渡辺会長「これ以上の人はいない」王次期コミッショナーを熱望

報道陣に笑顔で対応した渡辺会長

　巨人の渡辺恒雄球団会長（読売新聞グループ本社会長・主筆＝８７）が１日、都内で取材に応じ、次期コミッショナーにソフトバンク・王貞治球団会長（７３）を指名する私案を明かした。来夏まで任期のある加藤良三コミッショナー（７１）の“続投”を支持した上で「次（のコミッショナー）は、だいたい一人しかいないだろう」と名前こそ出さなかったが、近い将来の王会長の就任に期待を寄せた。

　渡辺会長は都内のホテルでの会食後、足を止めて報道陣の取材に応じた。まず、統一球の隠蔽問題で選手会が加藤コミッショナーの“退任要求”を示す要望書を提出していることについては加藤氏を支持した。

　「今の任期中にコミッショナーを辞めさせるのは失礼。こちらが頼んだのだから」

　これまでも「コミッショナーの責任は関係ない」と話すなど、来年夏の任期満了まで加藤コミッショナーが“続投”すべきと持論を展開。一方で、来夏以降のことについて、言及した。

　「（後任は）いるじゃないか。人格、識見、人柄、これ以上の人はいないという人が一人しかいないだろう」

　私案を披露すると、報道陣から「王貞治氏か？」との問いが飛んだ。

　「俺は、そう思っている。ご本人がなかなかね…。（そういう話はまだ）本人とはしていない」

　あくまで個人的な考えであることを強調した。王氏は０６年に胃がんを患ったこともあり、渡辺会長は体調面も心配した。

　「あの人もそうご健康じゃないから、なるべく事務的なことでつまらない苦労をさせないように。我々が守って、あの人のコミッショナーをつくりたいよ、俺は」

　王氏がコミッショナーになるには、球団の公平性を保つため、現職を辞さなければならない。統一球隠蔽問題を調査する第三者委員会も発足するなど、問題は多く残る。

　「（加藤氏には）任期までやってもらって、その間、次の人に準備してもらわないと。（次の候補者に）迷惑かけないように、いろんな問題を全部解決して。全部、嫌ななことを（託して）解決するってのは失礼。野球界をきれいにし、極めて、合理的なものにして我が世界のヒーローを迎える。それが一番いいんじゃないか」

　未来への提言を残し、迎えの車に乗り込んだ。

日本ハム戦を終え東京ドームから引き揚げる王会長

　◆王氏「光栄だし名誉」も就任案は強く否定　東京Ｄで行われたソフトバンク・日本ハム戦を観戦したソフトバンク・王会長は試合後、渡辺球団会長が明かしたコミッショナー就任案を強く否定した。「光栄だし名誉な話」と前置きしたが、０６年７月に胃がんのため全摘手術を受けたこともあり「そんな大役を受けられる体力に自信がない。（ソフトバンクの）監督もこの体力じゃと思って辞めている。体力的にもすべてにおいて健常者がやるべき」と説明した。

　◆コミッショナーの選任　野球協約の第２章・第５条では「コミッショナーの任免は、オーナー会議が行う」と明記されており、同会議や、前任者で推薦のあった人物を、オーナー会議で承認するという形がとられる。人選に関する規定は明文化されていない。昨年７月のオーナー会議では、選考の透明化を求めるオリックスと楽天が、加藤コミッショナーの再任に反対した経緯がある。

　◆王　貞治（おう・さだはる）１９４０年５月２０日、東京都生まれ。７３歳。早実時代の５７年のセンバツで優勝投手に輝き、５９年に巨人入団。一本足打法に変えた６２年から本塁打を量産し、７７年９月３日にＨ・アーロンを抜く“世界記録”となる７５６号を放ち、国民栄誉賞第１号となった。８０年に現役引退するまで通算８６８本塁打、２１７０打点はともにプロ野球記録。８４年から５年間、巨人監督を務め、８７年にセ・リーグ優勝。９４年、野球殿堂入り。９５年にダイエー（現ソフトバンク）監督に就任し、２００８年まで１４年間指揮。９９、０３年に日本一。０６年３月にＷＢＣ日本代表監督として、初代世界一に輝く。０８年１２月に巨人ＯＢ会長、０９年１月にソフトバンク球団会長に就任した。