社説
査定される地方/どこまでつけ込むつもりか
「景気回復で所得アップ」という掛け声とは裏腹に、7月から大半の自治体で公務員給与が削減される。安倍政権の言っていることとやっていることのずれが気に掛かる。 東日本大震災の復興財源を確保するため、国家公務員の給与は昨年4月から2年間、平均で7.8%引き下げられた。地方公務員も国並みに給与の削減を、というのが政府の言い分だ。 国による自治体財政へ介入であり、全国知事会など地方6団体が「自治の本旨に反する」と一斉に反発したのは当然の成り行きだった。 「お願いする立場」と言いながら国は、本年度予算で給与財源となる地方交付税4千億円の減額を早々に決定。兵糧攻めに地方の抵抗も力尽きた。 総務省によると、全国の自治体のうち9割超の1625自治体が、給与引き下げを決定または検討中としている。 宮城県は、交付税が減らされる状況で職員給与に切り込まなければ復興事業に支障を来すとして平均5.7%の削減を決めた。多くの自治体が給与を削減する以上、応援職員の派遣を頼む立場としては致し方ない判断だった。 一方、仙台市は国の要請を突っぱねた。「既に昨年度から独自に給与を削減している」というのがその理由だ。4年間で国の要請額を大幅に上回る80億円を削減するという。 こうした自助努力がなされているにもかかわらず、要請に従わない自治体は政府から個別に呼び出され、厳しいヒアリングを受けた。独自路線を貫いたはいいが「政府の裁量に任される特別交付税を減らされるのではないか」と「報復」を懸念する声も上がっている。 復興財源を確保するためとはいえ、公務員給与を人質にして地方の固有財源である交付税に切り込むのは横紙破りだ。省庁が詭弁(きべん)を弄(ろう)して流用した復興予算は1兆円を超える。切り込むのならこちらが先だろう。 さすがにこれ以上の無理強いはなかろうと構えていた地方に、今度は来年度予算で二の矢が飛んで来る。 先頃、閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」には、地方の行政改革や地域活性化の努力を査定し、頑張る自治体に交付税を重点配分する考えが盛り込まれた。 あたかも加点主義で交付税が上乗せされるかのように思えるが、これはリーマンショック後に創設された地方財政計画の歳出特別枠の廃止とセットだ。つまり、スタートラインを下げてむちを入れ直すという。 新藤義孝総務相は先日、視察で青森県佐井村を訪れた。村の職員給与は以前から国の水準を大きく下回っていたが「被災地復興の一助になれば」と今回、さらなる引き下げを決めた。 村の善意を知ってか知らずか、査定型交付税の利点を盛んにPRした総務相。どこまで人の良さにつけ込むつもりなのか。地方は既に頑張っているし、国に査定されるいわれもない。
2013年07月02日火曜日
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