中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

日韓外相会談 多様な交流で修復図れ

 日本と韓国の外相会談がようやく実現した。領土と歴史認識をめぐる溝は容易に埋まりそうにはないが、これまでに蓄積した経済や文化交流をさらに深め、政府間対話も重ねて修復を図りたい。

 外相会談は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合の会場ブルネイで開かれた。安倍政権、朴政権が発足して初めてだ。

 両国関係は島根県・竹島(韓国名・独島)領有、従軍慰安婦問題などで冷却化したままだ。尹炳世外相は「歴史問題は細心の注意を払わないと、民族の魂を傷つける」と述べた。岸田文雄外相は過去の政権の歴史認識を全体として引き継ぐと説明した。

 双方とも関係発展の重要さを確認したが、歴史問題では歩み寄りはなかった。首脳会談の開催は当面難しいとの悲観論が広がる。

 確執が続く背景には、両国の外交姿勢そのものが変わってきたという事情がある。

 安倍晋三首相は北朝鮮のミサイルや中国の海洋進出に対抗して防衛力強化を目指し、戦後日本の評価についても憲法改正論議など従来とは一線を画す。これを韓国側は右傾化と警戒する。

 一方、朴槿恵大統領は日本より中国との関係強化を優先する。貿易、投資など経済依存度が高いうえ、北朝鮮の核保有阻止も中国に多くを頼らざるを得ないからだ。

 外交、安全保障から自由貿易協定(FTA)まで東アジア情勢は動いているが、日韓両政府は互いの外交政策を見極めないまま、歴史認識の対立ばかりが突出しているのが現実ではないか。

 オバマ政権は日韓の離反を止めようと仲介役を務め、ブルネイではケリー国務長官も加わった日米韓外相会談が開かれた。

 それでも日韓は一九九八年に「未来志向のパートナー」だと宣言し、以後、民間企業同士の提携を中心とする経済協力、自治体や文化交流は大きく伸びた。その経験を今こそ生かしたい。各省庁の対話も再開して、時間は多少かかっても外交全体で修復を図る努力が必要だ。

 次の節目は八月十五日の終戦記念日になろう。韓国、中国との関係改善を考えれば、閣僚や自民党三役らの靖国神社参拝は慎重に対応すべきではないか。

 この日は韓国にとっては、日本からの独立記念日「光復節」。朴大統領は恒例の演説をするが、内容次第では関係はまた悪くなる。歴史に細心の注意を払う努力は、日韓双方に求められる。

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