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トキワ精神保健事務所 「8つの問題」を抱えた家族が当てにする、行政、精神科医療、警察の本音
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「8つの問題」を抱えた家族が当てにする、行政、精神科医療、警察の本音
行政の本音

問題解決のために、保健所や役所に相談に行ったことのある方もいらっしゃるでしょう。

話は十分に聞いてもらえても、こんなアドバイスをされるのではないでしょうか。

  • 「本人を、一人暮らしさせたらどうか」
  • 「本人を苛立たせないように、家族が生活するしかない」
  • 「身の危険を感じたら、110番通報してください」
  • 「訪問してもいいが、本人が拒否したらそれ以上は介入しません。そんな人をよくも呼んだなと、私たちが帰った後にトラブルが起きても困ります」
  • 「どこの病院がいいとは私たちからは言えないので、リストを差し上げますから、ご家族であたってください」

要するに、家族に帰結するアドバイスしかしてくれないのです。


行政の役割は、問題を抱え、日常生活に支障をきたしている方を、適切な医療や福祉につなげるところにあります。しかし行政は、「パーソナリティ障害」の問題を抱えた方については、積極的に医療につなごうとはしません。なぜなら、「統合失調症」や「うつ病」の診断を受けている患者とは、精神科病院の対応が明らかに異なり、ほとんど受け入れてもらえないからです。障害年金の申請においても、「パーソナリティ障害」の診断名では、原則として対象疾患から除外されます。治療が長期化し、家族等の援助がないと日常生活すらままならないにも関わらず、です。


こういった矛盾があることから、行政にしてみれば

  • 面倒なケースには関わりたくない
  • 下手に介入して、患者から訴えられたくない
  • 事件になれば、警察(司法)に対応してもらえる
  • 家族の対応や親の育て方にも問題があるから、こうなっている
  • 家族の問題を押しつけられても困る
  • 家族が怖い患者の対応をするのは、自分たちも怖い

というのが本音であり、それゆえに「家族で責任を持ってください」という回答になるのです。

また、福祉優先であるため、経済的に余裕のある家族はなおさら対応も後回しになり、宙に浮いたままになりがちです。

精神医療の本音

精神科病院に通院しているが、本人の状態は悪くなる一方。入院治療を相談しても、受け入れてもらえない。あるいは入院はできたのだが、すぐに退院の時期について話があり、「三ヶ月で」と言われてしまった…。

医師や病院からはっきりとは言われなくとも、以下のような応答があった場合、受け入れを拒否されているということです。

  • 「空き床がある」と言っていたのに、詳細を話したとたん「満床です」と言われた
  • 「病院のシステム上(保護室が少ないなど)、うちでは対応できません」と断られた
  • 「本人に入院の説得をし、納得させてから連れてきてください」「任意入院だったら受け入れます」と言われた
  • 「本人を助けられるのは家族しかいない」と、一緒に住むことを勧められた
  • 「今の状態では就労は難しいが、現代は30代でもまだ若い。10年くらいかけるつもりで、ゆっくり考えていきましょう」と、非現実的なアドバイスをされた
  • このままでは家族が殺されると訴えても、「そうなったら110番通報しなさい」「状態が悪くなったら、また入院させてあげるから」とお茶をにごされた
  • 「家族もリスクを負うべきで、病院に丸投げされても困る」と言われた
  • 「患者はあなたの家族だけではない。新しい患者さんも待っている」と言われた

精神科病院の多くは、この類の相談を山のように受けていますから、本人の言動がいかに凶暴であるか、その危険性は十分に理解しています。家族が生活を共にすることが不可能なことも承知の上、それどころか、放置したら先々どうなるかも予測がついています。それでも、退院させ、一緒に住むことを勧めます。

この背景には、病院側の本音があります。

  • 我が国の治療体制に適合した「パーソナリティ障害」の治療法が、定まっていない
  • 「パーソナリティ障害」に必要な手厚い治療が、保険診療の枠内に収まらない
  • 医療機関の職員のレベルとして、対応困難患者へのコミュニケーション能力が低い。ゆえに、入院当初から「三ヶ月で退院できるのだから」と言って患者をなだめたり、小遣いを好き放題に使わせ、無くなれば家族に入金を催促したりする。要するに、本人の院内での問題行動や他患者とのトラブルを避けるために、本人の要求に応えて、大人しくさせておくことしかできない
  • 厚生労働省は、早期に地域に戻すよう指導しており、診療報酬も、「新規患者の在院日数」「在院日数の割合」「在宅移行できているか」などによって決めている。よって新規入院患者の長期入院は、年々難しくなっている
  • 患者の急増により、病院側が受け入れる患者を選べるため、扱い易い患者が優先になる

一方で、医療機関の立場に立って考えてみます。

問題の背景には、間違った育て方や愛情の欠落もあるのに、家族は、自分たちは何もせずに医療機関に丸投げしようとする。そのうえ、本人には何一つ本音を言えないのに、医師や職員にはあれこれと注文をつける…。

