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被災地でアルコール依存症増加
7月2日 18時55分

東日本大震災の被災地では、仮設住宅での暮らしが長期化するなど、生活の先行きが見えない不安からストレスを抱えて飲酒の量をコントロールできず、アルコール依存症と診断される人が増えています。

こうした被災地でのアルコール依存症を防ごうと活動している支援団体が宮城県石巻市の「からころステーション」です。
スタッフで臨床心理士の渋谷浩太さんは「被災地で一人暮らしで仕事がない人がお酒を飲んでしまう気持ちは理解できます。そういった人たちは、なかなか周囲とコミュニケーションを取るのが難しいので、結果としてお酒ばかりの生活になってしまう危険性があると思います」と話しています。
渋谷さんの支援を受けている60代の男性も震災後に飲酒の量が増えたといいます。石巻市の仮設住宅で1人で暮らしている男性は、震災の津波で妻を失った寂しさから眠れない生活が続くようになり、朝から晩までお酒を飲み続けるようになりました。
ときには、4リットルの焼酎を1日で飲んでしまう日もあり、一時はアルコール依存症と診断されて体調を崩しました。
現実から逃れたいとお酒に頼るようになった男性は、渋谷さんと出会ってから次第にお酒の量をコントロールできるようになっていきました。
渋谷さんの勧めで同じ悩みを持つ人たちとの交流会にも参加。男性は「このままではいけない」と思うようになりました。お酒を飲みたくなったときには、いつも渋谷さんたちに電話をして話を聞いてもらったといいます。
今ではお酒を飲まない生活を続けられている男性。自分の意志でお酒をやめられるまで粘り強く対応してくれたおかげだと感じています。被災地では、お酒に依存してしまう人がどれくらい増えているのか。
アルコール依存症の治療に積極的に取り組んでいる東北会病院の石川達院長によると、震災前の平成22年度にこの病院でアルコール依存症と診断された患者は、月平均で23.8人。それが、震災後の平成24年度では、月平均が28.7人と、およそ5人増えていました。
石川院長は「被災地では生きがいをすべて失い、それまで積み重ねてきたものがなくなってしまった人たちの喪失感は相当なもので、多量飲酒者がこのまま増え続ければアルコール依存症も増えていく可能性が高い」と指摘しています。18年前に起きた阪神淡路大震災では、震災後に仮設住宅でいわゆる孤独死した人のおよそ30%がアルコールが原因の病気だったという調査結果もあります。
飲酒による健康被害を防ぐ対策も重要ですが、同時に、復興のスピードを加速させるなどして、お酒に頼る原因となるストレスを減らしていくことも大切です。

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