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患者が一時的に暮らすアパート
診療所見学の後、治療中の
患者が一時的に暮らすアパートを訪ねた。そこは1968年に建てられた普通の2階建て集合住宅で、
1989年にEHC―Dにより一部の部屋を患者対応型にリフォームされたものである。使用料として、
古いタイプの方は一人1日一室40ドル(2人以上の場合は割引あり)でタオル・シーツの洗濯付き
。新しいタイプ
の部屋は、一人1日60ドル(二人以上の場合は割引あり)で付き添いは50ドル。
レイ先生の患者であることが入居条件となっている。室内はドライ壁の上にVOCの少ないペンキを使用。
床は磁器製。
ベンチ・テーブル・椅子・テレビ等全て中古品で、金属か木材で出来ている。キャビネット
は木材またはスチールで木材の内側はアルミニウムでカバーしてある。ベットにはマットを
使用せず金属のスプリングの上に7〜8枚の綿パットを重ね、そこにシーツをする。キッチン
用品はガラスまたはスチール製を使用。ガスコンロは使用せず電磁器であった。
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古いものだけを選んだ重症患者のトレーラー・ハウス
この様なところにも住むことの出来ない重症患者の集まったシーゴウィル・カントリー・
ハウスも訪ねた。ここは街から高速道路で2時間ほど行った、廻りには建物は何もない木に
囲まれた所であった。住まいの近くに車が入ってこられないようロープが張られている。
小さな家が建ち並んでいるのかと想像していたが、トレーラーが十数台間隔を開けて並べて
あるだけだった。これらのトレーラー・ハウスは古いものだけを選び、中には第二次世界大戦中
に使用していたものもあった。あまりに閑散としているため、驚くと共に気の毒に思った。
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トレーラーハウスのオーナー、トミーさんも患者
そこはトミーさんという50歳代の女性患者が所有し、他の患者さんに週280ドルで貸し、
その賃料で
生活している。トミーさんの部屋を見せていただいた。トレーラー内部の壁・床は
ポセリンスチール、テレビは外に飛び出し画面の前にはガラスのカバーがしてある。
棚はスチール製で扉はナシ。
電話はプラスチック製ではあったが古いものなので今は臭わなくなっているということであった。
ヒーターは電気であったが、人によっては使えない場合もあるという。トレーラーなので
部屋は小さく、ベットの他は家具らしきものはない。
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私たちの洋服や持ち物の影響で体調をくずしたトミーさん
患者さんは炊事や選択の臭いにも苦しくなるため、
外の少し離れた所に共同炊事場と洗濯場、冷蔵庫置き場がある。重症で自炊が出来ない人は、
賄いを頼むそうである。食材は無農薬・無添加のものを取り寄せている。
敷地内に小さな畑があり、野菜を栽培しているようだった。敷地のそばには沼もあり、
トミーさんはそこにいる魚を釣って食べることもあるという。私たちが部屋で説明を
聞いているうちにトミーさんの体調が悪くなってしまった。私たちの洋服や持ち物、体臭など
トミーさんには耐えられない物ばかりのようであった。同じ敷地内に、窓やドアを全て
アルミで覆っているトレーラーがあった。その患者は日光もだめ、人に会うこともだ
めということで、外から入る物をすっかり遮断しているということだった。
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自然にまかせたレイ先生の牧場
最後の1日、土曜日の午後、レイ先生が休日にも関わらずご自分の牧場、牛のセリ市場、
そして20年前に患者となってしまわれたフォーリー・アンセカー女史の自然住宅を案内
してくださった。牧場では農薬を使わず、広大な草原に放し飼いにしている。
牛が病気になっても獣医に見せることはなく、自然治癒にまかせる。死んでしまった
場合もその場に放置し、自然の土に返すのだそうだ。今年の冬は6頭死に、
骨だけになった頭蓋骨や体が幾つか転がっていた。食べ物も空気も汚染されていないので、
糞も全く臭くない。赤ちゃんが産まれると母親はもちろんのこと、他の雌牛が交替で
ベビーシッターを努め、しっかり赤ちゃんを見守るのだそうだ。なんと優しい、
微笑ましい事でしょう!牛の顔は皆穏やかで、伸びやかに仲良く暮らしている。
汚染度が低いということでこれほど違いが出るのかと感心した。
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牧場内にある自然住宅
フォーリー女史の建設中の自然住宅別荘がレイ先生の牧場の敷地内にあった。
彼女はデザイナーということもあり、安全性の他、内・外装とも美しさにこだわり
があるようであった。彼女は20年前、ガスにはじまって、次々と色々な化学物質に
反応するようになった。レイ先生と出会い、治療をしたことで現在は元気にデザイナー
として活躍している。ダラス中心部にあるご自宅も自然住宅で、家具類はアンティーク
が好みのようで、170年前の鏡や古いタンス、キッチンの流し台に古いタイル、
と古い物を美しく取り入れていた。
牛のセリ場では、近隣から集まったカウボーイ達が景気良くセリを行っていた。
セリ場に引っぱり出された牛は荒々しく柵にドカ〜ン!とぶつかって暴れ回っていた。
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日本にも1日も早く治療施設を
今回、治療現場や患者さんの生活状況を見せていただき、この病気の深刻さを改めて
感じることが出来た。日本でもすでに多くの患者さんが苦しんでいる状況で、
1日も早く治療施設や生活の場が出来ることを心より願った。
レイ先生には休日にも関わらずプライベートな所までご案内いただき、その上、
私達の稚拙な質問に対してもいつもやさしくお答えいただき大変感激した。
日本で環境施設が出来た時の来日の約束をして下さり、感謝の気持ちいっぱいで
ダラスを後にした。
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