PLUS  > 2012年04月04日版 「糸へん」小耳早耳

アウトレットで服を買ってはいけない

もう「在庫品を安く売る場」ではなくなった

南 充浩

 読者のみなさんはどこで服を買っているだろうか。筆者は「赤貧洗うが如し」の暮らしぶりなので、ユニクロ、無印良品、GAPの3か所で、ほとんどの洋服を購入する。しかもいずれも定価で購入することはなく、すべてセールである。ここにライトオン、ポイントが運営する「レイジブルー」「グローバルワーク」、ジーンズメイトが加われば、ここ4年間で購入した洋服の全ブランドがラインナップされてしまう。もちろんすべてセール価格であり、おそらく「底値」で購入している。

 こんな話をすると、この業界以外の人からは「アウトレットで買う方が良いのでは」と言われる。だが、その認識はあまり正しくない。

お買い得度は通常店のセールが上

 巷で人気のアウトレットモールだが、それほどお得ではない。高額ブランドや海外ラグジュアリーブランドを購入したいのであれば、アウトレットはある程度有効かもしれない。しかし、一般的なSPA(製造小売り)やセレクトショップの商品ならアウトレットよりも通常店のセールの方がお買い得であることが多い。

 ここ3年ほどは仕事のついでがなければ、アウトレットモールを覗くことがない。以前は大阪・鶴見緑地の「はなぽーとブロッサム」(現・三井アウトレットパーク大阪鶴見)に、買い物目的で年に1、2度足を運んでいた。もう10年ほど前になるのでリーバイスやエドウイン、スポーツブランドなど卸売りを主体とする「メーカー」が多く出店しており、現在のようなSPAブランドやセレクトショップなどはほとんど出店していなかった。

 リーバイスやエドウインの店頭を眺めた限りでは、当時は本当に「過去の在庫品」が多く並んでいた記憶がある。「半年前に廃番になった○○」とか「1年前に生産を中止した××」などがメイン商材だった。その多くは色やサイズが不揃いで、なかなか購入には至らなかったのだが、それがある意味でアウトレットの醍醐味であったことも否定できない。

 2010年夏にモノ批評系雑誌の仕事で、オープンしたばかりの「三井アウトレットパーク滋賀竜王」に取材に行った。これはほぼ覆面取材で、片っ端から店舗を回って商品の価格をチェックし、どこが一番お買い得なのか判定を下す企画である。広大な敷地なので全店をつぶさに見て回ることは無理だったが、それでも20店舗ほどは商品と価格をチェックできた。

 その際、気になったのが、どの店も「過去在庫品が減り、アウトレット専用に製造された商品比率が高まっている」ということである。アパレル各社は長引く消費低迷の中で何とか利益を出そうと、在庫の圧縮を進めてきた。同時に、アウトレットモールが各地に林立することで出店が増えて、通常の在庫商品ではまかないきれなくなってきたのだ。

 先日も昨年12月にオープンしたばかりの「三井アウトレットパーク倉敷」を訪れた。ジーンズ関連の取材で児島と倉敷を回るついでである。

 余談だが、この駅直結型のアウトレットモールの開業はなかなかの暴挙であるように感じる。市街地のど真ん中、しかも駅直結の立地に、安さを売り物の1つにするアウトレットができれば、近隣の店舗は疲弊しかねないからだ。ここでもアウトレットが元々の存在から逸脱してきていることが分かる。

 倉敷では時間があまりなかったので数店舗しか見て回れなかったが、やはり竜王と同じく、アウトレット専用に製造された商品の比率が高かった。

 週に1度はかならず店頭をチェックするGAPを例にとってみよう。GAPのメンズは商品のほぼすべてを毎シーズン見ているので、もっとも確かだと思う。それに竜王にも倉敷にもGAPはあった。

 竜王と倉敷の店頭を見た限りではGAPのアウトレット店には、通常店からの在庫商品というものはほとんどないように見えた。筆者個人の体感では「すべて」と感じるが、もしかすると記憶違いもあるかもしれないし、正確な比率は分からない。それでも相当な比率の商品がアウトレット専用の商品だろう。