そんな家族に対しては、「家族は何もリスクを背負っていないではないか」「家族も責任を持つべきだ」という気持ちになるのも、当然のことです。

警察の本音

この問題に関して、行政や精神科医療の矛盾のしわ寄せを一手に受けているのが警察と言えます。

警察は、国民の安全を守るために、事件や事故を扱います。24時間対応であり住民相談の窓口もあることから、本来は行政や医療機関が対応すべきことであっても、通報して現場に駆けつけてくれるのは警察だけです。また、心ある警察官は、業務外であってもできる限りの対応をしてくれます。

わたしたちが業務を行う面から見ても、三つの機関の中では、警察が最も現実対応している頼もしい存在です。


一方で、行政や医療機関は、身の危険を訴える家族に「何かあったら110番通報してください」とアドバイスをするだけです。中には、民間の移送会社への依頼を渋る家族に「警察を呼んで、病院まで連れて行ってもらえばいい」と助言するところもあるそうです。

こうして本来対応すべき機関が責任を回避しているために、警察には莫大な比重がかかっています。どんな小さな所轄でも、こういった案件を月に50件は抱えており、規模によっては、毎月500件〜2000件もの相談や通報があると聞きます。

110番通報すればいつでも駆けつけてくれる、無料であることをいいことに、まるで便利屋のように警察を使っているケースも、少なくありません。

本来であれば保健所が扱う業務でも、警察が対応せざるを得ない理由の一つには、一般市民がその仕組みを知らないことがあげられます。

たとえば、「マンションの上階に住んでいる人が、毎晩大声で意味不明なことを叫んでいる」とか、「顔を合わせると、何もしていないのに『うるさい』と暴言を吐かれる」「床をどんどん鳴らされる」といったことが起きた場合、被害にあっている人は、身の安全を考えて、まずは110番通報をするか、警察に相談に行くでしょう。

ところが、当の本人が精神疾患である可能性があった場合、警察官にできることは、警察官通報(精神保健福祉法第24条)により、措置入院させることです。

ただし措置入院になるためには、「精神疾患により自傷他害のある、またはその恐れのある場合」でなければなりません。警察官が現場に出向いたときに、本人が暴れ続けているくらいのレベルであって始めて、警察官は保健所に通報し、保健師が派遣されるのです。さらに、保健師がかけつけてもなお、指定医の診察が必要だと思われるような状況であれば、精神保健指定医の診察を受けさせることになります。

入院までにこれほどの手順を要するうえに、実際には、本人がこの仕組みを理解していることが多く、警察官が来ればとたんに大人しくなり、保健所への通報には至りません。ここにも、パーソナリティ障害の問題が見え隠れしています。


ちなみに、精神保健福祉法第23条には、「精神障害又はその疑いのある者を知った者は、誰でも、その者について指定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することができる」とあり、第三者が通報することもできます。

しかし、その申請のためには、「申請者の住所、本人の現在場所、居住地、氏名、性別及び生年月日、症状の概要、現に本人の保護の任に当たっている者があるときはその者の住所及び氏名を記入した書類を提出しなければならない」という規定があります。

人権の問題があり、むやみに通報されてはいけないということもありますが、第三者がこういった書類を作成するのは難しく、ほとんど機能していないと言えます。

本来、このようなケースの対応をとるのは、所轄保健所です。相談を受けた保健所は、保健師から本人の家族に受診勧奨するなどの手段を講じることができます。

ところがこの保健所が「何かあったら警察に…」と投げているのが、現実なのです。

家庭内でのトラブルでも、同じことが言えます。

警察は民事不介入ですから、親族間の窃盗、詐欺、恐喝、横領罪等は、親告罪(告訴がないと公訴を提起できない犯罪)になります。また、初犯(前科がない)で傷害や窃盗などの場合、仮に起訴されて有罪判決が出たとしても、執行猶予がつく可能性が高いため、本人に贖罪の念を持たせられるかは難しいところです。

そもそも、身内(我が子)を犯罪者にすること自体、躊躇してしまうものであり、これらの理由から、被害を被って110番通報はしたものの、「かえって恨まれるかもしれない」と家族が二の足を踏み、告訴まで至らないことも多くあります。


こういった事情から、通報を受けて警察官が駆けつけても、措置入院にも逮捕にも至らず、本人を諭すしかなかった…というケースがほとんどなのです。


通常の業務においても、警察署内の留置所には、行政や医療機関から対応を拒否された精神疾患の方々が、事件を起こしては留置されています。彼らは留置所内で、薬物やアルコール依存による禁断症状を起こしたり、自殺未遂や狂言などの騒ぎを繰り返したりします。

そのため警察では、精神科医を呼び診察を受けさせたり、薬を処方したりせねばならず、留置所はまるで精神科病院の保護室のようになっていると言います。

精神疾患の方への対応については警察も頭を悩ませており、弊社押川に講演の依頼があるほどです。

警視庁、神奈川県警、神奈川県警察学校、福岡県警などで講演
警視庁、神奈川県警、神奈川県警察学校、福岡県警などで講演
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押川剛 実践個別指導精神障害者移送サービス病院確保サポートサービス自立支援施設 本気塾