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【静岡】

浜松・孤立死 市の見守り対象外

◆高齢ではない娘と同居 

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 浜松市の民家で今月、男性(82)と娘(44)の遺体が見つかった「孤立死」問題で、男性宅は市の高齢者見守り態勢の対象から外れていた。男性が、高齢者ではない娘と同居していたためで、関係者の一人は「周囲も生活状況を把握できなかった。無視をしているわけではないが『すきま』が生じた」と指摘した。

 関係者によると、男性は十年近く寝たきりの状態で、娘は男性の食事や健康状態を書き留めるなど、一人で介護を抱え込んでいた形跡があった。男性には認知症もあったが、介護認定は受けていなかったとみられる。

 市高齢者福祉課によると、市内には六十五歳以上の高齢者は四月一日現在で約十九万二千人いる。孤立死を防ぐため、市は民生委員や新聞販売店、電気、ガス事業者と手を組み、異変を察知した場合に通報してもらう態勢を整備。また、二〇一一年には独居の高齢者か、高齢者のみの世帯を調査し、民生委員に定期的に様子を見に行ってもらっている。

 しかし、今回のように娘と同居している場合は対象外となる。さらに、男性宅は住宅地にあるが、近所との付き合いがあまりなく、介護認定を受けないで娘が父親の介護をしていると、行政側が生活状況を把握するのは難しいとみられる。

 帝京大医療技術学部の岸恵美子教授(看護学)は「家族がいると大丈夫だと思われがちだが、介護される本人が外部との接触を拒否したり、人に恥をさらしたくないと思ったりすると家族で孤立する」と指摘する。

 男性と娘が住む地域の自治会長の男性(69)は「市から情報はなく、そういう家族が住んでいることは知らなかった。今後、同様のケースは増えていくと思う。自治会は調査もできず対応ができない」と不安を漏らした。

 男性と娘が亡くなったことについて、市健康福祉部の高林泰秀部長は「事実関係を詳細につかんでいない」とした上で「親子が亡くなったのであれば、現在の取り組みに満足するものではない。こういったケースにも対応できるよう、よりよい仕組みにしたい」と話した。

 <孤立死> 厚生労働省によると公式な定義はない。誰にも看取(みと)られずに死亡し、しばらくたってから遺体で発見される事案などで、介護の必要な高齢者や体に障害のある人のケースが最近問題になっている。生前から家族や親類、地域との関わりが薄く、公的サービスも受けていない場合が多い。公共料金の滞納情報が行政に届かず、孤立死に至った事例があり、厚労省は昨年5月、防止対策として、生活困窮者の情報を市町村の福祉部門に集約するよう、都道府県や政令指定都市に通知した。

 

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