社説[オスプレイ追加配備]不相応な重荷 押し付け

2013年7月3日 09時25分
(28時間51分前に更新)

 「沖縄に寄り添う」という甘い文句と「負担軽減」という耳に心地よい四字熟語は、いずれも安倍晋三首相が好んで使う言葉である。安倍首相が本心からそう思っているのであれば、政治の最高責任者として、行動で示さなければならない。「巧言令色すくなし仁」と評されるのは、本人だっていやなはずだ。

 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの話である。

 防衛省は1日、オスプレイ12機の追加配備を正式に発表した。28日から31日までの間に山口県・岩国基地に搬入し、機体整備や確認飛行を実施した後、8月上旬、普天間飛行場に追加配備される予定だという。

 既存の12機と合わせると、住宅密集地のど真ん中にある普天間飛行場に計24機が配備されることになる。「負担軽減」とも「危険性除去」とも相いれない機能強化策だ。

 仲井真弘多知事が会長を務める県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)は6月12日、首相官邸で安倍首相に会い、オスプレイの配備計画中止を申し入れたばかり。

 慰霊の日に糸満市摩文仁で開かれた「沖縄全戦没者追悼式」で、県遺族連合会の照屋苗子会長も、オスプレイ配備を「断じて容認できない」と異例の強い調子で批判した。

 軍転協や照屋会長の指摘は、多くの県民の声を代弁したものだといっていい。

 ところが、どうだ。政府は「沖縄に寄り添う」と言葉ではいいながら、要請から1カ月もたたないうちに、追加配備を正式発表したのである。

    ■    ■

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長らは、訓練の一部を八尾空港(大阪府八尾市)で受け入れる構想を打ち出し、政府に要請した。

 「選挙目当て」との指摘もあるが、安倍首相には、選挙目当てでもいいから、普天間に配備されている既存の12機と追加配備分12機の合わせて24機について、日本本土で責任を持って引き受けます、と語ってもらいたい。

 それがだめならせめて追加配備分だけでもご自身の出身地である山口県に配備してもらいたい。それもだめなら、グアム、ハワイを含めた米本国での展開を米国に申し入れるべきである。

 米議会調査局は、5月にまとめた日米関係に関する報告書の中で「日本が米国による安全保障の利益を得ている間、沖縄人は不相応な重荷に耐えている」と指摘した。米議会からこのような指摘を受けることを日本の総理は恥じたほうがいい。

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 県は昨年12月、日米合意に反するオスプレイの飛行が318件あったことを明らかにし、防衛省に調査を求めた。最終報告はまだ提出されていないが、「明確な違反はなかった」との認識である。

 日米合意に反する夜間飛行があったことは日本政府も認めている。だが、日米合意には「運用上必要な場合を除き」とか「可能な限り」という文言があり、夜間飛行は「運用上必要」な飛行なので違反にはあたらない、というのが米軍側の解釈だ。なにをかいわんや、である。

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