【第129回】 2012年6月21日
そんな松原さんの勤務先は7月から「ジャパンワクチン」へと変わる。転職するわけではない。ジャパンワクチンは第一三共とワクチン世界最大手である英グラクソ・スミスクライン(GSK)が国内ワクチン事業で手を組んで設立した折半出資会社であり、7月から営業を開始するのだ。
国内で3割という最大シェアを占めるこの2社連合の狙いは、接種できるワクチンの種類を大幅に増やすことだった。
開発を妨げる鎖国時代の呪縛
日本は長らく「ワクチン後進国」というレッテルを貼られてきた。約40年前、ワクチンの副作用に対する訴訟が頻発し、責任追及を恐れた行政やメーカーはワクチンにすっかり及び腰になった。以後、世界で当然のように接種されているワクチンでも、日本には存在しないという鎖国状態が続いた。
ようやく海外から新規ワクチンが入るようになったのは2000年代後半。07年にヒブ、09年に小児用肺炎球菌と子宮頸がん、11年にロタウイルスのワクチンがそれぞれ国内販売の承認を取得した。
07年に約600億円だった国内ワクチン市場は5年間で2000億円を超えるまで拡大したものの、鎖国時代の呪縛は残った。下の表から、その意味が見て取れる。
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