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商工ローンが、ここ数年でとにかく激減しました。
ちなみに商工ローンとは、平たく言えば「事業者向けの貸金を専門としている業者」のことです。
これに対して、個人の消費者向けの貸金業者は「消費者金融」といいます。
銀行・信金・郵便局・保険・証券など、貸付のみならず預金なども行っているところを「金融機関」といいます。
(貸金業者を金融機関と呼ぶのは間違いです。)
街の一角で小規模に貸金業を行っている業者は通称「街金」などと呼んだりします。
その中で、違法金利をとって暴利を貪っている業者を「ヤミ金」と呼んでいます。
話を商工ローンに戻します。
一般的には商工ローンというと、高金利で連帯保証人を何人も取るアコギな金貸しというイメージがあるかと思います。 が、広義にいえば、低利で良心的に貸し付けているところでも、事業者向け貸金業者であれば「商工ローン」と呼んだりします。 (だいぶ古い話ですが、かつて東京の下町に永代信用組合という大手の信用組合がありました。ここは年利11-12%で「商工ローン」という名の短期事業者ローンを99年頃に展開し、そこらじゅうにDMを送っていました。わたしも当時申し込んで落とされたほろ苦い思い出があります。このように、商工ローンという呼び方は、明確な定義づけがなく、思いのほか広く使われていました。ただ、99年暮れの「目玉売れ・腎臓売れ」の騒ぎの頃から、商工ローン=高利の事業者向け貸金業者に限定して使われることが多くなったというのが実情です。)
商工ローンが本当の意味で隆盛を極めていたのは、90年代後半でしょう。
この頃は出資法の上限金利が40.004%まで認められていました。景気も悪く、山一證券に代表されるように大型倒産が相次ぎました。取立て規制もあってないようなものでした。グレーソーン金利をめぐる判例も確立されているとは到底いいがたい状態でした。貸す側にしてみれば、需要はいくらでもあり、借り手はいいなりで、もう、やりたいほうだいでした。
陰りが見え始めたのは、2002年ごろからではないでしょうか。
2000年はじめ頃に日栄と商工ファンドの社長が国会で証人喚問されました。2000年6月には出資法が改正されて上限金利が29.2%に下がりました。グレーゾーン金利をめぐる判例も急速に積み上げられてきました。取立て規制も(金融庁ガイドラインなどで)徐々に厳しくなってきました。インターネットの普及により債務者救済のための情報が普及してきました。救済側に立つ弁護士のノウハウも確立されてきました。商工ローンの「陰り」が表面化するのはまだ後のことですが、一部の専門家や投資家の間では、大手商工ローンの業績が「実はちょっと厳しいのでは?」との憶測が飛び交うようになっていました。
こうして少しずつ形勢逆転していき、2006年以降はそれが決定的なものとなっていきました。
2006年1月13日には、かの有名なシティズ最高裁判決が下りました。シティズは当時商工ローン業界で上から4-6位位に位置する準大手で、とりわけ43条(みなし弁済)の要件を満たしグレーゾーン金利を法的にキチンと認めさせる業者であるとして、専門家の間では「最も手ごわい相手」と恐れられていました。ところがそのシティズが最高裁で負けてしまったのです。これは本当に画期的な判決でした。
2006年秋にかけては、国会でグレーゾーン金利廃止などがしきりに議論されて、同年12月に改正貸金業法が成立・交付されました。これは2010年6月までかけて、およそ5段階に分けて段階施行されることになっています。(2010年の最後の仕上げが「グレーゾーン撤廃」と「総量規制」です。)
また、同法では取立て規制も厳しくなりました。
こうなると、商工ローンというビジネスは、もはや成り立たないといっていいでしょう。
一部の銀行系事業者ローン(ビジネ〇〇トなど)は比較的安い利率で資金調達でき、比較的良い顧客を取り込んでいるので貸付金利が15%以下でもミドルリスク・ミドルリターン的に成り立っているようですが、SFCGのような旧来の商工ローンは、リスクの高い顧客に高金利で貸し付けて、過剰担保ときつい取立てで極大回収を試みてこそ成り立つ商売だったので、法規制で高金利が取れず、きつい取立ても許されないとなると、やっていけるはずはありません。
現に、最大手のSFCGは今年3月に破産を申立てました。業界2位のロプロ(旧・日栄)は現在株価20-30円で推移しています。シティズは支店全店を閉鎖・貸付業務停止状態で、現在は本店で回収業務をしているのみです。あとは主要なところではNISグループ(旧ニッシン)やイッコー、インター、シンキなどがあり、これらの会社は現在も生き残っていますが、元気そうに見えるところは一社もないのが現状です。
この流れは当分、変わらないでしょう。
では、従来商工ローンから借りていた層の人が 「どこからも借りられなくなって、ヤミ金に流れて行く」 かといえば、そんなことはないと思います。一部の新聞雑誌でそういう論調がを見かけますが
、ヤミ金は絶滅することはないにしても、増えることもまずないでしょう。 罰則が「懲役10年」と格段に重くなり、警察も以前とは比較にならないほど動くようになりましたから。そう、今では「ヤミ金は犯罪」という意識が定着したのです。
同じ犯罪でも、覚醒剤などは快感を伴いますから、犯罪だということを承知でやってしまう人が跡を絶たないかもしれません。でもヤミ金には快感はありません。あるのは「儲かる」という動機だけです。しかし最近では債務者もすっかり賢くなり、いくら暴利を請求してもそう簡単には儲かりません。だからヤミ金はこれ以上増えることはないと思うのです。絶滅することはなくても・・・。
では、我々零細企業で銀行から貸してもらえない人は、これからどうしていくのでしょうか?
