柏崎刈羽原発:泉田・新潟県知事との一問一答
毎日新聞 2013年06月29日 19時23分(最終更新 06月30日 07時45分)
東京電力柏崎刈羽原発の早期再稼働に否定的な考えを示した泉田裕彦新潟県知事とのインタビューでのやり取りは以下の通り。
−−原子力規制委員会の新規制基準が近く施行され、原発再稼働への動きが本格化する。
◆現時点では、福島第1原発事故の十分な原因究明や対応策ができていると思えない。事故の検証・総括抜きの基準では国民の信頼を得られないだろう。
−−新基準のどこが問題か。
◆規制委に地方自治の専門家が一人も入っていない。事故時に原子炉の圧力を下げるベントをする場合は、放射能を含んだ水蒸気を放出するため住民の避難が必要になるが、規制委は新潟県の意見を一切聞かずに基準を作った。原発の安全管理に関する県の技術委員会も意見を表明したが、まるで耳を傾けてくれない。こんなデタラメなやり方は初めてだ。規制委の田中俊一委員長は、私の質問に「答える義務はない」と発言した。外部に説明するつもりがない基準など評価に値しない。
−−柏崎刈羽原発は2007年の中越沖地震の時も停止した。
◆あの時は原発施設から火災が起きる複合災害だった。道路が寸断されて消防車が原発になかなかたどり着かず、一方で途中で救助を求めてくる人にどう対応するのかという問題も出て、結局、消防隊を原発に配備することになった。県と柏崎刈羽原発の間の連絡が不自由になったことも大きな課題になった。当時は、こうした検証・総括をやった上で再稼働を認めた。
−−東電や政府は、新規制基準を満たすことが安全確保の証明になるとの認識だ。
◆規制委は100万年に1回の確率で事故は起きると言っている。新基準は(事故を起こさないための)安全基準ではなく、「規制を実行すれば、後は知らない」といっているようなものだ。原発が動かないと電気料金の再値上げにつながるといわれるが、国として考えるべき問題で、立地地域に聞くのは間違っている。
−−東電が柏崎刈羽の安全審査に向け申請準備を進めている。
◆柏崎刈羽原発はBWR(沸騰水型)で、新基準を満たすにはフィルター付きベント施設が必要だが、設計すら終わっていないと聞いている。政府による制度の見直しも必要だ。例えば、過酷事故が起き高レベル放射能が出ている現場へ犠牲者を出す覚悟で作業員を出せるのか。現行制度では法律違反で誰も行かせられない。