 そして、アウトレット専用商品が開発されていることもあってか、価格は通常店の値下げ品の方がアウトレット店よりも安い。アウトレット店はジーンズだと4900〜5900円が中心(まれに2990円や1990円もある)だが、GAPの通常店だと2990円くらいまで値下がりするし、1900円や990円にまで下がる商品もかなりある。Tシャツだと1900円までの値下がりは普通で、慣れた人なら990円や600円になってから買う。筆者はウール100%のGAPのマフラーを4本持っているが、いずれも通常店で、990円以下で購入している

本来の位置付けからずれてきたアウトレット

 それでは、長年、通いつめたGAPの値下げプロセスから、筆者なりの「買い時」を解説したい。

 例えば、メンズのパンツだと定価は7900〜9800円程度である。それが入荷からだいたい1カ月半から2カ月くらい経過すると、半額近くに値下がりする。その時の価格は4900〜5900円くらいである。そこをやり過ごすと3週間後に1000円くらい値引きされ、3900〜4900円となる。どうしても欲しい商品ならこの時に買うのがお薦めである。色柄・サイズともに豊富に残っているからだ。

 しかし、もう少し待とう。すると2900円に下がる。筆者はどうしても欲しい商品ならこのときに買う。けれどももう少し我慢しよう。そのうち、こちらも「欲しい」という気持ちがマヒしてくる。そうこうしているうちに1900円に下がる。

 1900円の時点でも、色柄・サイズはかなりそろっていることが多い。どうしても欲しい商品以外であっても、ここで買うことをお薦めしたいが、夏冬のセール終了間際まで待つと、これが990円に下がる。この時点では色柄サイズは不揃いになる。どの時点で買うかは高度な判断が試される。(そこまで大げさなコトか?オイ)

 こうして見ると、アウトレット店で買うよりも通常店のセールをこまめにチェックした方が安く買える。職場や学校の近所にGAPがあればそうすべきであろう。ついでに言うと、GAPの値下げは水曜日か木曜日あたりに行われることが多いような気がする。一応、不定期に値下げしているとのことだが、体感ではそうだ。

 ここでは、たまたまGAPを例にとったが、無印良品だって店舗によっては最終7割引きで販売する。今年2月にウール混メルトンのPコートを購入した。ウールの原料高からか少しメルトン生地が薄いと思ったが、価格は1万2000円の7割引きの3600円だった。これも通常店である。ちなみに、無印良品で気をつけねばならないことは、店舗ごとに値引き率が異なるということである。できれば、複数店を回って一番安い店舗で買うことをお薦めする。

 ここまで読んでくださった方は、渋滞に耐えてアウトレットへ行くよりも、定期的に通常店の値下がりを待つ方が安い買い物ができることが理解いただけたのではないだろうか。

 竜王などの郊外型アウトレットモールは非日常空間であり、商品が安いかどうかは別として「小旅行」的に利用する気持ちはわからないではない。しかし、倉敷のような駅前直結型やそのほかの都心にほど近い立地のアウトレットモールなら、近隣のファッションビルやショッピングモールで最終処分価格品を買う方がずっとお買い得だし、効率的ではないだろうか。

 そして何より、アウトレットが本来の位置付けとは相当ずれたものになっていることを、消費者も知っておくべきである。

南 充浩(みなみ・みつひろ)
南 充浩(みなみ・みつひろ) フリーライター、広報アドバイザー。1970年生まれ。洋服店での販売職・店長を経て繊維業界紙に記者として入社。その後、Tシャツメーカーの広報、編集プロダクションでの雑誌編集・広告営業を経て、展示会主催業者、専門学校広報を経て独立。業界紙やウェブ、一般ファッション雑誌などに繊維・アパレル業界に関する記事を書きつつ、生地製造産地の広報を請け負っている。