心配ありません。何とかなります。
1. 借りないでやっていける体質づくりを徐々に実現する - 企業でも人間でも動物でも、変化に対応して順応できるものこそが生き残れます。 そして現実に、苦しいながらも借入できない環境に順応して、何とか切り盛りしている零細企業はいっぱいあります。
2. 金融機関から何としても借りる - これも可能です。金融検査マニュアル改正以降、銀行の審査の基準はすっかり変わってきましたが、それを熟知すれば、たとえ一度事故を起こしてしまったブラック的な会社でも借入は可能です。(現に、わたしはそういう会社から借入の相談をよく受け、部分的にお手伝いさせて頂くこともありますが、ちゃんと取り組めば、およそ半分近くの確率で融資OKになっています)
3. 借入以外の資金調達を駆使する - 借りることばっかり考えず、たとえば集めるとか、資金力のあるところとくっつくとか、視野を広くすればいろいろ考えられると思います。
商工ローンから借りなくてもやっていけるよう、皆さんがんばりましょう。
猫
(つづく)
ちなみに商工ローンとは、平たく言えば「事業者向けの貸金を専門としている業者」のことです。
これに対して、個人の消費者向けの貸金業者は「消費者金融」といいます。
銀行・信金・郵便局・保険・証券など、貸付のみならず預金なども行っているところを「金融機関」といいます。
(貸金業者を金融機関と呼ぶのは間違いです。)
街の一角で小規模に貸金業を行っている業者は通称「街金」などと呼んだりします。
その中で、違法金利をとって暴利を貪っている業者を「ヤミ金」と呼んでいます。
話を商工ローンに戻します。
一般的には商工ローンというと、高金利で連帯保証人を何人も取るアコギな金貸しというイメージがあるかと思います。 が、広義にいえば、低利で良心的に貸し付けているところでも、事業者向け貸金業者であれば「商工ローン」と呼んだりします。 (だいぶ古い話ですが、かつて東京の下町に永代信用組合という大手の信用組合がありました。ここは年利11-12%で「商工ローン」という名の短期事業者ローンを99年頃に展開し、そこらじゅうにDMを送っていました。わたしも当時申し込んで落とされたほろ苦い思い出があります。このように、商工ローンという呼び方は、明確な定義づけがなく、思いのほか広く使われていました。ただ、99年暮れの「目玉売れ・腎臓売れ」の騒ぎの頃から、商工ローン=高利の事業者向け貸金業者に限定して使われることが多くなったというのが実情です。)
商工ローンが本当の意味で隆盛を極めていたのは、90年代後半でしょう。
この頃は出資法の上限金利が40.004%まで認められていました。景気も悪く、山一證券に代表されるように大型倒産が相次ぎました。取立て規制もあってないようなものでした。グレーソーン金利をめぐる判例も確立されているとは到底いいがたい状態でした。貸す側にしてみれば、需要はいくらでもあり、借り手はいいなりで、もう、やりたいほうだいでした。
陰りが見え始めたのは、2002年ごろからではないでしょうか。
2000年はじめ頃に日栄と商工ファンドの社長が国会で証人喚問されました。2000年6月には出資法が改正されて上限金利が29.2%に下がりました。グレーゾーン金利をめぐる判例も急速に積み上げられてきました。取立て規制も(金融庁ガイドラインなどで)徐々に厳しくなってきました。インターネットの普及により債務者救済のための情報が普及してきました。救済側に立つ弁護士のノウハウも確立されてきました。商工ローンの「陰り」が表面化するのはまだ後のことですが、一部の専門家や投資家の間では、大手商工ローンの業績が「実はちょっと厳しいのでは?」との憶測が飛び交うようになっていました。
こうして少しずつ形勢逆転していき、2006年以降はそれが決定的なものとなっていきました。
