楽天先発の田中=Kスタ宮城(撮影・土谷創造)【拡大】
右肩をアイシングしたまま勝利のハイタッチに加わった。田中がこの試合前のチーム打率(・269)がリーグ2位の首位ロッテを8回無失点。エースの好投で、その背中をはっきりと捉えた。
「カードの頭を取って、後ろにつなげられればいいなと思っていた。打たれすぎましたが、守備の助けもあって無失点に抑えられた」
観衆1万4347人の前で9安打を許したが無四球。計116球、完封も見えたが、余力を残してマウンドを降りた。
最大のピンチとなった三回二死一、三塁では、今江を141キロの内角スプリットで詰まらせ、二ゴロに仕留めた。今季は無走者での被打率・226に対して、得点圏に背負うと・170。この日の最速は150キロ。無走者でもクイックで投じるなど、変幻自在の投球をここ一番で披露した。
「三回は意識して(クイックで)投げた。首位のチームだから、そう簡単にはいかないけど、いかなる状況でも抑えられるように投げた」
実は理想とする“究極球”がある。「思い切って腕を振って、110キロくらいしか出ない直球がほしい。絶対に打てないですよ」。打者心理に立ち、直球だけの緩急差(約40キロ)でタイミングを崩す、超一流だからこその発想だ。練習中のキャッチボールでも真剣だ。周囲から「ライジング・ツーシームを投げて!」、「次はライジング・カットを」と無理難題なリクエストをされても快く“試投”。その結果こそ「嘘ですよ」とけむに巻くが、“新マ球”の開発にも余念がない。