社説

’13参院選 きょう公示/対立軸を明示し判断仰げ

 あの時が政治の流れを決定付け、国のありようを大きく変える起点になった。場合によっては後々、こう振り返られることになるかもしれない。
 参院選がきょう公示される。有権者は極めて重い選択を迫られる。だからこそ、多くの参加で方向を決めてほしいのだ。
 国政選挙がいつの時代も重要なことに変わりはない。ただ、今回は殊のほかと受け止めたい。結果次第で国の最高法規、憲法改正の発議が初めて現実味を帯びるからだ。
 昨年の衆院選で圧勝し、政権を奪い返した自民党。都議選の好調ぶりを維持して公明党との連立与党で過半数を占め、衆院と参院で多数が異なる「ねじれ」を解消できるかどうかが、当面の最大の焦点となる。
 その先に、改憲に理解を示す勢力を結集し、発議に必要な衆参両院での3分の2の確保も視野に入ってこよう。衆院では既に数的な環境は整っており、大きな注目点と言っていい。
 もとより、重要な争点は憲法改正の是非に限らない。
 被災地東北にとっては東日本大震災からの復興加速は最重要課題であり、有権者は各党の真剣味と掲げる手法の見極めを迫られる。安倍政権の経済政策「アベノミクス」に対する評価や、原発再稼働をめぐる対応にも審判を下さなければならない。
 近隣諸国との関係も難しさを増し、暮らしを支える社会保障制度も揺れている。どのような国を目指し、持続可能な社会をつくっていくのかが根本から問われる選挙となる。
 昨年の衆院選の投票率は戦後最低だった。6月の都議選も過去2番目の低い水準にとどまった。先行きを大きく左右しかねない重要な選択機会が盛り上がりを欠いていいはずはない。
 どうするか。各党は意義を強く訴えるべきであり、とりわけ野党は政権与党が掲げる政策との違いをはっきりと説得力ある形で打ち出す必要がある。
 与党は公約の具体的な内容とともに実行力が、野党はそれぞれの立ち位置とともに政策の構想力が値踏みされよう。
 理念と当面の政策を整理し、具体化を図る確かな道筋を書き込んだ公約でなければならない。実現への裏付けを欠いた、項目を並べただけのスローガンのような内容を示されても、判断のしようがないではないか。
 党の公約と候補者の訴えが異なっては有権者を混乱させ、関心の高まりにも水を差す。
 多くの有権者が参政権を行使してこそ、政治は鍛えられる。主権者の意思が大きく示されることで政策の推進力が増し、安定的な政権運営の支えにもなる。組織の結束力に強みを持つ政党も低投票率を歓迎するようでは先々の飛躍を望めない。
 選挙への注目度を高め、参加意欲をかき立てるための特別な方策はない。何より、重要な争点をめぐる政策を明確に示し、対立軸を鮮明にすることだ。
 現実を踏まえつつ、深い洞察で未来を開く政策を競い合う攻防を、有権者は期待している。

2013年07月04日木曜日

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