2006年1月13日には、かの有名なシティズ最高裁判決が下りました。シティズは当時商工ローン業界で上から4-6位位に位置する準大手で、とりわけ43条(みなし弁済)の要件を満たしグレーゾーン金利を法的にキチンと認めさせる業者であるとして、専門家の間では「最も手ごわい相手」と恐れられていました。ところがそのシティズが最高裁で負けてしまったのです。これは本当に画期的な判決でした。
2006年秋にかけては、国会でグレーゾーン金利廃止などがしきりに議論されて、同年12月に改正貸金業法が成立・交付されました。これは2010年6月までかけて、およそ5段階に分けて段階施行されることになっています。(2010年の最後の仕上げが「グレーゾーン撤廃」と「総量規制」です。)
また、同法では取立て規制も厳しくなりました。
こうなると、商工ローンというビジネスは、もはや成り立たないといっていいでしょう。
一部の銀行系事業者ローン(ビジネ〇〇トなど)は比較的安い利率で資金調達でき、比較的良い顧客を取り込んでいるので貸付金利が15%以下でもミドルリスク・ミドルリターン的に成り立っているようですが、SFCGのような旧来の商工ローンは、リスクの高い顧客に高金利で貸し付けて、過剰担保ときつい取立てで極大回収を試みてこそ成り立つ商売だったので、法規制で高金利が取れず、きつい取立ても許されないとなると、やっていけるはずはありません。
現に、最大手のSFCGは今年3月に破産を申立てました。業界2位のロプロ(旧・日栄)は現在株価20-30円で推移しています。シティズは支店全店を閉鎖・貸付業務停止状態で、現在は本店で回収業務をしているのみです。あとは主要なところではNISグループ(旧ニッシン)やイッコー、インター、シンキなどがあり、これらの会社は現在も生き残っていますが、元気そうに見えるところは一社もないのが現状です。
この流れは当分、変わらないでしょう。
では、従来商工ローンから借りていた層の人が 「どこからも借りられなくなって、ヤミ金に流れて行く」 かといえば、そんなことはないと思います。一部の新聞雑誌でそういう論調がを見かけますが
、ヤミ金は絶滅することはないにしても、増えることもまずないでしょう。 罰則が「懲役10年」と格段に重くなり、警察も以前とは比較にならないほど動くようになりましたから。そう、今では「ヤミ金は犯罪」という意識が定着したのです。
同じ犯罪でも、覚醒剤などは快感を伴いますから、犯罪だということを承知でやってしまう人が跡を絶たないかもしれません。でもヤミ金には快感はありません。あるのは「儲かる」という動機だけです。しかし最近では債務者もすっかり賢くなり、いくら暴利を請求してもそう簡単には儲かりません。だからヤミ金はこれ以上増えることはないと思うのです。絶滅することはなくても・・・。
では、我々零細企業で銀行から貸してもらえない人は、これからどうしていくのでしょうか?
心配ありません。何とかなります。
1. 借りないでやっていける体質づくりを徐々に実現する - 企業でも人間でも動物でも、変化に対応して順応できるものこそが生き残れます。 そして現実に、苦しいながらも借入できない環境に順応して、何とか切り盛りしている零細企業はいっぱいあります。
2. 金融機関から何としても借りる - これも可能です。金融検査マニュアル改正以降、銀行の審査の基準はすっかり変わってきましたが、それを熟知すれば、たとえ一度事故を起こしてしまったブラック的な会社でも借入は可能です。(現に、わたしはそういう会社から借入の相談をよく受け、部分的にお手伝いさせて頂くこともありますが、ちゃんと取り組めば、およそ半分近くの確率で融資OKになっています)
3. 借入以外の資金調達を駆使する - 借りることばっかり考えず、たとえば集めるとか、資金力のあるところとくっつくとか、視野を広くすればいろいろ考えられると思います。
商工ローンから借りなくてもやっていけるよう、皆さんがんばりましょう。
猫
(つづく)
選んでしまったなと思いますが、なるべく安易に
借りないで、工夫して工夫して、これ以上知恵がでないというところまで毎日考えています。でもこれってきっと私に課せられた訓練だと思ってます。つらいことを楽しく過ごせるのも猫塾のおかげです。