80年代末の一連の作品は当時ブームを迎えていたファンタジーRPGに強い影響を受けていること。さらに、『シュラト』『ラムネ』などのスタッフとして「外道」あかほりさとるがかかわっていることだ。その後も彼は『甲竜伝説ヴィルガスト』(小説版:93年)『MAZE☆爆熱時空』(小説版:93年、OVA版:96年、TVアニメ版:97年)『六門天外モンコレナイト』(00年)と複数の異世界召喚モノを手がけており、実はこのジャンルの大物といえる。あかほり氏については昨年、知人のライターたちが心血を注いだ『オトナアニメCOLLECTION あかほりさとる全書』なる書籍が出たのでそちらをお読みいただくとして(再び宣伝)、とりあえず言えることは、『最近のファンタジーはなぜ転生や召喚ものが多いのだろうか。』を書いた増田の認識とは異なり、少なくともアニメでは「最近」に限らずそれほど珍しいジャンルでもなかったということだ。なお『レイアース』の海ちゃんと『エルハザード』の菜々美と『エルハザード』のひとみは中高時代から確定的に俺の嫁である。異論は認めない。
そして、まったく意外なところに異世界召喚モノがあったことを昨日思い出した(実はこっちが本題)。TM NETWORK6枚目のオリジナルアルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991~』(88年)である。これはストーリー仕立てのコンセプトアルバム(ただし半分は『BEYOND THE TIME』『SEVEN DAYS WAR』『STILL LOVE HER』といった無関係のシングル曲などを収録)。何者かに「音」が盗まれていることに気づいた少女キャロル・ミュー・ダグラスが異世界ラ・パス・ル・パスに迷いこみ、ティコ・ブラーニ(どうみても木根尚登)、フラッシュ(どうみても宇都宮隆)、クラーク・マクスウェル(どうみても小室哲哉)といった仲間たちとともに魔王ジャイガンティカを倒す旅に出る……という、純然たる異世界召喚モノなのである。実際にこのコンセプトに基づいたライヴステージが展開され、木根は小室先生お得意の無茶振りで89年に小説版を書くことになり、さらには当時TMの大ファンだった高河ゆんがキャラクター原案を担当したOVAも90年に制作された。キャロルを演じたのは声優デビュー3年目の久川綾。ティコ役は飛田展男、クラーク役は故・塩沢兼人といった面々に混じってフラッシュを宇都宮隆本人が演じ、見事な大根役者ぶりを披露している(当時行われた上映会では、キャロルとフラッシュのキスシーンで観客の少女たちから悲鳴が上がったとかなんとか)。あえてここには貼らないが、ニコニコ動画にCAROLライヴツアーの動画もOVAの全編もアップされているので、興味のある向きは適宜検索してご覧になっていただきたい。ちなみに、昨年11月からソニー・ミュージックの楽曲もiTunesで配信されるようになったが、『CAROL』が早々にチャート上位にランクインしたことが話題となり、小室先生や木根さんもご満悦である(『TM NETWORK 24年前の名作「CAROL」がiTunes Storeで凄いことになっている – NAVER まとめ』『iTunes Storeでソニーが配信開始→TMに関する小室先生のつぶやきなど – Togetter』参照)。『1974』で出会った人も、『Love Train』しか歌えない人も、この機会に是非どうぞ。
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