日銀短観のプラス転換、アベノミクスの背中を押す=甘利再生相
[東京 1日 ロイター] - 甘利明経済再生担当相は1日午後、日銀がけさ発表した6月全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の業況判断DIがプラス4と、2011年9月以来7四半期ぶりにプラス転換したことについて「アベノミクスにとって、背中を押してくれる事実」だと述べ、成長戦略の推進など今後の経済政策運営に自信を示した。
再生相は短観について「株式市場の変動ももちろん注視していくべきだが、実体経済、事実がどうなっているかに注目してほしい」と前置きしたうえで、短観で大企業・製造業DIがプラス転換したことに言及。先行きもプラス10となったことで「かなりプラス幅が大きくなっている。経営者自身が業界の景況判断をそう見ている」と分析した。
<値上げの夏、所得増も必須>
最近の円安や原材料価格の上昇などを受けて、食品や電気料金などがこの日から値上げとなることには「一番気を付けなければならないのは、所得がついてこないという一番悪いケース。物価が上がるのを追い越して、賃金と雇用が上をいくのが最終的な着地点だが、物価が上がるにつれて、賃金も上がるという事実を作っていかないといけない」と述べ、企業に賃上げ努力を重ねて求めた。「経済原則は当然あるが、企業には原則を若干フライングをしてもらい、努力してもらえないかと思っている」と期待を示した。
<日本企業の利益率を2桁に>
再生相はこの日昼、財界・学識経験者ら向けの講演会に出席。「アベノミクスの本質は(成長戦略の)第3弾の発出。(金融緩和と財政出動の)第1弾と第2弾は環境整備に過ぎない」と述べ、安倍政権が掲げる成長戦略の必要性をあらためて説明した。
講演では「成長戦略が発表された途端に株価が下がったとか、あまり魅力がなかったとか言われるが、中身が理解されるに従って評価は高まってきた」として、経済政策に対する海外当局などからの関心の強さを強調。具体策の一例として、今秋の臨時国会で、企業の設備投資費用の一括償却や不採算部門の再編を促す税制などを策定し、利益率の引き上げを目指す方針を示した。「日本企業の利益率は低いと言われる。いいところで5%。国際企業は10%以上もある。中には40%という泥棒みたいな会社もあるが、少なくとも2桁に持っていく必要がある」という。
<中長期資金を引き付ける市場に>
不安定な動向の続く株価にも言及した。「株価だけを見て、うまくいったとか失望とかいう声があるが、実体経済の変化を認識してもらいたい。市場は、短期資金が色々な思惑があって出たり入ったりするところだが、大事なことはイノベーションを起こすような中長期の資金を引き付ける市場であってほしいということだ」と主張した。
短観など、最近の経済指標の回復ぶりも紹介し「すべての局面がV字回復している事実を認識してほしい。事実は嘘を言わない。実体経済は明確に回復してきている、ということをしっかり正面から見据えてほしい」と訴えた。
(ロイターニュース 基太村真司:編集 佐々木美和)
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